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闇と鎖と一つの焔

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  • 11/23/10:46

1783

胸部の情報処理機器が作動を始める。
頭部のアンテナから電波が飛ぶ。
この島の遺跡の地下からでも母船との通信は確保されている。

母船ではこの遺跡の熱量スキャンが行われており、冒険者の移動が常にモニタリングされている。

すでにこの遺跡のいくつかの通路のデータは母船で収集された。
だが、遺跡に元々いる生物のデータは母船にはない。
地上にいた者達にはマーキングできても、元々地下に生息する者達を捕捉することは困難だ。


だからこその潜入探査。


探索型ボディにはこの星での行動に適した生命体であるヒトの形態を採用。
中でもより生命維持能力が高いとされるメス型の形態を選択。
ボディ内部に情報処理機能を搭載。
遺跡での行動に足りるだけの腕力強化チューニング。
外観は地下の行動であることから、この星の太陽光の影響などは一切考慮せず。


完成したのはメタリックな肌を持つ腕力強化型ヒューマノイド
ボディNo.1783 ケイ


母船からの通信で遺跡の構造と人の流れを知る彼女は
 人の多く立ち止まる場所、
 人の滅多に立ち止まらぬ場所、
それぞれの場所で立ち止まり、現れる生命体の情報を収集する。


人の滅多に立ち止まらぬ場所、そこは危険地帯ともいえる。
彼女のボディの耐久性を遥かに超えるダメージを生む生命体すらいるかもしれない。


だが、所詮彼女は母船の端末。
ボディなどいつでも代えが効く。
もしも彼女が失われたら、母船は新たな端末を作り、遺跡へと送り込むだけ。


ボディNo.1783 ケイ


探査ボディが犠牲になろうとも、メインコンピュータに記録は残る。



記録に残らぬ唯一のもの。
ヒューマノイドであるがゆえに獲得された彼女の人格。
敗北すれば悔しく思い、予想外の強敵との戦いに絶望する。
笑って、怒って、叫んで、泣いて・・・・。


その感情すら母船から見れば、動作を不安定にするバグに過ぎない。

いつしか母船は気づくだろう。
人格を持った彼女が危険な場所をさける計算を始めたことに。

偏ったデータは役に立たない。
いつか母船は彼女を誘導するために計算されつくした偽の地図情報を送信するだろう。


False Island


母船と端末のだましあい。
それすら宇宙船・彗星のメインコンピュータにとっては、ただのメンテナンスに過ぎない。


たとえ危険な場所に立ち止まるように仕向けられても、
彼女のボディを上回る強度の敵に出会わないことを祈ろう。

天文学的な確率の偶然で人格を宿した奇跡のヒューマノイド、
流星の落とし子に幸多からんことを。


三人目のお題 「犠牲」  1783 流星の落とし子
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