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29th day
ゆらり、ゆらりと火が揺れる。
ゆらり、ゆらりと風が吹く。
「───────緋魅」
「呼ばれましたか?」
「緋魅、あの島へ行ってくれないか・・・・清蘭殿とともに。」
「・・・・・・・・華煉ですか。」
「・・・・・」
「華煉ですね。」
「・・・・・」
「何度・・・繰り返すのでしょうね。」
「行ってくれないか?」
「・・・・・・・・参りましょう。 それが 様の望みならば。」
ゆらり、ゆらりと風が吹き・・・・
あざやかな炎が一つ。
あざやかな光が一つ。
島へと堕ちていった・・・・・・・
長い長い遺跡内。
今回は合流に失敗するものも多かったが、俺たちはようやく全員黒い太陽の魔法陣を踏んだ。
俺たちはあと少しで遺跡外へと脱出する。
時間がかかった。
トーキチローと別れ、ベアとも別れ、シヴェルと合流し、一夜を待ち、そしてようやくここへやってきた。
少々・・・厳しい道のりだったのかもしれない。
途中で白い砂浜を踏むことなく、一気に黒い太陽まで走破する。
地図を眺めて俺が言い出した。
無理なく行けると思っていた。
だが、アクシデントで食料が尽きた者もいる。
俺自身も途中で拾った肉が無ければ食料は尽きたかもしれない。
皆、疲労の色が濃い。
だが、今回遺跡外に出たら・・・
俺たちのこの先の進む道を考えて俺はほくそえんだ。
「何を笑っているの?」
振り返る俺の目に映るのは黄色い目と青い目の弓使い。
「いや、もう少しで・・・・と思ってな」
そういいがら、俺は火の宝玉を見つめる。
不思議な石。
力がみなぎる石。
そんな俺をみて何を思ったのだろう。
「あと少しで遺跡外に出るのは不本意?」
シクに問われた。
不本意かと聞かれると少し悩む。
ここでほとんど技を使わなければ・・・・少し頑張れば水の宝玉戦まで行けないことはない。
水の宝玉守護者がいるといわれている水源の森。
そこはもうすぐ目の前だ。
だが・・・・・
「いや、今のまま突入しても良いことは何一つないとおもうだろう?」
そう。みんな疲れ切っている。
この遺跡内で戦闘を続けると少しずつ少しずつ疲労が重なっていく。
疲労しきった時は・・・俺でさえ剣を振り回すことしか出来ない。
それに・・・
「明日は30日目だね」
相変わらず、俺の考えていることを読んだように的確に指摘してくる。
この島の遺跡の地層に変化が起こっているらしい。
今までもイプラリアの森が遺跡外と通じたり、・・・いくつかの地殻変動は見られていた。
だが、30日目に起こるといわれている変動は島にいる俺たち全員に影響を与えるほど大きな変動らしい。
俺の剣の威力もこの変動で鈍るかもしれないし、今まで以上に食料が重要になるかもしれない。
俺たちの隊長の舞華は今まで2~3日に一回しか食事をしていなかったらしい。
さすがは妖狐。
それであれほどの威力攻撃が出来るとはたいしたものだ。
だが、30日目に起こるという変動で一体何が起こるのか、誰にもわかりはしない。
食料だっていままでのような状態で維持できるかどうか・・・。
俺は頭を振ってシクのほうに振り返った
「わからないものは待つしかないさ。それにシクも弓を捨てる気はないんだろう?俺も何が起ころうと剣を捨てる気にはなれないけどな。」
シクはにこっと笑った。
「そろそろ行くよ。トーキチローとベアの元にいかないとな。」
「僕もシヴェルとミーティアのところに戻るよ。」
そういって俺たちは別れた。
遺跡外脱出前の最後の日。
俺とシクは近いけど別のエリアへ移動することになっていた。
移動の前に俺はシクに小手を強化してもらった。
俺の炎舞の小手に施された新しい効果。
これを使うことで、今までは同時に撃てなかったような複数の技が撃てるようになるらしい。
シンプルな小手に施された文様。
近くで見ないとわからないこの文様にどれほどの効果があるのか。
「遺跡外に出る前に・・・・試してみるか・・・」
俺は空を舞いながら一人考えた。
このとき、俺は気づかなければならなかった。
だけど、気づいていなかった。
今回の遺跡内にいる間・・・・あの紅葉の市の期間以外、華煉がほとんど姿を見せなかったこと。
一日に一度は姿を見せていたから気づかなかった。
