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15
ここは遺跡の中の一本道。
ひたすら続く床と砂地。
遠く彼方まで続く道を見渡せないかと空に舞う。
遺跡の中に広がる偽の空なのに、時には深い雲で覆われたり、霧で隠れたり・・・・
そんな時は心配してついて来る彼も今日はついて来ない。
今日の空は快晴。
地上からもユーリの姿とユーリに近づく者はすぐに識別できる。
久しぶりに1人で気持ちの良い快晴の空を舞う。
道の先は砂地が続いていて、その先は霧がかかって見えない。
この時点で偵察の役目は終わり。
でも、久しぶりの1人の空。久しぶりに広げる翼。
「くすくす」
ユーリはなんだか楽しい気持ちになった。
──────この空の果てまで届くといいな。
いつしかユーリは歌っていた。
美しい自然に感謝する歌
さわやかな空をたたえる歌
優しい彼への愛を紡ぐ歌
そして、自由への賛歌。
気持ちの良い空。広がる翼。
空に解けるように響く声。
気持ちの良い時間。
心まで空に解けるような、めまいすら起こしそうな気持ちのよさ。
あぁ、今・・・・私は自由だ
普段何かに囚われているわけではない。
なのに空でこうやって歌っていると、自分は本当に自由なんだと感じる。
ユーリはいつまでも歌っていた。
そんなユーリの姿を最初は暖かく見守っていたのに・・・
空の上で歌う彼女を見ていたらまるでそのまま空に解けて消えてしまいそうな錯覚に陥る。
手を伸ばしたら、雪のようにはかなくそのまま消えてしまいそうな・・・
自分の腕の中からどこか遠くへと飛び立ってしまいそうな錯覚。
「ユーリ!!!」
彼は思わず大きな声で呼んでしまった。
「ユーリ!!」
その声にはっと気づく。
心配そうな声。自分を見つめるまなざし。
あわてて地上へと降り立つ。
駆け寄ってくる彼を見ながら、少しずつトランス状態から現実へと還る。
空に解けるような感覚が消え、自分の身体を感じ始める。
自由な感覚が少しずつ薄れていく。
それでも、心配そうな彼を見て、──────囚われてもいいと思った。
「ごめんなさい。心配かけちゃって。」
歌に自分をささげているときほど自由な時間はない。
心からそう思う。
でも、・・・・・・・たとえ自由ではなかったとしても・・・ここがユーリの一番居たい場所。
五人目のお題 「自由」 15 エウリーネ=ファラキス
1902
「良い子のみんな、今日も一日いいこにしていたかな?」
・・・・・(手を耳に当てて、返事を待つ)
「そうか。みんな今日も一日よく頑張ったね!
それじゃあ、今日はみんなにとっておきのお友達を紹介するよ!
いでよ!おにいさんの愉快な仲間!(ラッパ ぱぷー)」
(そのころ召喚獣の世界ではこんな会話が交わされていた)
歩行雑草1「モォサァァアアアア(ぉぃ、呼ばれたぞ)」
歩行雑草2「モッサアアァアァァァ(呼ばれたのはお前だろ)」
歩行雑草3「モォッサアアアアァァァアア(いや、呼ばれたのはこいつなんじゃないか?」
歩行雑草4「モッサーアアアアアア(ちょっとまて!あれは俺の召喚じゃねぇ)」
歩行雑草5「モッサァァァァアアアア(じゃあ、誰が呼ばれたんだ?)」
歩行雑草6「モォサアアアアーーー(誰でもいいからとにかく行けよ)」
歩行雑草1~5
「モッサアアアアアアア(誰でもいいならお前が行け!)」
「モッサアアアアアアア(誰でもいいならお前が行け!)」
「モッサアアアアアアア(誰でもいいならお前が行け!)」
「モッサアアアアアアア(誰でもいいならお前が行け!)」
「モッサアアアアアアア(誰でもいいならお前が行け!)」
歩行雑草6「モッサァァアアアァァァ(突然だけど・・・俺・・今度の召喚が終わったら結婚するんだ)」
歩行雑草7「モッサアアアーーーー(お前、何で突然死亡フラグ立ててるんだよ)」
歩行雑草8「モッサアァァァァァァァ(あなた。おなかの子どものためにも早く帰ってきてね)」
歩行雑草7「モッサアアアアーーーー!(お前も、何で突然死亡フラグ立ててるんだよ!)」
歩行雑草8「モッサァア(あ、動いた)」
歩行雑草7「モッサーーーーー(種子が動くのかよ!)」
歩行雑草1「モッサアアアアアアアーーー!?(お前彼らがかわいそうだとおもわないのか!?)」
歩行雑草7「モサ?(俺か?)」
歩行雑草2「モッサアアアーーー!(お前が行け!)」
歩行雑草7「モサァ!?(俺かぁ!?)」
歩行雑草3「モッサアアアアアアアーーー(結婚前のカップルを引き裂くのはよくないな!)」
歩行雑草4「モッサアアアーーー(俺もそれがいいと思うな!)」
歩行雑草1~5「モッサアアアアアアアーーー(ここはやっぱりお前が行け!)」
「あれぇ?なかなか召喚されないな?
