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闇と鎖と一つの焔

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  • 11/22/05:32

71日目の日記

「ん・・・・いい天気だな。」

俺は手を伸ばして天を仰ぎ、そのまま少し背をそらせた。
視界には炎の翼
少し前に闇に侵食していた気配など欠片も残っていない。

いや・・・よく見ると爪の跡がある。
だが、それすらも数日のうちに消えるだろう。

「はっ!」

バサッ

空を舞うのも久しぶり。
俺は長い夢の中でみた歌を謡う。
声が出せる。
風を切る。
そんな些細なことがとても楽しい。


『機嫌が良さそうじゃの』

俺の足先が大地を捉えるタイミングを見計らうかのように頭に響く声

「清蘭?」

『久々の身体はどうじゃな?』

口元が緩むのがわかる。
自分の手を見て腕をさする。
こんな感触すらうれしい。

「動けるって素敵なことだったんだな。俺・・・自由が本当にうれしい」

手を伸ばす。
日の光を感じる。
些細な感触。
雲が日を隠すと少し寒さを感じる。そんな感触すら心地よい。

『そうか。それならよかった』



俺達はなんとなく当たり障りのない言葉を交わしていた。
だが・・・そうもいってはいられない。

「清蘭」
『なんじゃ?』

俺は意を決して言葉をつむぐ。

「華煉は?」

一瞬の静寂
そしてため息。

『まだ茫然自失しておってな。話が出来る状態では無いわぃ。』

「そうか・・・・」

まだ華煉は何が起こったのかわかっていないのか。
俺の胸には相変わらず刺青
それが何を意味するか・・・・

『器は変わっても刺青はかわらんのじゃな』

「あぁ、俺の守護精霊は華煉だけだ。それに華煉は俺の元の身体に入っているだけで、完全に受肉したわけじゃない。焔霊の力もまだ残ってる。・・・・・・・・昔の眞那以上に。」

『じゃから、まだ守護を任せると?』

「あぁ。ところで清蘭?俺たちのこの会話・・・・華煉は聞いているのか?」

『あぁ、聞こえておるよ。呆然としておるから聞こえていても聴いてはおらんかもしれんがのぉ』

そうか。
話を聞いているのか。
それなら・・・・・

「清蘭」

『なんじゃ』

「俺・・・・あと何日残されてる?」

『そうじゃな・・・・・・・もって、あと20日というところじゃろうな』

あと20日か・・・・・

『誰ぞ会いたい人はおらんのかの?』

残り少ない期間、日ごろ会えない人のことが気にならないといえば嘘になる。
それでも時間は少なくて・・・・

「いや・・・・俺は今の俺に出来ることをしておきたいから・・・・それに別れの挨拶は前に一度済ませているし」

これを聞いて・・・・華煉、お前はどう感じた?
まだ事情を知らないお前。
だが・・・・すまない。俺は残された数少ない時間をお前の説得に充てるわけにはいかない。
あと20日好きなように生きたい。
決して後悔しないように。



■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


今・・・なんていった?
あと20日??
あと20日後にいったい何があるの?
そして・・・・どうして私はここに封じられたの??

火喰い鳥のナイフの中
華煉はただひたすら待った。
誰かが自分に説明してくれることを信じて。

「・・・・・・・・華煉」

ほぉら。ようやく教えてもらえるね。
私に教えてちょうだい。緋魅

振り向いたその場所には緋色の精霊がただ立っていた。

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