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42日目の日記補完
再び魔法陣を抜ける。
この異様な空間・・・・どうして移動先に着くまでパーティのみんなが一緒にいるかどうかわからないんだろう?
久しぶりにトーキチローさんとベアさんと一緒に戦う。
トーキチローさんは強いペットをいつの間にか引き連れていた。
私は・・・・私は何か変われたのかな?
強い火の力を少しずつ少しずつ戦闘に生かして行きたい。
強い剣・・・重たい剣・・・発揮できない性能。
それでも・・・強くなりたい。
マナを取り戻すために。
目の前にはまた敵意をむき出しにする獣達。
「ごめんね」
命を奪うことは好きになれない。
だけど・・・・・・・・・私には大事な・・・とても大事な失えない人がいるから。
剣を構える。
強くなりたいと心から思った。
◆ ◆ ◆
華煉には華煉なりの戦い方があるはず。
俺は見守ろう。
何も言わず、ただ、見守ろう。
しかし・・・・・・回復系の厄介な敵に捕まったものだ。
あの技を使えば負けることはないと思うが・・・
「ふむ、がんばっておるようじゃな。」
「清蘭、あんた、また来たのか?」
振り返ったときそこにいたのは旧知の聖霊ともう一人・・・
「焔霊?まさか?」
「焔霊じゃよ。緋魅というてな、華煉とずっと仲良くしておった。焔霊の姉貴分じゃな。」
長いまっすぐな髪
気の荒そうな焔霊に多いタイプの・・・・俺が他の焔霊ではなく華煉を選んだのは、多くの焔霊が気の強そうな性質をもっていたからだ。
華煉のような触れると折れてしまいそうな雰囲気を纏う焔霊は珍しい。
だから、俺は華煉を選んだのだけど、それにしても・・・・
「失礼ですが、里でお会いしたことが?」
記憶にはない。
だけどこの雰囲気を俺は知っている気がする。
どこかで・・・・
「ふん・・・・・かすかに憶えていたか。この姿でも記憶にないか?」
意外と口の悪い女性。確かに見たことがあるような・・・
緋魅さんはゆっくりと姿を変える。
赤い光が徐々に薄れ、あたりを照らすのは白い・・・・いや・・・青い光?
どこかでみたような・・・・それもこの島で。
絶対に会っている。
だが・・・・
「緋魅、やめておけ。この男には、あの日の記憶が抜け落ちておるでの。」
「記憶が?俺・・・?」
「気にするでない。他の者も忘れておるよ。大幅な時間の巻き戻りがあったでのぉ。並みの人であれば憶えておらぬが普通よ。朧気でも憶えておるのなら上出来なほうじゃ」
清蘭が俺の肩を叩く。
あまりにも自然で、あまりにも自然だったから・・・・・・油断した。
「せ・・・」
声が出ない。
膝が崩れる。
その場に倒れた俺の体はふわりと宙に固定される。
俺に出来ることは清蘭を睨みつけるぐらいだ。
「すまんのぉ。じゃがな。どうしてもお主が必要での。」
「清蘭様、このような男に気を遣うことはありません。この男さえいなければ、華煉はあのように堕ちることもなかったのに。」
そうか。
どうも嫌われているような気がしていたが・・・・この人は華煉を本当に大事に思っていたんだな。
そう。
俺が里に戻っていれば華煉は堕ちずに済んだだろう。
俺もこんな風に封じられることなく、自由に里の空を舞っていただろう。
俺が封じられたのは、俺が里に戻らなかった故の罰。
もう、俺はとっくに受け入れた。
この先の永い永い孤独な時間を思うと気が遠くなりそうだが・・・。
華煉が堕ちたのは、すべてを悟っていながら、里に戻るように俺を説得できなかった罰。
だが、華煉は今も夢を追っている。
俺と共に歩く夢を。
華煉を大事に思っているこの人から見たら、さぞ俺が憎いだろうな。
「ふむ、睨むのをやめてくれたようじゃの。すまんが、ちょっくらおぬしを借りるよ」
そういって清蘭は何かの力を揮った。
だが・・・・俺の体に届く前にはじき返される。
ここは華煉の保持する空間。
俺を守るためだけに作られた、俺の魂の形を変えないために作られた空間。
俺を縛りつける・・・・・・・・・煉獄
この場で俺が拒絶する力は俺には届かない。
前に清蘭に体を借りたことがあった。
あれは俺が望んだから。
俺が望んだ力だったから俺に届いた。
今・・・俺は清蘭の力を拒絶する。
俺は生まれたときから干渉されてきた。
訳もわからぬまま、これ以上干渉されるのはごめんだ。
「抵抗しよるか。そうじゃろうなぁ・・・・緋魅、力を貸せ」
「承知」
緋魅さんが姿をまた赤い焔霊の姿に変える。
禍々しい緋色
血の色
清蘭の白い力に緋魅さんの毒々しい赤が混ざる。
焔霊の力は華煉の力に溶け込みゆっくりゆっくりと俺の体に近づいてくる。
力の欠片が俺の体に届く。
声を出せないまま俺は絶叫する。
禍々しい力。
俺の意識を飲み込もうとする力。
俺は必死で意識を保とうとする。
それは・・・・徒に俺の苦しむ時間を長引かせることとなった。
◆ ◆ ◆
「マナ!」
何かが起こっている。
だけど、ここで戦闘から離れるわけにはいかない。
焦る心は技を出す余裕を奪う。
それは徒に戦闘を長引かせることになる。
「道を開けてちょうだい!」
華煉の前に立つのは大地の力を有するエゾリス達。
彼らは簡単には道をあけてくれそうにはない。
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