こういうときはもう一回ラッパを吹いてみよう!
いでよ!おにいさんの陽気な仲間!(ラッパ ぱっぷー)」
歩行雑草1「モッサァァアア(おい、今度は音色が違うぞ)」
歩行雑草2「モッサモッサアアアアア(さっきの音色ならあいつでほぼ決まりだったのにな)」
歩行雑草7「モォッサーーァァァァァアア(いやぁ、実に惜しいが俺じゃないようだな)」
歩行雑草3「モッサアアーーァァア(惜しむならお前でいいんだぜ)」
歩行雑草4「モッサモッサアアアアーー(そうだな。今度からぱっぷーもこいつの呼出しにしようぜ)」
歩行雑草7「モッサア!(結局俺か!)」
歩行雑草1~6「モッサアアアアア(そうだ。お前行け!)」
歩行雑草9「モッサアアァァァアァアアアァァア(なぁ、いっそこういうのはどうだ?ひそひそひそ)」
歩行雑草1~8「モッサアアアア(いいね!それ!)」
「あれぇ?おかしいな?
いでよ!おにいさんの陽気な仲間!(ラッパ ぽっぴんぽろりん ぷう♪)」
萌えろ!!
歩行雑草を召喚!
歩行雑草1「モッサァァァァァァァッ!!(歩行雑草1!見参!!)」
コルツのSPが60減少!
「やっときた。お兄さん、雑草にまでイジラレ役になったかと思ったよ。よかった。よかった。」
だが、なぜか歩行雑草1はラッパを持っている。
「さすが!お兄さんの愉快な仲間。さぁみんなで楽しく音楽の時間だよ~」
コルツはラッパを吹き鳴らす。
歩行雑草もラッパを吹き鳴らす。すると・・・・
萌えろ!!
歩行雑草を召喚!
歩行雑草2「モッサァァァァァァァッ!!(歩行雑草2!推参!!)」
歩行雑草1のSPが60減少!
「あ・・・あれ?おかしいな。お兄さんは呼んでないぞ。」
なぞか歩行雑草2もラッパを持っている!
萌えろ!!
歩行雑草を召喚!
歩行雑草3「モッサァァァァァァァッ!!(歩行雑草3!華麗に登場!!)」
歩行雑草2のSPが60減少!
萌えろ!!
歩行雑草を召喚!
歩行雑草4「モッサァァァァァァァッ!!(歩行雑草4!待たせたな!!)」
歩行雑草3のSPが60減少!
萌えろ!!
歩行雑草を召喚!
歩行雑草5「モッサァァァァァァァッ!!(歩行雑草5!時代は俺を呼んでるぜ!!)」
歩行雑草4のSPが60減少!