それに何やら自分の空間で布を作っているのも見た。
俺に完成品を見られたくないらしく、隠しているが、あれは俺の服と同じ材質。
火喰い鳥の民が着ても燃えない糸で編まれた布地。
こっそり隠れて作りたいようだから、邪魔をしようとは思わなかった。
だから、そんなときもあるさ・・・・という程度で気にしていなかった。
そのころ、華煉は自分の空間に何かが引っかかるのを感じた。
おかしな気配。
『また・・・・島の影響を受けようとしているの?』
華煉は自らの空間内に意識を広げた。
だが、なんら異常は見られない。
『とすると・・・・』
次に自らの空間とつながっているマナの身体を調べる。
丹念に丹念に。
何一つ見落としのないように。
だが・・・・わずかな異常も見られない。
痕跡すらない。
そのことが逆に華煉を警戒させた。
何かが華煉の空間、若しくはマナの身体に触れた。
それはおそらく魔の力を有するもの。
そして・・・・触れた痕跡を見事なまでに消してみせた。
容易ならざる何かが近づいている。
華煉は糸をつむぎ始めた。
身を包む布を織るための糸ではない。
結界を強化する。
糸に触れる者を探す。
一種の呼子。
何があってもマナだけは守らなければならない。
そんな決意を秘めて糸を紡ぐ。
この不思議な遺跡の内部には、マナを危険な目に遭わせるような魔は侵入できない。
エキュオス??
サバスの言っていたエキュオスが何かしらの結界を布いているのかもしれない。
だが、もうすぐマナは遺跡外に出て行く。
遺跡外に出た時のほうが危ないのだ。
華煉は少しずつ少しずつ結界を強化する。
いざというときにマナだけでも守れるように・・・・。
ゆらり、ゆらりと火が揺れる。
ゆらり、ゆらりと光が灯る。
「あれが・・・・例の火喰い鳥の民?」
「そうじゃ。あれじゃな。」
「では予定通り。私はあの火喰い鳥の民を・・・そして、・・・」
「儂が華煉じゃの。いよいよもって難儀なことじゃなあ。」
30日目
この島に大きな変動が降りかかるとされている日。
だが、マナと華煉には・・・・別の、より大きな変化が降りかかろうとしていた。
長い・・・・・・長い・・・・・30日目の役者がそろおうとしていた。
ゆらり、ゆらりと風が吹く。
「───────緋魅」
「呼ばれましたか?」
「緋魅、あの島へ行ってくれないか・・・・清蘭殿とともに。」
「・・・・・・・・華煉ですか。」
「・・・・・」
「華煉ですね。」
「・・・・・」
「何度・・・繰り返すのでしょうね。」
「行ってくれないか?」
「・・・・・・・・参りましょう。 それが 様の望みならば。」
ゆらり、ゆらりと風が吹き・・・・
あざやかな炎が一つ。
あざやかな光が一つ。
島へと堕ちていった・・・・・・・
◆ ◆ ◆
長い長い遺跡内。
今回は合流に失敗するものも多かったが、俺たちはようやく全員黒い太陽の魔法陣を踏んだ。
俺たちはあと少しで遺跡外へと脱出する。
時間がかかった。
トーキチローと別れ、ベアとも別れ、シヴェルと合流し、一夜を待ち、そしてようやくここへやってきた。
少々・・・厳しい道のりだったのかもしれない。
途中で白い砂浜を踏むことなく、一気に黒い太陽まで走破する。
地図を眺めて俺が言い出した。
無理なく行けると思っていた。
だが、アクシデントで食料が尽きた者もいる。
俺自身も途中で拾った肉が無ければ食料は尽きたかもしれない。
皆、疲労の色が濃い。
だが、今回遺跡外に出たら・・・
俺たちのこの先の進む道を考えて俺はほくそえんだ。
「何を笑っているの?」
振り返る俺の目に映るのは黄色い目と青い目の弓使い。
「いや、もう少しで・・・・と思ってな」
そういいがら、俺は火の宝玉を見つめる。
不思議な石。
力がみなぎる石。
そんな俺をみて何を思ったのだろう。
「あと少しで遺跡外に出るのは不本意?」
シクに問われた。
不本意かと聞かれると少し悩む。
ここでほとんど技を使わなければ・・・・少し頑張れば水の宝玉戦まで行けないことはない。
水の宝玉守護者がいるといわれている水源の森。
そこはもうすぐ目の前だ。
だが・・・・・
「いや、今のまま突入しても良いことは何一つないとおもうだろう?」
そう。みんな疲れ切っている。
この遺跡内で戦闘を続けると少しずつ少しずつ疲労が重なっていく。
疲労しきった時は・・・俺でさえ剣を振り回すことしか出来ない。
