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闇と鎖と一つの焔

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  • 11/24/00:39

284

この島にいる誰もが受け取った招待状
人によって受け取った形が違うこの招待状にスズの場合はおまけがついていた。


招待状を運んできた郵便配達人がこういったときは驚いた。
『実は・・・もう一通 あなたにだけメッセージカードがあるんです』

世界中の人に送られた招待状。スズにだけ渡された一枚のカード

『13日目の戦闘終了後 
 島で一番気持ちよく酒の飲める場所で待っている』

島で一番気持ちよく酒の飲める場所・・・
スズはこのカードを見て島にいく決意をさらに固めた。





13日目の戦闘が終わり・・・スズたちは遺跡外へと出てきた。

もしかしたら遺跡の中かもしれない。
だけど、遺跡の中で会える確率はものすごく低い。
だから・・・・きっと遺跡外だ。

10日目を過ぎる頃から鈴はずっと場所を考えていた。
遺跡外にあるいくつかの酒場、飲み屋
だが、いずれもぴんと来ない。

一体どこへ行けばいいんだろう・・と思いながら遺跡外に出てきた。
残り時間は短いはず。
約束の時間は今日の夜。



久々の遺跡外。
レナーテさんやびっさんと別れて、スズは1人で遺跡外を散策し始めた。
店の立ち並ぶエリアを抜ける。
港からは今日も新たな冒険者達が船を降りてくる。
二つの魔法陣のそばは人でにぎわっている。



こんな場所じゃない。
きっと、こんな場所が見える場所・・・


丘の上には修道院がある。
だが、あそこはいろんな人が出入りする、ある有名な戦闘集団の居留地になっていたはず。

とすれば・・・・

スズは港を囲むもう一方の丘の上へと歩いていった。




暑い夏
草が広がる手付かずの丘
誰も来そうにないこの雑草だらけの丘の上から、港や商店がよく見える。

風が渡る。
少し暑いがさわやかな風が吹く
丘の上には大きな一本の木
葉の生い茂るその木の木陰はとても気持ちが良い。
もうすぐ月も見えるだろう。

木の下のごく一部は下草が掃われている。
誰かがここで少し前に休んでいたのだろうか?


スズはこの場所で待つことにした。





夕日が海に沈む。
綺麗だ・・・・・・
東の空は陰って白い月も見え隠れしはじめている。
蝉の声が響き渡る。
カエルの声が聞こえる。
自然豊かなこの場所





ふと気がつくとそばに待ち人が立っていた。

「やっぱり、あなたね」

遅れてやってきた待ち人は一升瓶をその場にどんと置く。

「もう・・・・あんなカードの伝言だけじゃわかんないよ。今度はもっとわかりやすくしてよね」

ふくれてみせると、相手が苦笑しているのがわかる。

でも、会えたからいいか・・・




月を見ながら、虫の声を肴に酒を呑む。
この島に来てからのこと。
今の仲間のこと。
島に来る前のこと。
この遺跡の話。

最初は尽きることなくいろんなことを話した。

昔のこと
前にあったときのこと
昔の仲間たちの消息

スズは楽しくて歌まで歌った。


だが、そのうち静かに酒を酌み交わし始めた。
二人とも静かに酒を呑む。
美味い酒だった。
気持ちのいい時間だった。



一升瓶が空いた。
2人は黙って月を見た。

どちらからともなく立ち上がり。
2人は静かに別れた。

再会の約束はしない。
それでもこの世に美味い酒がある限り、きっと彼らはもう一度会うだろう。


─────次回も曖昧な伝言に振り回されるのかな。


スズの顔に笑みが浮かぶ。
そんな不思議な関係をスズは楽しんでいた。
きっとあの人も楽しんでいるんだろう。

気持ちの良い真夏の宴会はこうして終わった。


十一人目のお題「伝言」  284 終日・鈴

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