あたり一面に広がる緑
ラッパを持った歩行雑草が歩行雑草を呼び、次々連鎖召喚される歩行雑草
「あれ?あれ?あれ?」
コルツにはもう何がなんだかよくわからない。
歩行雑草1~∞「モッサァァァァァァァッ!!(さぁご命令を!)」
だが、コルツは呆然として、もはや口をぱくぱくさせるのみ・・・
歩行雑草1~∞「モッサァァァァァァァッ!!(用がないなら帰る!)」
一声吼えると歩行雑草はすべてその場から消えた。
・・・・・・・・・歩行雑草からもイジラレるのか・・・
コルツはがっくりと肩を落とした。
四人目のお題 「連鎖」 1902 コルツフット
1783
頭部のアンテナから電波が飛ぶ。
この島の遺跡の地下からでも母船との通信は確保されている。
母船ではこの遺跡の熱量スキャンが行われており、冒険者の移動が常にモニタリングされている。
すでにこの遺跡のいくつかの通路のデータは母船で収集された。
だが、遺跡に元々いる生物のデータは母船にはない。
地上にいた者達にはマーキングできても、元々地下に生息する者達を捕捉することは困難だ。
だからこその潜入探査。
探索型ボディにはこの星での行動に適した生命体であるヒトの形態を採用。
中でもより生命維持能力が高いとされるメス型の形態を選択。
ボディ内部に情報処理機能を搭載。
遺跡での行動に足りるだけの腕力強化チューニング。
外観は地下の行動であることから、この星の太陽光の影響などは一切考慮せず。
完成したのはメタリックな肌を持つ腕力強化型ヒューマノイド
ボディNo.1783 ケイ
母船からの通信で遺跡の構造と人の流れを知る彼女は
人の多く立ち止まる場所、
人の滅多に立ち止まらぬ場所、
それぞれの場所で立ち止まり、現れる生命体の情報を収集する。
人の滅多に立ち止まらぬ場所、そこは危険地帯ともいえる。
彼女のボディの耐久性を遥かに超えるダメージを生む生命体すらいるかもしれない。
だが、所詮彼女は母船の端末。
ボディなどいつでも代えが効く。
もしも彼女が失われたら、母船は新たな端末を作り、遺跡へと送り込むだけ。
ボディNo.1783 ケイ
探査ボディが犠牲になろうとも、メインコンピュータに記録は残る。
記録に残らぬ唯一のもの。
ヒューマノイドであるがゆえに獲得された彼女の人格。
敗北すれば悔しく思い、予想外の強敵との戦いに絶望する。
笑って、怒って、叫んで、泣いて・・・・。
その感情すら母船から見れば、動作を不安定にするバグに過ぎない。
いつしか母船は気づくだろう。
人格を持った彼女が危険な場所をさける計算を始めたことに。
偏ったデータは役に立たない。
いつか母船は彼女を誘導するために計算されつくした偽の地図情報を送信するだろう。
False Island
母船と端末のだましあい。
それすら宇宙船・彗星のメインコンピュータにとっては、ただのメンテナンスに過ぎない。
たとえ危険な場所に立ち止まるように仕向けられても、
彼女のボディを上回る強度の敵に出会わないことを祈ろう。
天文学的な確率の偶然で人格を宿した奇跡のヒューマノイド、
流星の落とし子に幸多からんことを。
三人目のお題 「犠牲」 1783 流星の落とし子
1693
「あなたはどうしてこの島に?」って。
きっと彼はこう答えてくれる。
「ちょっと面白そうだからきてみたのだ!」
「やっぱり楽しいのが一番なのだ!」
彼はいつもわくわく、どきどき。
いつだって目を輝かせてる。
目の前に強い敵が立ちはだかったら?
「それってとってもわくわくなのだ!」
どうして彼はあんなに楽しそう?
どうしてあんなふうに笑っていられる?
彼はいつでもお祭り気分
見るもの、聞くこと、なんでも楽しみ。
母なる大地も彼の味方。
悪戯な風も彼の友
彼はいつでもわくわく、どきどき
不思議な島の
不思議な遺跡
小さな鬼が遊んでいるよ。
貴方もいつか会えるかも。
山吹色の小さな子鬼。
会えたら訊いてみてごらん。
「何がそんなに面白い?」
そしたらきっと答えてくれる。
大きな目をきらきらと輝かせ・・・・・・・・・山吹童子がそこにいる。
二人目のお題 「理由」 1693 山吹童子
1625
槍を一振りし、獣の血を振り払う。
俺は腰を下ろし、槍を右手に下ろすと、ゴーグルの手入れをはじめた。
戦闘が終わったあとのいつもの習慣。
いつごろからこんな風にゴーグルを装備するようになった?