それに・・・
「明日は30日目だね」
相変わらず、俺の考えていることを読んだように的確に指摘してくる。
この島の遺跡の地層に変化が起こっているらしい。
今までもイプラリアの森が遺跡外と通じたり、・・・いくつかの地殻変動は見られていた。
だが、30日目に起こるといわれている変動は島にいる俺たち全員に影響を与えるほど大きな変動らしい。
俺の剣の威力もこの変動で鈍るかもしれないし、今まで以上に食料が重要になるかもしれない。
俺たちの隊長の舞華は今まで2~3日に一回しか食事をしていなかったらしい。
さすがは妖狐。
それであれほどの威力攻撃が出来るとはたいしたものだ。
だが、30日目に起こるという変動で一体何が起こるのか、誰にもわかりはしない。
食料だっていままでのような状態で維持できるかどうか・・・。
俺は頭を振ってシクのほうに振り返った
「わからないものは待つしかないさ。それにシクも弓を捨てる気はないんだろう?俺も何が起ころうと剣を捨てる気にはなれないけどな。」
シクはにこっと笑った。
「そろそろ行くよ。トーキチローとベアの元にいかないとな。」
「僕もシヴェルとミーティアのところに戻るよ。」
そういって俺たちは別れた。
遺跡外脱出前の最後の日。
俺とシクは近いけど別のエリアへ移動することになっていた。
移動の前に俺はシクに小手を強化してもらった。
俺の炎舞の小手に施された新しい効果。
これを使うことで、今までは同時に撃てなかったような複数の技が撃てるようになるらしい。
シンプルな小手に施された文様。
近くで見ないとわからないこの文様にどれほどの効果があるのか。
「遺跡外に出る前に・・・・試してみるか・・・」
俺は空を舞いながら一人考えた。
このとき、俺は気づかなければならなかった。
だけど、気づいていなかった。
今回の遺跡内にいる間・・・・あの紅葉の市の期間以外、華煉がほとんど姿を見せなかったこと。
一日に一度は姿を見せていたから気づかなかった。
それに何やら自分の空間で布を作っているのも見た。
俺に完成品を見られたくないらしく、隠しているが、あれは俺の服と同じ材質。
火喰い鳥の民が着ても燃えない糸で編まれた布地。
こっそり隠れて作りたいようだから、邪魔をしようとは思わなかった。
だから、そんなときもあるさ・・・・という程度で気にしていなかった。
◆ ◆ ◆
そのころ、華煉は自分の空間に何かが引っかかるのを感じた。
おかしな気配。
『また・・・・島の影響を受けようとしているの?』
華煉は自らの空間内に意識を広げた。
だが、なんら異常は見られない。
『とすると・・・・』
次に自らの空間とつながっているマナの身体を調べる。
丹念に丹念に。
何一つ見落としのないように。
だが・・・・わずかな異常も見られない。
痕跡すらない。
そのことが逆に華煉を警戒させた。
何かが華煉の空間、若しくはマナの身体に触れた。
それはおそらく魔の力を有するもの。
そして・・・・触れた痕跡を見事なまでに消してみせた。
容易ならざる何かが近づいている。
華煉は糸をつむぎ始めた。
身を包む布を織るための糸ではない。
結界を強化する。
糸に触れる者を探す。
一種の呼子。
何があってもマナだけは守らなければならない。
そんな決意を秘めて糸を紡ぐ。
この不思議な遺跡の内部には、マナを危険な目に遭わせるような魔は侵入できない。
エキュオス??
サバスの言っていたエキュオスが何かしらの結界を布いているのかもしれない。
だが、もうすぐマナは遺跡外に出て行く。
遺跡外に出た時のほうが危ないのだ。
華煉は少しずつ少しずつ結界を強化する。
いざというときにマナだけでも守れるように・・・・。
◆ ◆ ◆
ゆらり、ゆらりと火が揺れる。
ゆらり、ゆらりと光が灯る。
「あれが・・・・例の火喰い鳥の民?」
「そうじゃ。あれじゃな。」
「では予定通り。私はあの火喰い鳥の民を・・・そして、・・・」
「儂が華煉じゃの。いよいよもって難儀なことじゃなあ。」
30日目
この島に大きな変動が降りかかるとされている日。
だが、マナと華煉には・・・・別の、より大きな変化が降りかかろうとしていた。
長い・・・・・・長い・・・・・30日目の役者がそろおうとしていた。
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