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闇と鎖と一つの焔

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  • 05/03/01:07

15

白い翼を持った少女が空を舞う。

ここは遺跡の中の一本道。
ひたすら続く床と砂地。
遠く彼方まで続く道を見渡せないかと空に舞う。


遺跡の中に広がる偽の空なのに、時には深い雲で覆われたり、霧で隠れたり・・・・
そんな時は心配してついて来る彼も今日はついて来ない。

今日の空は快晴。
地上からもユーリの姿とユーリに近づく者はすぐに識別できる。


久しぶりに1人で気持ちの良い快晴の空を舞う。
道の先は砂地が続いていて、その先は霧がかかって見えない。

この時点で偵察の役目は終わり。
でも、久しぶりの1人の空。久しぶりに広げる翼。


「くすくす」


ユーリはなんだか楽しい気持ちになった。


──────この空の果てまで届くといいな。


いつしかユーリは歌っていた。


美しい自然に感謝する歌
さわやかな空をたたえる歌
優しい彼への愛を紡ぐ歌
そして、自由への賛歌。


気持ちの良い空。広がる翼。
空に解けるように響く声。
気持ちの良い時間。
心まで空に解けるような、めまいすら起こしそうな気持ちのよさ。


あぁ、今・・・・私は自由だ


普段何かに囚われているわけではない。
なのに空でこうやって歌っていると、自分は本当に自由なんだと感じる。


ユーリはいつまでも歌っていた。





  
そんなユーリの姿を最初は暖かく見守っていたのに・・・
空の上で歌う彼女を見ていたらまるでそのまま空に解けて消えてしまいそうな錯覚に陥る。

手を伸ばしたら、雪のようにはかなくそのまま消えてしまいそうな・・・ 
自分の腕の中からどこか遠くへと飛び立ってしまいそうな錯覚。

「ユーリ!!!」

彼は思わず大きな声で呼んでしまった。




 
「ユーリ!!」

その声にはっと気づく。
心配そうな声。自分を見つめるまなざし。
あわてて地上へと降り立つ。


駆け寄ってくる彼を見ながら、少しずつトランス状態から現実へと還る。
空に解けるような感覚が消え、自分の身体を感じ始める。
自由な感覚が少しずつ薄れていく。

それでも、心配そうな彼を見て、──────囚われてもいいと思った。



「ごめんなさい。心配かけちゃって。」


歌に自分をささげているときほど自由な時間はない。
心からそう思う。

でも、・・・・・・・たとえ自由ではなかったとしても・・・ここがユーリの一番居たい場所。


五人目のお題 「自由」  15 エウリーネ=ファラキス
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