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45th day
造られしものを破壊した。
今の私では感情を取り戻させてあげることも、転生させてあげることもできなかった。
小さな、小さな雫が残った。
あの声も聞こえなくなった。
綺麗な雫。
この輝きが彼の命だったんだろうか?
「ごめんね。」
転生させてあげられなくてごめんね。感情をあげられなくてごめんね。
この雫・・・・
「・・・・重たいね。」
命は受け継がれなくてはならない。
輪廻の輪に戻らないといけない。
「・・・・一緒に戻ろうか?」
小さな雫。
どうするのか心は決まった。
◆ ◆ ◆ ◆
華煉は雫に気を取られていたから、俺が声をかけた。
緑色の石がそこにあること。
舞華が欲しがっていた石。
例え華煉が使わなくても、拾っておくべきだ。
華煉は何もいわずにそっと石を荷袋の中にしまいこんだ。
手のひらの上にはまだ雫。
辺りには厄介な敵の気配がする。
この相手では華煉は勝てないかもしれない。
俺は一生懸命考えはじめる。
ある程度は反射して凌ぐしかない。
だけど、それだって万能じゃない。
相手に先制してダメージを与える力を持つか、相手に削られてもそれを上回る回復手段を持つか。
今の華煉には両方足りない。
今の俺たちの移動はベアと舞華とミーティアが遅れを取っている。
ベアとミーティアの遅れは取り戻せるが、舞華の遅れは探索日にして2日間となりそうだ。
遺跡外に出たあと、舞華を待つ間どういう行動を取るのか、今みんなで話している。
どうやら次の目標まではゆっくりゆっくり進むことになりそうだ。
それならそれもよし。
もとより急ぐ探索ではない。
俺たちはのんびり行こうと言って始めたはずだ。
俺のために宝玉を集めたがっている華煉はイラつくかもしれないが、華煉にとってもちょうど良いはずだ。
華煉に憶えて欲しい技がある。
その技は今日鍛えてもまだ憶えられる見込みが立たないかもしれないからだ。
ゆっくり進むならそれだけ時間が出来る。
俺が次に華煉に教えたい技は「ストームブリンガー」
その名は命をすする剣に由来する。
メルニボネの王子 エルリックが携えたという、混沌の剣。
世界を法が満たした時に、最後に生き残った邪悪の種。
魂をすする剣。
魂をすすることで、持ち主であるエルリックに力を与えた剣。
すすられた魂は永劫に剣の魂の一部となり常に戦いに身をおき・・・安息を得ることは出来ない。
多くの者をその身に取り込んだ忌まわしい混沌の欠片。
忌まわしい名を持つ技ではあれども・・・命をすすり、揮う者の力になる技
あまりの忌まわしさ、だが、妙に惹かれるその名。
俺はその技を習得することを避けてきた。
だが、あの技は華煉に必要だ。
「魂の一部を食らうことを華煉に教えたくはないのぉ。取り込んだ魂で華煉の魂が歪むかもしれんでのぉ」
もうこのパターンにも慣れてきた。
いつも急に話しかけてくるこの聖霊はつい先日俺とやりあったことを忘れたかのようにのほほんと話しかけてきた。
「清蘭、俺が剣の技を華煉に教えるのは不服か?」
俺もいつものように受け答える。
俺たちの間の絆はこんなものだ。
華煉を間に挟んで通じている俺たち。
思うことは常に華煉の幸せだけだ。
だから、多少やりあったとしても、すぐにいつものように戻れる。
例え考え方は多少違っても、互いに望んでいることは同じなのだから。
「剣技?ふむ・・・人の教える剣技で魂まですすることは出来んよ。忌まわしい名を持っていたとしても、力を奪うだけじゃろうて。その程度で変質するような安い魂を華煉は持ち合わせておらぬ。」
確かに、剣技ごときで魂を変質させていたら、人はやっていけないだろう。
いや・・・そうでもないか?
剣を揮い、命を奪うことは、人の心に重くのしかかる。
その重さは人の魂を変質させてはいないのだろうか?
