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48th day
山道をいく
二人だけ本体から離れていた舞華さんとミーティアさんも無事に造られしものに出あった頃だろう。
私は普段一緒に行動しているベアさんとトーキチローさんの強さを思い知って、自分も研鑽しないといけないと思った。
ハーカさんとは少し前に別れた。
ハーカさんと一緒だと気兼ねすることなく存分に火の力を出せた。
猫又は厳しい相手だったけど・・・なんとか二人で抜けることが出来た。
こんな風にハーカさんを守る障壁を展開したのは、実戦でははじめてだった。
猫又の力を削って・・・・火の力を思いっきり叩きこむ。
私も毒されてきたのかもしれない。
最近、剣を振るって戦うことが楽しくなってきた。
火の力を揮うのも楽しい。
今日は一人だから・・・・一人・・・
「マナ」
(どうした?華煉)
「最近、清蘭様とよくお話してない?」
(気になるのか?)
「うん、少し・・・・」
(今は無理だ。気を抜くと危ないだろう?そうだな。今度、遺跡外に戻ったら少し話をしようか)
「うん。待ってる。」
この前遺跡外であった時は、マナの様子が少し変だった。
でも、今度の遺跡外では・・・・・
「今度遺跡外に出たらいっぱいいっぱいお話しようね。絶対、約束だよ。私、楽しみにしてるから。」
(あぁ、俺も話したいことがある。今度遺跡外に出たら必ずな。約束しよう。)
うれしい。本当にうれしい。
今日の戦闘が終わったら遺跡外に帰る。そしたら・・・・
私はとても幸せな気分だった。
(■死亡フラグ祭り■・・・・にちょっとだけ参加してみた。死亡フラグってこんな感じ?)
注意:今回の日記フルバージョンには多少残酷な表現が含まれています。
読んで不快な思いをされる方もいらっしゃるかもしれません。
それでも構わないと言う方のみ下の方へスクロール
どちらかというと読まないことを推奨しておきます。
当Blogは基本的にはリンクフリーなのですが、この記事に限り、リンクは避けて下さい。
◆ ◆ ◆ ◆
「覚悟はいいかの?」
「あぁ、構わない。すぐに終わるんだろう?遺跡外に出たら華煉がやってくる。その前に済ませてしまおう。」
紅瑪瑙石の中の空間・・・床にも虚空にも書き連ねられた魔法陣。
清蘭の組んだ術式は複雑で、とっくに俺の理解を超えている。
俺はベッドの上から一歩も動けない状態だ。
上体を起こすぐらいなら可能だが・・・・それ以上動くと緻密に張り巡らされた魔法陣を崩してしまいそうだ。
時間回帰の術式はとても大掛かりで、いろんな色の魔法陣が展開された様子はとても綺麗だった。
「あまり見つめるなぃ。引き込まれたらお主の自我が弱くなる。」
造られしものを昇華したとはいえ、以前と比べると俺は弱っている状態なのだそうだ。
もう少し時間を置く方がいいのかもしれない。
だが、この島ではいつ何が起こってもおかしくない。
この先のリスクを考えたら、ベストな状態が来るのを待っていることなど出来ない。
俺は魔法陣を注視しないように気をつけながらそっとベッドに横たわる。
清蘭に教えられた呪を唱える。
「そろそろはじめるかのぉ。準備はよいかの?」
俺は無言で呪を唱えながら頷いた。
魔法陣が輝きを増す。
清蘭の力が俺の中に入り込んでくるのがわかる。
力はただ力としてあるのみ。
それを破壊に使うも生成に使うも、術者の腕次第。
俺の魂に染み込んでいく力はゆっくりと俺に干渉する。
俺は呪を唱え続ける。俺が俺であるために。冷静に客観視できる自分を保持するために。
◆ ◆ ◆ ◆
意識が過去に戻される。
3年前の焔の元服
俺ははじめて華煉にであった。
他の何人かの焔霊の顔も思い出す。
緋魅さんを見つけた。
最初の守護精霊選定儀式・・・俺が誰も選ばなかったあのときに、俺は緋魅さんに会っていた。
少し驚く。
5年前の炎の元服
7年前の火の元服
腕に彫られた炎の刺青。
いくつかの模様が並べられる。
俺は今のこの模様を選んだ。
誰かが俺の頭を撫でながら言った。
「その模様を選んだか。マインドスナッチ。その模様は焔齎印と言う。いつかその意味を教えてやろう」
誰だ?俺はまだこの模様の意味を知らないが・・・。
10年前そしてさらに遡り、俺は卵の中の自分に還った。
どこかに今の自分が残っている。
だが、自分のほとんどは卵の中の自分に意識を重ねている。
守られている。暖かい。
穏やかな卵の中で・・・・時折何かに力を奪われる。
今ならわかる。
このとき俺は焔霊の力を奪われていたのだと。
さらに時間が回帰する。
劫火に包まれる。
焔が収束すると俺は長い髪の少女になっていた。
真紅に近い髪の色。
だが、少女は死んでいた。
無残な姿で。
そうか。このあと、この少女は劫火で焼かれるのだ。
ごくわずかに残された俺の自我は周りの気配を探る。
そばで泣いているのは精悍な若者。
「マーシア・・・・愛していたのに・・・」
時間がさらに戻る。
マーシアと呼ばれた俺は生まれながらの火喰い鳥の民で
