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25thday
最近、華煉の元気がない。
この前の遺跡外・・・灯明祭のときはあんなに楽しそうだったのに。
俺たちは今、この先にいるビーバーとの戦いに備えて一人ずつ分かれて行動している。
ビーバー戦に向かう者はソロで、向かわない者は臨時のパーティを組んで近くで待機。
俺は誇り高いビーバーに会うのを楽しみにしていたこともあってソロだ。
ハーカとベアと別れて一人になったあと、華煉は小妖精程度の大きさで俺の肩の上に顕現している。
俺が単独だと何が起こるかわからないから、ということらしい。
だが、顕現してからもほとんど何も話さずにずっと考え事をしているようだ。
思いつめた表情をしているように見える。
普段の華煉なら心配事があっても俺に悟られないように何事もないような顔を作っていることが多い。
こんな風に考え込んでいる華煉を見るのは久しぶりだ。
くやしいことに華煉の心配事というのは大抵俺がらみで、おまけに俺に相談されても難しすぎてわからないことが多い。
だから、華煉は他の精霊たちに相談を持ちかけたりしているらしい。
この島にいる間も華煉の空間に他の精霊たちが訪れたりしていたようだし。
こんな風に考え込んでいるのも珍しいが、きっとそのうち他の精霊たちに相談して、そしていつもの華煉に戻るのだろう。
だが・・・・少なくとも今はこの沈黙で気詰まりする。
華煉は爪を噛むような仕草をして何事か考えているようだが・・・
正直、この沈黙は辛い。
何か気を紛らわせられるようなことは起こらないだろうか。
ビーバーがいるという砂地で、戦闘が起こるまで今しばらく時間がありそうだ。
そのとき俺はあるものを思い出した。
それに、アレを華煉にも見せてやりたい。
俺は荷物をその場に下ろすと中から小さな夕焼け色の袋を取り出した。
つい先日、栗色の髪の楽師からもらったものだ。
袋の中身を左手のてのひらにあける。
中から出てきたのは・・・卵型の赤い石。
俺は楽師に教えてもらったフレーズを口ずさんだ。
そして、俺の言の葉に応えるように、石から広がりたるは・・・音
歌晶石というものらしい。
つい先日、紅葉の市場で目にして、一目で惹かれた。
石が歌う。
素朴な歌
懐かしい歌
郷愁を誘う、どこか寂しい、だけど優しい歌。
静かな時の中で石が織り上げる優しい時間。
石が歌う。
むずかる乳飲み子を優しくあやす母親のように、
何年も故郷を離れていた放蕩息子の帰還をそっと受け入れる父親のように、
やさしく、やさしい・・・
ふと気がつくと華煉は俺の肩から降りて俺の左手の上で石を見つめていた。
卵型の小さな石。
その卵を抱くようにそっと手を伸ばす華煉。
華煉の表情が和らいでいる。
俺の表情もきっと和らいでいるのだろう。
石が歌う。
何もかもを受け入れそして優しく育む大地のように
すべてを包み込むやわらかな陽射しのように
乾いた心を癒す、潤った清き泉のように
やさしく、やさしさに満ち溢れた音。
やがて、石は何事もなかったかのように静かにその歌を歌い終える。
静かな静かな時が流れる。
だが、先ほどまでの静けさとは違う。
俺も華煉も石のくれた優しい時に癒されていた。
言葉などなくても通じる想い。
やさしい時が流れていた。
小さな華煉は石に寄りかかっていた。
俺はそっと右手を石に伸ばす。
華煉はそれを見て、そっと石から離れた。
石を元の袋に戻す。
華煉が残念そうにしているのがわかる。
「今日はシヴェルと合流するから・・・合流まではきっと時間がある。またあとでもう一度、石の歌を聴こう。」
俺がそういうと華煉は久しぶりににっこりと笑った。
「うん。絶対だよ。」
俺も笑った。
「あぁ、約束だ。あとでもう一度石の歌を聴こう。だが、その前に・・・」
俺の目の前にベアが立っている。
そういえば練習試合をするんだった。
あいにく、俺は吹き矢を新調中で、吹き矢の技をベアに見てもらう余裕はなさそうだ。
俺は剣を引き抜く。
紅瑪瑙石をつけた剣と、
そして紅瑪瑙石がなくなっても美しく、俺の手になじむ火喰い鳥のナイフを。
「待たせたな。早速はじめようか。あとで・・楽しみなことが待っているんだ。」
(今日の日記中の歌晶石は紅葉一番街のイベントでアリステア(1156)さんから購入したものです。
すばらしいアイテムをありがとうございました。)