考え込んだ俺を見て、清蘭はさらに言葉を続けた。
「ほれ。あれを見てみるが良い。」
華煉はまだ雫を見つめている。
光る雫
造られしものが落としたもの。
「あれには何やら力がこもっておる。この島を異形にしているのと同系統の力。
あれは感情をなくした生命体の欠片
歪んだ魂
歪められた魂というべきかのぉ。
あんなものを取り込んだから、どうなってしまうかわからんぞぃ」
この島を・・・・異形にしているのと同種の「力」だと?
「そんなもの吸収したらダメに決まってるじゃないか!!」
この異形の島、歪んだ島を包むのと同じ力
この島に来て変質した華煉
この島に縛られた華煉
すべての破綻の始まり。
それを・・・・
「だが、あの子は命を受け継ぎたいようじゃよ。
昇華出来なかったあの魂を自分と共に輪廻の輪に戻してやりたいらしい。」
「だめだ!あれを受け入れたら華煉は華煉じゃなくなる。そんなこと絶対にダメだ!
止めてくれ。今なら止められるんだろう?」
清蘭は首を横に振る。
「決意は固そうじゃ。あの子は命の重さと輪廻の重さを知っておるからのぉ」
「なら、あの雫を俺が受け入れる。」
「なんじゃと?」
「華煉はまだ俺の魂が輪廻の輪に帰らないことを知らない。別に俺が吸収しても文句はないはずだ。
華煉には先がある。まだ華煉は輪廻の輪に還れる。焔霊に戻れる見込みがまだあるんだ。
俺の魂は変質しても、還らないから問題ないだろう?頼む。清蘭。華煉を説得してきてくれ!」
◆ ◆ ◆ ◆
「華煉」
雫を眺めていた私に声をかけてきたのは・・・
「マナ?・・・・・・ううん、清蘭様ですね。」
姿形はマナと同じ。だけど白い肌と金色の髪。
これは前に魂だけになってしまったマナが自由に動くために清蘭様が用意した器。
でも、今、この器に納まっているのは、体を持たない聖霊の清蘭様だ。
「清蘭様、その器を使うなんて悪趣味です。」
「仕方があるまい。これが一番この場に顕現させやすい形じゃからのぉ」
声も全然違う。眼差しも違う。同じ器でも魂が違うだけでこんなに違って見えるものなんだ。
やっぱり・・・・・マナじゃない。
「あの男から伝言じゃよ。」
「マナから?」
「その雫が欲しいそうじゃ。魂だけとなったあの男から見ると、また違った何かが見えておるようじゃのぉ」
「清蘭様?」
「なんじゃい」
「何か隠してらっしゃいませんか?」
「ふん。嘘じゃと思うなら耳を傾けてみるが良い。あの男がさっきから呼んでおるよ。」
言われて気がついた。
雫を見ていて気づかなかった。
確かにマナが呼んでいる。・・・・・この雫を欲しがっている?どうして?
よく聞き取れない。だけどマナが欲しがっていることだけはわかった。
私は雫を清蘭様に渡した。
「届けて下さいますよね?」
「無論じゃ。」
そういえば、この島に顕現してからいろんな物を手にした。
だけど、マナはすべてそれを私のために使うように言った。
マナが欲しがったなんてはじめてだ。
ちょっとだけ罪悪感。
命の重み・・・・
だけど・・・・マナが喜ぶなら・・・・。
もうすぐ遺跡外に戻る。
そしたらまたマナに会える。
マナが喜んでくれるなら・・・・わたしは・・・・
◆ ◆ ◆ ◆
ストームブリンガー
魂をすする剣
すすられた魂は永遠に剣の魂の一部となり、永遠に安息を得られない。
俺はじっと清蘭の届けてくれた雫を眺めた。
輪廻の輪に還れない俺の魂に混ざるお前。
永遠に俺の魂の一部となり・・・・・・・・お前は俺と共に永遠に安息を得られない。
許せ。
光る雫・・・・・・断ち切られた輪廻の輪・・・
俺はそっと雫に手をかざし・・・そして・・・・
マナの雫 を使用しました!
マナ「これは俺が使う・・・華煉・・・お前はこれを使うな。」
沢山の青白い光が溢れだし身体に染み込まれてゆく・・・
成長によるCP獲得量が永続的に 2 増加!