選んだ焔矢と呼ばれる守護精霊は精悍な若者で、マーシアを愛して堕精した。
俺たちは愛し合っていた。
だが、守護を失ったマーシアは魔に襲われ、汚され、魔の種子を孕まされた。
焔矢に懇願し、望みが叶えられないと知ると、自ら腹を切り裂き、魔の種子を殺そうとした。
だが、引き裂かれた腹から魔の種子の蔓が延びる。
マーシアの体を引き裂き、その血を吸って成長する魔樹に焔矢が焔を放ち・・・
マーシアは腹を黒焦げにして、全身を切り裂かれ死んでいた。
時間が戻る。
しあわせそうなマーシアとまだ精霊だった焔矢。
さらに時が戻る。
マーシアに火の儀礼が行われる。
マーシアが選んだ刺青は俺と同じ焔齎印だった。
さらに時が戻る。
焔に包まれた俺がまた時間を回帰していく。
今度の俺は焔霊で守護する火喰い鳥の民に火を放っていた。
俺が守護するべき相手は死んでいた。
その深い悲しみが伝わってくる。
守護契約に縛られ、守護し切れなかった相手に火を放ったあと、その生を捨てたのだろう。
さらに時が戻る。
美しい少女。
華煉に似た少女を俺は守護していた。
「眞那、私貴方に会えてとても幸せよ。」
俺が送った両手いっぱいの花を抱えて、俺にも、といって花を一本差し出す。
だが、焔霊の俺が触れると花は枯れてしまう。
俺は苦笑して、花よりもこちらが良いといって少女の髪に口づけた。
「愛している。カレン」
時がさらに戻る。
カルラレナータと呼ばれる少女。
火の儀式の時に誰かが話している。レナータというのは復活を意味するのだと。
カレンと呼ばれる少女が選んだのは、またしても焔齎印。
さらに時が戻る。
時を逆行するから、死んだところからその生を遡る。
不思議なぐらい安らかな死がない。
いつもいつも守護精霊が堕精し、守護をなくした火喰い鳥の民は
時には人に殺され、時には魔に襲われ、精霊の名残の力を振り絞った守護者に燃やされ、転生する。
闇に四肢を食われ、胴体と頭だけにされ、目をくりぬかれた少女
どこからみてもこと切れている。
周りに無残に散らばる四肢を何百もの蟲が食らい尽くすかのようにうごめく。
残された少女の顔・・・・・その空虚な眼窩から闇が染み出し、じわじわと蝕む。
時すでに遅し。かけつけた元守護精霊は絶叫と共に最後の救いの手を差し伸べる。
そして少女の体は浄化の焔に包まれる。
人に追われ斧で切りかかられ、焔をけしかけても逃げ切れず、何本もの斧が体を切り裂く。
悲鳴をあげる少年の下腹部が切り裂かれる。
体から引きずり出された内臓を無残にも靴で踏み潰され、苦痛に悲鳴をあげた少年を焔が一瞬で昇華する。
背中の翼を半ばもぎ取られ、背中から流れる血を啜る魔物たち。
魔が背中の傷から入り込み翼がばさばさと揺れる。上体が仰け反る。
体の中から食われる。
目を剥いて悲鳴を上げる青年の喉から魔物の腕が突き出したとき、青い焔がその身を包む。
衣服を切り裂かれた茶肌の体。
何人もの男が取り囲み、その体を貪る。
悲鳴をあげる声も枯れ、表情の凍った少女は散々嬲られた後に刀で喉を切り裂かれ・・・・
ひゅうひゅうと息を吐く音だけが響く中、浄化の焔が身を包む。
血まみれの腕にはいつも焔齎印。
なんだこれは・・・・
清蘭・・・・あんたが俺にみせたかったのはこんなものなのか?
俺は吐き気を必死で抑えながら問いかける。
何度も死を迎える自分。
過去を見るのだから仕方がないとは思うのだが・・・なぜ一度も安らかな死を迎えられないのだろう?
死の絶望とその前の幸せな日々。
俺と華煉の前世、前々世、・・・・
二人だけの幸せな日々は決して長続きしない。
哀しいぐらい幸せで・・・・とても幸せそうで、見ている俺自身がうらやましく思うほどの仲の良い二人。
幸せであればあるほど死は残酷だ。
何度も何度も死を見続けていく中で、ある時期から普通の死が混ざるようになる。
病死。
守護精霊を選んで1年と経たないうちに死ぬ。
選んだ守護精霊にはどこか違和感。
『一時期、お主と華煉を引き離そうと言う試みがなされた。だが、お主か華煉が別の相手を選んだ場合、必ず一年と経たずに死亡した。』
幸せを知らない時にだけ迎える安らかな死。
幸せであればあるほど、迎える絶望的な死。
過去へ過去へと流れていくなか・・・はるか先に光が見えた。
直感的にわかる。
あれが、燦伽とイールの時代。
あそこまでたどり着けばいい。
あそこまで、あと少し、もう少し。
そして俺は光に包まれる。
俺は・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆ ◆ ◆ ◆
不意に意識が引き戻された。
ベッドの上で俺は気づく。
「何を見たか教えてもらえんかのぉ。」
今見たこと。俺にはわかった。俺のずっと昔の生。
「俺は・・・・・」
◆ ◆ ◆ ◆
あと少しで遺跡外に帰る。
そしたら、マナといっぱいお話しよう。
その前に・・・・目の前にいる栗鼠さんたちを追い払わなきゃね。
私は剣を構えた。
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