俺がまだいきがった餓鬼で、戦闘の意味も重みもまだわかっていなかった頃、
あの人がゴーグルの手入れだけは怠るなと教えてくれた。
・・・・・・・俺たち餓鬼の相手をするなんて、今思えば大変だったろうぜ。
ゴーグルを磨きながら、俺は苦笑した。
今ならあの言葉の意味がよくわかる。
砂地での乱戦。
手入れを怠ったゴーグル。
煙る視界の中でただひたすら勘だけを頼りに槍を振るう。
それがどんな結果を生むか、今の俺ならわかっている。
俺だっていつまでも餓鬼じゃない。
ちょっとは考えて戦うようにもなった。
あの頃のような無茶な戦い方は控えている。
・・・・・・・今の俺ならきっとあんたにだって負けないさ。
だから・・・・・・・
「ラナーーーン」
「おぉ!今いく!」
仲間に呼ばれたラナンは思考を中断すると槍を持ってその場を立ち去った。
あとに残るは ・・・・・・・・・・血にまみれた花の記憶。
「花激団」
その名を知るものも今は少ない。
すべては混沌とした人の記憶の彼方・・・・・
一人目のお題 「記憶」 1625 ラナンキュラス
Fireworks of the summer night
華煉は目を閉じる。
両手の掌を上に向け、意識を集中する。
右手と左手の上に何かが出来上がる。
それはまったく同じ一対の花火
左手の花火を横に避けて、右手の花火に火をつける。
綺麗な焔が燃える。
だが・・・その色と形は単調。
「これではダメだわ・・・」
焔霊である華煉はその能力で花火を作ることも出来る。
この花火を地霊の届けてくれる珍しい大地の恵みや泉霊の持つ香泉水などと交換している。
今回華煉に交換話を持ちかけてきたのは聖霊。
華煉はその聖霊が花火と交換でくれると言ってくれた、”あれ” がどうしても欲しかった。
だが、”あれ” をもらう以上、極上の花火と交換でなければならない。
あまりにつまらない花火と ”あれ” を交換したら・・・、今後華煉と取引したがる精霊はいなくなるだろう。
”あれ” と交換である以上、それに見合うものを提供しなくては。
華煉の作る花火は作るときに何を思い浮かべるかで色や形が変わる。
普段はマナのことを考えていればよかった。
マナの戦闘を思い出すとハラハラドキドキする。
マナの寝顔を思い浮かべるととても穏やかな気持ちになる。
そんな いろいろな ”思い” を浮かべながら作ると、その ”思い” の変化が炎の強弱や色や形の変化に現れる。
だが、今のマナは吹き矢の特訓中。
パーティの仲間とわきあいあいとしていて、華煉には前ほど時間を割いてくれなくなった。
これは喜ばしい変化ではあるが、寂しい変化でもある。
里を出たときに奇異の目で見られてから、すっかり人嫌いになっていたマナが屈託のない笑顔を見せるようになってきた。
そのことは華煉も喜んでいる。
人と関わる時間が多くなってもマナは一日に一度は華煉に声をかけてくれる。
それでも・・・やはり、寂しい。
そんな思いが花火に現れてしまうのだ。
同時に作る二本の花火。
華煉は一本はその場で火をつけて、花火の出来を確認することにしている。
だが、今作る花火はどれもこれも単調なのだ。
華煉は焦っていた。
だが、焦れば焦るほど、花火は単調になっていく。
そのとき、ふと気がついた。
マナが最近明るくなったのは、この遺跡を探索する冒険者たちの目に偏見がないからだ。
獣人も多い。
あんな招待状だけでこんな僻地の島に集まる冒険者。
ある意味変わった者が集まる島。
この島に集まった冒険者のことを考えながら作ったら、色とりどりの花火が出来るんじゃないだろうか?
華煉は島のあちこちに思念を巡らせはじめた。