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183
暑い夏の夜
1人でお散歩した。
おなか空いたな・・・・
でも、いつも一緒のみんなをかじっているのも申し訳ないし。
チラッと視線を投げた先にはおいしそうな鳩が一羽
睨まれて動けずにいる鳩の翼をぱくっと口に入れてみる。
──────それ美味しいの?
振り返るとそこにはエミリーと同じぐらいの年のころの男の子が1人。
ただ・・・その子の体は半ば透けており、足も宙に浮いている。
「ん・・・・いまいち」
そう答えた瞬間・・・翼を開放された鳩は一目散に飛んで逃げてしまった。
「あん!せっかくの御飯だったのに。あなたが声をかけるから逃げちゃったわ。」
───────ごめん。ごめん。
男の子は頭をかいて謝った。
申し訳なさそうにしている様子を見て許してあげてもいいかなって思った。
「わたしはエミリー。エミリー・ゴースト。あなたは?」
───────僕は「れい」。れいって呼んで
れいと名乗った男の子はうれしそうににっこり笑った。
2人で森の中を散歩した。
眠りかけている鳥を見つけてかじってみたり、狼に追いかけられてあわてて逃げたり、
どんぐりをみつけて拾ってみたり、野兎をみつけて追いかけてみたり・・・
「あはははは」
───────あはは。ぼくこんなに楽しいの久しぶりだよ。
「あたしも」
2人はすっかり意気投合していた。
夜の森の中で遊ぶ子ども達。
アンデッドと幽霊の不思議な時間。
だけど、楽しい時はいつか終わりを迎える。
れいがぽつりをつぶやいた。
────────僕・・・そろそろ帰らなきゃ。
「え?もう?」
────────うん。もうすぐ陽が昇るから。
「もうちょっと一緒に居ようよ。」
────────ごめん・・・もう身体が透けて・・・
言われて見て気づく。
元々透けていた れいの身体は、より一層薄くなっていた。
消える・・・・・消えてしまう。
「待って。これを持って行って!」
エミリーはあわててある物を手渡した。
それは2人で一緒に拾ったどんぐり。
2人でそれに絵を描いた。
エミリーはどんぐりにリボンの絵を描いたのだ。
れいの手の上におくと、それも一緒に透明になりはじめた。
「よかった。れいだけ消えてこれは残っちゃうんじゃないかと思った。」
────────これ・・・もらっていいの?
「うん。今日の記念に持って帰って」
────────ありがとう。大事にする。僕のもあげたいけど・・・もう・・・・・
朝陽が昇る。
光が闇を駆逐する。
────────また、いつかきっと会える・・・・
その言葉を残して、れいはそのまま消えてしまった。
エミリーは哀しかった。
久しぶりに出来た同世代のお友達。
久しぶりの別れ。
また・・・いつか会えるかしら・・・
エミリーはとぼとぼと帰ってきた。
一晩中遊んで帰ってこなかったエミリーをみんなが待っていてくれた。
あまりにもしょんぼりとしているので、みんなが優しく迎えてくれた。
「おかえり」
梶井君が手を差し伸べてくれる。
エミリーはあまりにもしょんぼりしていたので気づかなかった。
梶井君の腕には昨日までなかったミサンガ。
そこについている古い小さなどんぐり。
消えかかっているけど、そこにうっすらとリボンの絵が残っていることに。
───────また、いつか会えるといいね。
それは暑い真夏の夜がみせた過去と現在の邂逅。
梶井君が小さい頃 れい と呼ばれていたときがあったことを、エミリーが知るのはまた別のお話
九人目のお題「別離」 183 エミリー・ゴースト
1人でお散歩した。
おなか空いたな・・・・
でも、いつも一緒のみんなをかじっているのも申し訳ないし。
チラッと視線を投げた先にはおいしそうな鳩が一羽
睨まれて動けずにいる鳩の翼をぱくっと口に入れてみる。
──────それ美味しいの?
振り返るとそこにはエミリーと同じぐらいの年のころの男の子が1人。
ただ・・・その子の体は半ば透けており、足も宙に浮いている。
「ん・・・・いまいち」
そう答えた瞬間・・・翼を開放された鳩は一目散に飛んで逃げてしまった。
「あん!せっかくの御飯だったのに。あなたが声をかけるから逃げちゃったわ。」
───────ごめん。ごめん。
男の子は頭をかいて謝った。
申し訳なさそうにしている様子を見て許してあげてもいいかなって思った。
「わたしはエミリー。エミリー・ゴースト。あなたは?」
───────僕は「れい」。れいって呼んで
れいと名乗った男の子はうれしそうににっこり笑った。
2人で森の中を散歩した。
眠りかけている鳥を見つけてかじってみたり、狼に追いかけられてあわてて逃げたり、
どんぐりをみつけて拾ってみたり、野兎をみつけて追いかけてみたり・・・
「あはははは」
───────あはは。ぼくこんなに楽しいの久しぶりだよ。
「あたしも」
2人はすっかり意気投合していた。
夜の森の中で遊ぶ子ども達。
アンデッドと幽霊の不思議な時間。
だけど、楽しい時はいつか終わりを迎える。
れいがぽつりをつぶやいた。
────────僕・・・そろそろ帰らなきゃ。
「え?もう?」
────────うん。もうすぐ陽が昇るから。
「もうちょっと一緒に居ようよ。」
────────ごめん・・・もう身体が透けて・・・
言われて見て気づく。
元々透けていた れいの身体は、より一層薄くなっていた。
消える・・・・・消えてしまう。
「待って。これを持って行って!」
エミリーはあわててある物を手渡した。
それは2人で一緒に拾ったどんぐり。
2人でそれに絵を描いた。
エミリーはどんぐりにリボンの絵を描いたのだ。
れいの手の上におくと、それも一緒に透明になりはじめた。
「よかった。れいだけ消えてこれは残っちゃうんじゃないかと思った。」
────────これ・・・もらっていいの?
「うん。今日の記念に持って帰って」
────────ありがとう。大事にする。僕のもあげたいけど・・・もう・・・・・
朝陽が昇る。
光が闇を駆逐する。
────────また、いつかきっと会える・・・・
その言葉を残して、れいはそのまま消えてしまった。
エミリーは哀しかった。
久しぶりに出来た同世代のお友達。
久しぶりの別れ。
また・・・いつか会えるかしら・・・
エミリーはとぼとぼと帰ってきた。
一晩中遊んで帰ってこなかったエミリーをみんなが待っていてくれた。
あまりにもしょんぼりとしているので、みんなが優しく迎えてくれた。
「おかえり」
梶井君が手を差し伸べてくれる。
エミリーはあまりにもしょんぼりしていたので気づかなかった。
梶井君の腕には昨日までなかったミサンガ。
そこについている古い小さなどんぐり。
消えかかっているけど、そこにうっすらとリボンの絵が残っていることに。
───────また、いつか会えるといいね。
それは暑い真夏の夜がみせた過去と現在の邂逅。
梶井君が小さい頃 れい と呼ばれていたときがあったことを、エミリーが知るのはまた別のお話
九人目のお題「別離」 183 エミリー・ゴースト
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