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闇と鎖と一つの焔

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  • 05/03/02:28

231

────────来る!?


遺跡に潜むサンドジェリーや巨大ハムスターとの戦闘中
蒼夜はどこかなつかしいような嫌な気配を感じた。


蒼夜よりも遥かに感知能力の高い知視が俺の背後をみて顔色を変えたのがわかる。
だが、蒼夜にわかったのはそこまで。

背後からのしかかってくる重たい気配。
闇が俺を包む。
蒼夜は・・・・・・・戦闘中だと言うのに意識を手放した。






体が重い。
動かない。
腕を動かそうとしても拘束されている。


────貴方が悪いのよ


くすくす笑う声がする。
どこか調子の外れた声。
狂気を含んだその声に不安を感じる。

とにかくここを離れなければ・・・

だが、体はぴくりとも動かない。


────貴方がいけない人だから


女の声
どこかで聞いたような憶えのある声
くすくす笑う・・・その嘲笑が耳に障る。


「何がおかしい」


反応してはいけないと思いつつ、つい言葉が口をついて出た。
一瞬の静寂

だが・・・

くすくすくす

続く嘲笑。
あたりの空気にはますます狂気が満ち溢れてくる。


  動け!!


頭の中で自分の体を叱咤する。
だが、動かない体。

いつしか体の上に何かが乗っているのに気づく。


───────貴方がとても魅力的だから・・・・

───────貴方がとてもつれない人だから・・・・

───────でも・・・これで貴方は・・・・私のもの!!


体の上に乗っている何か・・・いや・・・誰かが・・・女が顔をあげる。
その顔は


「!!!」


悲鳴を飲みこむ。
その顔は・・・






「蒼夜!!」

体を揺さぶられて気づく。
心配そうに覗き込んでくる、知視とミリナ。

「何が・・・起こった・・・」

蒼夜の声はかすれている。
その声を聞いて一段と顔をしかめる知視。
心配そうなミリナ。

「ミリナ・・すぐそばに水場があったよね?水を汲んできて」

小さな妖精が光のあとを残しながら飛んでいく。
二人きりになってから、知視はため息をついた。

「蒼夜」
「なんだ?」
「・・・・・・・・・女性にはもうちょっと優しくするべきだったね」
「どういう意味だ?」

だが、知視はそれ以上答えるつもりがないようだ。
もっとも、蒼夜も手の内を晒す気はなく、深く問われたらはぐらかす気でいたが。


『・・戦闘中にこれでは爆弾を抱えているようなものだ・・・』


知視は深くため息をついた。
蒼夜には相当たちの悪い女性が憑いている。
それも複数。
生霊から死霊まで・・
陣術を統べる蒼夜に単独で強硬に取り付くことの出来る霊はそれほどいないようだが・・・


『女性の恨みを買いすぎなんだよ。』


今回の霊は複合霊だった。
あまりにも恨みを買いすぎたから、複数の霊が共同して蒼夜を取り込もうとした。
もっとも、最後の最後で、蒼夜が顔を覗き込もうとしたときに
蒼夜に認識してもらいたいと思った霊同士で反発しあい、消えてしまった。


『いつか・・・・・・・・また来るな。』


こんな雑魚戦のときならまだいい。
だが、強い敵との戦闘中に蒼夜が取り込まれてしまったら、知視もミリアも共倒れだ。

再来の恐怖
それを知るのは蒼夜当人ではなく知視のみ


『女性の恨みは絶対に買わないようにしよう。』


蒼夜の背中につく巨大なてるてるぼうずと・・・複数の歪んだ女性の霊を視ながら
知視はもう一度深い深いため息をついた。



十人目のお題「再来」  231 鴉丸蒼夜

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