マナの雫 は消滅しました。
今の私では感情を取り戻させてあげることも、転生させてあげることもできなかった。
小さな、小さな雫が残った。
あの声も聞こえなくなった。
綺麗な雫。
この輝きが彼の命だったんだろうか?
「ごめんね。」
転生させてあげられなくてごめんね。感情をあげられなくてごめんね。
この雫・・・・
「・・・・重たいね。」
命は受け継がれなくてはならない。
輪廻の輪に戻らないといけない。
「・・・・一緒に戻ろうか?」
小さな雫。
どうするのか心は決まった。
◆ ◆ ◆ ◆
華煉は雫に気を取られていたから、俺が声をかけた。
緑色の石がそこにあること。
舞華が欲しがっていた石。
例え華煉が使わなくても、拾っておくべきだ。
華煉は何もいわずにそっと石を荷袋の中にしまいこんだ。
手のひらの上にはまだ雫。
辺りには厄介な敵の気配がする。
この相手では華煉は勝てないかもしれない。
俺は一生懸命考えはじめる。
ある程度は反射して凌ぐしかない。
だけど、それだって万能じゃない。
相手に先制してダメージを与える力を持つか、相手に削られてもそれを上回る回復手段を持つか。
今の華煉には両方足りない。
今の俺たちの移動はベアと舞華とミーティアが遅れを取っている。
ベアとミーティアの遅れは取り戻せるが、舞華の遅れは探索日にして2日間となりそうだ。
遺跡外に出たあと、舞華を待つ間どういう行動を取るのか、今みんなで話している。
どうやら次の目標まではゆっくりゆっくり進むことになりそうだ。
それならそれもよし。
もとより急ぐ探索ではない。
俺たちはのんびり行こうと言って始めたはずだ。
俺のために宝玉を集めたがっている華煉はイラつくかもしれないが、華煉にとってもちょうど良いはずだ。
華煉に憶えて欲しい技がある。
その技は今日鍛えてもまだ憶えられる見込みが立たないかもしれないからだ。
ゆっくり進むならそれだけ時間が出来る。
俺が次に華煉に教えたい技は「ストームブリンガー」
その名は命をすする剣に由来する。
メルニボネの王子 エルリックが携えたという、混沌の剣。
世界を法が満たした時に、最後に生き残った邪悪の種。
魂をすする剣。
魂をすすることで、持ち主であるエルリックに力を与えた剣。
すすられた魂は永劫に剣の魂の一部となり常に戦いに身をおき・・・安息を得ることは出来ない。
多くの者をその身に取り込んだ忌まわしい混沌の欠片。
忌まわしい名を持つ技ではあれども・・・命をすすり、揮う者の力になる技
あまりの忌まわしさ、だが、妙に惹かれるその名。
俺はその技を習得することを避けてきた。
だが、あの技は華煉に必要だ。
「魂の一部を食らうことを華煉に教えたくはないのぉ。取り込んだ魂で華煉の魂が歪むかもしれんでのぉ」
もうこのパターンにも慣れてきた。
いつも急に話しかけてくるこの聖霊はつい先日俺とやりあったことを忘れたかのようにのほほんと話しかけてきた。
「清蘭、俺が剣の技を華煉に教えるのは不服か?」
俺もいつものように受け答える。
俺たちの間の絆はこんなものだ。
華煉を間に挟んで通じている俺たち。
思うことは常に華煉の幸せだけだ。
だから、多少やりあったとしても、すぐにいつものように戻れる。
例え考え方は多少違っても、互いに望んでいることは同じなのだから。
「剣技?ふむ・・・人の教える剣技で魂まですすることは出来んよ。忌まわしい名を持っていたとしても、力を奪うだけじゃろうて。その程度で変質するような安い魂を華煉は持ち合わせておらぬ。」
確かに、剣技ごときで魂を変質させていたら、人はやっていけないだろう。
いや・・・そうでもないか?
剣を揮い、命を奪うことは、人の心に重くのしかかる。
その重さは人の魂を変質させてはいないのだろうか?
