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26thday
ベアとの練習試合を終えて、ビーバーを倒し・・・
そしてシヴェルと合流する前に、俺はもう一度紅葉の美しい市に足を伸ばした。
いろいろな物が売られている。
ピジョンミルクに月見バーガーといった食料を売っている者
髪留めや宝石類などの装飾品や服、アクセサリーを売っている者
楽譜や本を売っている者
中には何に使うのかよくわからないものを売っている者もいる。
あざやかな紅葉の季節に活気ある市場。
俺は市場を楽しんでいた。
ふと肩が軽くなる。
風が吹き抜ける違和感。
「華煉?」
いつも俺の肩にいた華煉がいない。
気配はわかる。
強い火の気配。
俺がそちらのほうに足を伸ばそうとしたとき、不意に肩に暖かなぬくもり
「華煉?」
「マナ」
華煉はひどく衰弱している。
驚く俺の体の中に溶け込むように華煉は消えた。
華煉が消えると同時に俺の頭の中に一連の出来事が浮かび上がる。
華煉がこれほどに衰弱した理由を俺は知った。
俺は少し先にいるある男の元へと向かった。
荷物の中から白い扇を出しながら・・・・
そこにいたのは闘技大会で戦った男。
男が売っているのは二つの指輪。
それを見てなぜ華煉が欲しがったのかわかった。
赤い指輪。
その色はまさしく俺の目の色。
この島に来てずっと戦闘が続いているため、俺の目は金色に輝いていることが多い。
ずっと緊張状態が続いているのだろう。
だが、俺がもっとも安らいでいるとき・・・・
俺が華煉といっしょにいるとき・・・・
俺の目に浮かぶ色はこの色だ。
華煉があれほど消耗してまで欲しがった物はこれに間違いないだろう。
「この赤い指輪でいいのか?華煉」
交渉は成立。
俺は指輪とそしておまけまでもらった。
あの剣士の知り合いの「カレン」という人はどんな女性なんだろうと思いながら、俺は市を後にする。
そして・・・市から離れシヴェルと合流する前に俺は仮眠を取ることにした。
俺が休むためではない。
華煉に会うために。
あれほど衰弱しきっては、きっと顕現することなど出来ない。
俺から会いに行かなければ。
俺は華煉にもらった短冊を数枚火にくべた。
周囲の空気が清められていくのがわかる。
これなら問題ないだろう。
俺は買ったばかりの守護の指輪を指にはめ・・・ついでにおまけのはいった包みを持って華煉に会いに行く。
俺はゆっくりと目を閉じて睡魔に身を任せた。
石が歌う。
詩人にもらった歌晶石。
俺が身体に身につけているものは、この空間でも再現されるが、俺はこの歌う石を身につけるのを忘れていたのに。
現実の物だからこの空間には持ち込めないだろうと思ったのに、華煉はあっさりと持ち込んだ。
よほど気にいったのだろう。
だが、そんな風に現実の物を持ち込んで、自分の空間が影響されないように結界をはって力を消費するから、・・・・・・今の華煉はとても小さな人型しか取れていない。
自分の空間ですら小さな姿しかとれないなんて・・・・よほど力を消耗しているのだろう。
俺以外の人に言葉を届けることは出来た。
俺の体の上に顕現することも出来る。
だが、俺から離れた場所に顕現し、俺以外の人に言葉を届ける。
それがこんなに華煉を消耗させることだとは知らなかった。
俺以外の人に声と共に幻を送り込むことも華煉なら出来るはずだ。
過去にそうやって人に語りかけたことだってあった。
何も実際に顕現しなくてもよかったはずなのに。
だが・・・華煉は首を横に振る。
「今のあの人は・・・あの人自身が幻のようなものだから。さらに幻を送り込むことなどしてはいけないの。今はそれしか言えない」
それだけいうと華煉は踊る。
石が歌うその横で小さな華煉が踊っている。
「華煉」
「何?」
「そんなに疲れていたなら、俺があのあとあの剣士と何を話したのか聞いてなかったんじゃないか?」
「ちゃんとは聞いていなかったけど、マナの身に危険はなかったでしょう?それにその指輪ちゃんとはめてくれているし。」
俺の指にはまった指輪をチラッと見ると華煉はまた楽しそうに踊っている。
なるほど。