この前の遺跡外・・・灯明祭のときはあんなに楽しそうだったのに。
俺たちは今、この先にいるビーバーとの戦いに備えて一人ずつ分かれて行動している。
ビーバー戦に向かう者はソロで、向かわない者は臨時のパーティを組んで近くで待機。
俺は誇り高いビーバーに会うのを楽しみにしていたこともあってソロだ。
ハーカとベアと別れて一人になったあと、華煉は小妖精程度の大きさで俺の肩の上に顕現している。
俺が単独だと何が起こるかわからないから、ということらしい。
だが、顕現してからもほとんど何も話さずにずっと考え事をしているようだ。
思いつめた表情をしているように見える。
普段の華煉なら心配事があっても俺に悟られないように何事もないような顔を作っていることが多い。
こんな風に考え込んでいる華煉を見るのは久しぶりだ。
くやしいことに華煉の心配事というのは大抵俺がらみで、おまけに俺に相談されても難しすぎてわからないことが多い。
だから、華煉は他の精霊たちに相談を持ちかけたりしているらしい。
この島にいる間も華煉の空間に他の精霊たちが訪れたりしていたようだし。
こんな風に考え込んでいるのも珍しいが、きっとそのうち他の精霊たちに相談して、そしていつもの華煉に戻るのだろう。
だが・・・・少なくとも今はこの沈黙で気詰まりする。
華煉は爪を噛むような仕草をして何事か考えているようだが・・・
正直、この沈黙は辛い。
何か気を紛らわせられるようなことは起こらないだろうか。
ビーバーがいるという砂地で、戦闘が起こるまで今しばらく時間がありそうだ。
そのとき俺はあるものを思い出した。
それに、アレを華煉にも見せてやりたい。
俺は荷物をその場に下ろすと中から小さな夕焼け色の袋を取り出した。
つい先日、栗色の髪の楽師からもらったものだ。
袋の中身を左手のてのひらにあける。
中から出てきたのは・・・卵型の赤い石。
俺は楽師に教えてもらったフレーズを口ずさんだ。
そして、俺の言の葉に応えるように、石から広がりたるは・・・音
歌晶石というものらしい。
つい先日、紅葉の市場で目にして、一目で惹かれた。
石が歌う。
素朴な歌
懐かしい歌
郷愁を誘う、どこか寂しい、だけど優しい歌。
静かな時の中で石が織り上げる優しい時間。
石が歌う。
むずかる乳飲み子を優しくあやす母親のように、
何年も故郷を離れていた放蕩息子の帰還をそっと受け入れる父親のように、
やさしく、やさしい・・・
ふと気がつくと華煉は俺の肩から降りて俺の左手の上で石を見つめていた。
卵型の小さな石。
その卵を抱くようにそっと手を伸ばす華煉。
華煉の表情が和らいでいる。
俺の表情もきっと和らいでいるのだろう。
石が歌う。
何もかもを受け入れそして優しく育む大地のように
すべてを包み込むやわらかな陽射しのように
乾いた心を癒す、潤った清き泉のように
やさしく、やさしさに満ち溢れた音。
やがて、石は何事もなかったかのように静かにその歌を歌い終える。
静かな静かな時が流れる。
だが、先ほどまでの静けさとは違う。
俺も華煉も石のくれた優しい時に癒されていた。
言葉などなくても通じる想い。
やさしい時が流れていた。
小さな華煉は石に寄りかかっていた。
俺はそっと右手を石に伸ばす。
華煉はそれを見て、そっと石から離れた。
石を元の袋に戻す。
華煉が残念そうにしているのがわかる。
「今日はシヴェルと合流するから・・・合流まではきっと時間がある。またあとでもう一度、石の歌を聴こう。」
俺がそういうと華煉は久しぶりににっこりと笑った。
「うん。絶対だよ。」
俺も笑った。
「あぁ、約束だ。あとでもう一度石の歌を聴こう。だが、その前に・・・」
俺の目の前にベアが立っている。
そういえば練習試合をするんだった。
あいにく、俺は吹き矢を新調中で、吹き矢の技をベアに見てもらう余裕はなさそうだ。
俺は剣を引き抜く。
紅瑪瑙石をつけた剣と、
そして紅瑪瑙石がなくなっても美しく、俺の手になじむ火喰い鳥のナイフを。
「待たせたな。早速はじめようか。あとで・・楽しみなことが待っているんだ。」
(今日の日記中の歌晶石は紅葉一番街のイベントでアリステア(1156)さんから購入したものです。
すばらしいアイテムをありがとうございました。)
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