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闇と鎖と一つの焔

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  • 11/23/15:53

ファンタジー・ア・ラ・カルト(1)




冬の海には二種類ある。

透明な空気が魅せる青い空、夏とは違う透明な日差しの穏やかな海

そして、

冷たい風、暗い雲、暗い空に包まれ、寒さで凍えそうな身を切るような冷たい海

この日の海は後者だった。

冷たい風の舞う海岸

島でも人気のない辺境の地

海で生活している者たちが細々と漁をする。



だが、漁は早い時間に終わる。

今の時間帯は海岸にも人はいない。

その地を一人歩く。

彼は海が好きだった。

どちらかというと夏の日差しと入道雲、明るい海が好きだった。

だが、冬の海だって嫌いではない。

彼は生まれたときから海に生きる者だから。

赤い髪をなびかせながら、まっすぐ海を眺める。

冬の海であっても目を輝かせて。



あとからやってきた男はそんな背を見つめて思う。

この島に来て一回り大きくなった。

戦い、ボロボロになり、時に襲われ、敗れた悔しさを声に出して荒げる。

そのすべてが経験になる。

本当に大きくなった・・・・・



海を見ていた視線が海を離れて後ろを振り返る。


「何をぼ~っとみてやがるんだ?」


感傷に浸っていたため、一瞬言葉に詰まる。


「着いたんなら、早く声かけろよ。こんなところで突っ立ってたら寒ぃだろ。」


そういいながらこちらに歩いてくる。

ここで待ち合わせをしていたから。


「スズは?あいつもくるんだろ?いねぇのか?・・・・・おぃ、何をぼ~~っとしてるんだ?おい、しっかりしろよ」

「若・・・・・・・・」

「どうした?凍えちまったのか?・・・仕方ねぇな。お前は寒さ・・というか気温の変化に弱いんだったな。
 こいよ。あっちにうまい店があるんだ。フェンもあっちにいる。マジョもだ。
 あったかいもんでも食って、話はそれからにしようぜ、な!」


そういって肩を叩くと、ついてこいというかのように歩き始めた。

その背は一端の男になっていて・・・・・それはある意味寂しい光景だった。

育った者はいつか手の中から飛び出していく。

狭い世界で守られる者も、いつか自らの力で広い世界へ飛び出していく。

複雑な思いを抱えながら、それでも・・・・


ダナスはついて行く。

さなぎが蝶になろうとしている。

その一瞬に寂しさを感じながら。


辺境の浜辺 レッド・ロック(1753)さん & ダナス・マルシェ(1845)さん
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