聞いていなかったらしい。
確かに華煉は俺のためにこの指輪を欲しがった。
俺の守護を強くする、とても火の属性と相性がいい指輪だからと。
だが、火の属性と相性がいいなら、あの石は華煉の守護にもなるはずだ。
「華煉」
俺は隠し持っていた包みを広げて腕輪を華煉に見せた。
「あの剣士がこれをお前にってさ」
驚いた表情。
本当に聞いていなかったようだ。
歌う石が消える。
いや・・この夢のような華煉の空間から現実世界に一旦返したのだろう。
そして華煉は普通の人の大きさに戻る。
俺は華煉の右腕を取ると、その腕輪をそっとはめた。
俺の右手の薬指には赤い指輪
華煉の右腕にはおそろいの赤い石のついた腕輪
どちらの石も俺の瞳と同じ色
華煉が微笑む。
俺も微笑む。
華煉はとてもうれしそうに腕輪を眺めていた。
その様子を見て、俺はあの剣士に言われたことを思いだした。
「あの剣士の大事な人と名前が同じだと言っていたよ。」
そう俺が言うと、華煉は少し遠くを見るような目をした。
「あの人は・・・・・・」
「ん?」
「あの人は自分が何者であるか知っているのね・・・・。強い人。だけど哀しい人」
「華煉?」
華煉が泣きそうな声をしたので俺は少し驚いた。
「マナ」
「どうした?」
「この指輪と腕輪。大事にしたいね。」
「あぁそうだな。とてもいい物だ。大事にしような。」
「マナ」
「なんだ?」
「あの剣士さんのこと忘れたくないね。」
「あぁそうだな。いい奴だ。信頼できそうだし。剣の腕も強そうだった。もう一度いつか手合わせしてみたいな」
華煉はまた微笑んだ。
なんだかその表情が切なくて・・・・
「華煉・・・大丈夫か?」
華煉は微笑む。
ひどく弱々しく。
そして、頬を一筋涙が伝う。
「華煉?」
「私、絶対に忘れない。私にプレゼントをくれたあの人のこと・・・忘れない」
様子がおかしい?
泣き出した華煉を俺はそっと抱き寄せる。
どのぐらいそうしていただろう。
華煉がすっと俺から離れた。
「華煉?」
「うん、大丈夫。もう平気。」
あまり平気なようには見えなかったが・・・たしかに力は戻ったようだ。
俺の胸の刺青は華煉の力を増幅させるはずだから。
だが、力が戻っても様子がおかしいことには変わりはない。
もう少し華煉の様子を見ていたい。
何かおかしい。
だが・・・俺はそろそろ戻らなければならない。
シヴェルを待たせるわけにはいかないし、シヴェルを一人で戦わせるわけにもいかない。
俺はそっと目を閉じた。
目覚めて、日の高さで時間を計る。
今から急げばシヴェルと合流できるだろう。
眠る前に手にした包みの中から腕輪が消えていた。
肩の上に小さな華煉が顕現したのがわかる。
力が戻ったから顕現出来るようになったのだろう。
様子はまだおかしいが・・・肩の上の小さな華煉の腕には小さくなったあの腕輪。
「マナ」
「ん?」
「急いだ方がいい。シヴェルさん・・・苦戦している。」
俺は翼を広げると一気にシヴェルの元へ飛んだ。
シヴェルは俺と違って体力はそれほどない。
一人で行動させるのは危険だったが、魔法陣からの移動の時に遅れてしまったのだ。
ハーカが合流すると言っていたが、俺が止めた。
シヴェルもハーカも体力がないのに複数の敵を相手にするのは危険すぎるとおもったから。
だから・・・・俺は急いで合流しないといけなかったのに・・。
華煉の様子がおかしいのに気を取られすぎた。
「シヴェル!大丈夫か!」
常闇の召喚士はひどく疲れた顔をしていた。
魔力はまだみなぎっているが、体力は普段の半分ぐらいしかなさそうに見える。
「遅れてすまん。俺が敵をひきつけるから援護を頼む!」
俺たちを取り囲むのは砂蛸3体
「上等だ。・・・・・これ以上はやらせない。」
俺はいつものように二本の剣を引き抜いた。
日記中の歌晶石は紅葉一番街のイベントでアリステア(1156)さんから、
赤い指輪と腕輪は紅葉一番街のイベントでレン之助(カレン・ヌゥト・クサナギ(158))さんから
購入したものです。
ありがとうございました。
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