考え込んだ俺を見て、清蘭はさらに言葉を続けた。
「ほれ。あれを見てみるが良い。」
華煉はまだ雫を見つめている。
光る雫
造られしものが落としたもの。
「あれには何やら力がこもっておる。この島を異形にしているのと同系統の力。
あれは感情をなくした生命体の欠片
歪んだ魂
歪められた魂というべきかのぉ。
あんなものを取り込んだから、どうなってしまうかわからんぞぃ」
この島を・・・・異形にしているのと同種の「力」だと?
「そんなもの吸収したらダメに決まってるじゃないか!!」
この異形の島、歪んだ島を包むのと同じ力
この島に来て変質した華煉
この島に縛られた華煉
すべての破綻の始まり。
それを・・・・
「だが、あの子は命を受け継ぎたいようじゃよ。
昇華出来なかったあの魂を自分と共に輪廻の輪に戻してやりたいらしい。」
「だめだ!あれを受け入れたら華煉は華煉じゃなくなる。そんなこと絶対にダメだ!
止めてくれ。今なら止められるんだろう?」
清蘭は首を横に振る。
「決意は固そうじゃ。あの子は命の重さと輪廻の重さを知っておるからのぉ」
「なら、あの雫を俺が受け入れる。」
「なんじゃと?」
「華煉はまだ俺の魂が輪廻の輪に帰らないことを知らない。別に俺が吸収しても文句はないはずだ。
華煉には先がある。まだ華煉は輪廻の輪に還れる。焔霊に戻れる見込みがまだあるんだ。
俺の魂は変質しても、還らないから問題ないだろう?頼む。清蘭。華煉を説得してきてくれ!」
◆ ◆ ◆ ◆
「華煉」
雫を眺めていた私に声をかけてきたのは・・・
「マナ?・・・・・・ううん、清蘭様ですね。」
姿形はマナと同じ。だけど白い肌と金色の髪。
これは前に魂だけになってしまったマナが自由に動くために清蘭様が用意した器。
でも、今、この器に納まっているのは、体を持たない聖霊の清蘭様だ。
「清蘭様、その器を使うなんて悪趣味です。」
「仕方があるまい。これが一番この場に顕現させやすい形じゃからのぉ」
声も全然違う。眼差しも違う。同じ器でも魂が違うだけでこんなに違って見えるものなんだ。
やっぱり・・・・・マナじゃない。
「あの男から伝言じゃよ。」
「マナから?」
「その雫が欲しいそうじゃ。魂だけとなったあの男から見ると、また違った何かが見えておるようじゃのぉ」
「清蘭様?」
「なんじゃい」
「何か隠してらっしゃいませんか?」
「ふん。嘘じゃと思うなら耳を傾けてみるが良い。あの男がさっきから呼んでおるよ。」
言われて気がついた。
雫を見ていて気づかなかった。
確かにマナが呼んでいる。・・・・・この雫を欲しがっている?どうして?
よく聞き取れない。だけどマナが欲しがっていることだけはわかった。
私は雫を清蘭様に渡した。
「届けて下さいますよね?」
「無論じゃ。」
そういえば、この島に顕現してからいろんな物を手にした。
だけど、マナはすべてそれを私のために使うように言った。
マナが欲しがったなんてはじめてだ。
ちょっとだけ罪悪感。
命の重み・・・・
だけど・・・・マナが喜ぶなら・・・・。
もうすぐ遺跡外に戻る。
そしたらまたマナに会える。
マナが喜んでくれるなら・・・・わたしは・・・・
◆ ◆ ◆ ◆
ストームブリンガー
魂をすする剣
すすられた魂は永遠に剣の魂の一部となり、永遠に安息を得られない。
俺はじっと清蘭の届けてくれた雫を眺めた。
輪廻の輪に還れない俺の魂に混ざるお前。
永遠に俺の魂の一部となり・・・・・・・・お前は俺と共に永遠に安息を得られない。
許せ。
光る雫・・・・・・断ち切られた輪廻の輪・・・
俺はそっと雫に手をかざし・・・そして・・・・
マナの雫 を使用しました!
マナ「これは俺が使う・・・華煉・・・お前はこれを使うな。」
沢山の青白い光が溢れだし身体に染み込まれてゆく・・・
成長によるCP獲得量が永続的に 2 増加!
マナの雫 は消滅しました。
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