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15thday
遺跡外で料理を済ませ、再び遺跡の中にもぐる。
いよいよ宝玉が全容を見せ始めた。
今まで俺たちがもぐっていた外回りのルートを捨てて、内へ内へと進行する。
久しぶりにこの遺跡に来て最初にマークした魔法陣をくぐり、森を抜けて再び平原へ。
俺は少し早めについたらしい。
平原にて休息を取る。
ほんの短い時間だが空を飛んで森を抜けた俺と違い、皆は森を越えるのに少し時間がかかるだろう。
もっとも羽を持つ龍族の少女はどうやら俺とほぼ同時にこのエリアについたようだが・・・。
気配は感じるが、姿を見ることはできない。
俺は久々にスケッチブックを開くと、頭の中で少女の姿を思い浮かべてさらさらっと描きなぐった。
だが、どうも俺が描くと彼女のふわっとした雰囲気が出ない。
もっとやわらかいかんじで、ふわふわした空気を持っている彼女。
何度か描きなおしたが納得いくものは得られなかった。
俺は思わず絵に×印をつけようかと思ったが、さすがにそれもどうかと思い、とどまった。
この絵を見て、こんな風に苦労したこともあとでいい思い出になるだろうし、この絵を見返したら、彼女のふわっとした空気を再現できなかったことを思いだして、結果的に彼女そのものを思いだすことは可能だろう。
俺は絵を描くことをあきらめてスケッチブックを閉じた。
まだみんなは到着しない。
森を飛んで抜けることがこんなに時間的に有利だとは知らなかった。
いや・・・・むしろ、森を踏破するのがそんなに厳しいとは知らなかったと言うべきか。
俺は久々に遺跡の中で昼寝をすることにした。
気配は遠いが龍族の少女も寝ているらしいことが感じられた。
見渡す限りの平原。
毒蛾や大烏がうろうろしているこの場所で無防備に眠るのは勇気がいる。
あの龍族の少女はかわいらしい見かけによらず豪胆なのだろう。
俺は遺跡内を見渡し、少し屋根の残っている場所を見つけた。
ツタが絡んでおり、かなり古い建物のようだ。
古い建物には地霊や精霊が宿っていることが多い。
悪しき精霊がいたら俺を狙ってくることだろう。
俺は懐から一枚の紙を取り出した。どうやら七夕のときの短冊の余りのようだが、紙には白く光るインクか何かで書かれたらしい複雑な文字が綴られている。
俺には読めないカオスワードなので、俺からみると文様にしかみえないのだが、この光る文字に何かしらの効力があるらしく、こういう場所で眠る前にはこれを燃やすようにと華煉から預かった。
七夕のときにやたら短冊の紙を切っていると思ったら、余った紙はすべて護符にするつもりらしい。
俺は翼から小さな炎を導くと紙を軽く捻り縒って、端から火をつけた。
紙から煙が立ち昇る。
軽く縒られた紙から一筋の煙が。
それとともに・・・・・・なんともいえない清浄な香り。
先ほどまでのよどんだ空気が嘘のようにさわやかに感じる。
どこかで感じた空気。
これは華煉の結界内と同じ空気。
俺はナイフに手を伸ばす。
紅瑪瑙石が熱を持っている。
俺は何気なくナイフを鞘から引き抜いた。
そして目の前に広がるオレンジ。
俺の目の前に広がる炎のような・・・髪。
それと同時に急激な脱力感。
俺はその場に倒れ伏した。
どれぐらいそうしていただろう。
マナの心音と呼吸が安定したのを確認すると、そっとその場にマナの身体を横たえた。
マナの持つ吹き矢を複雑そうな顔で見つめている。
吹き矢にそっと手を伸ばしかけて・・・あきらめるように手を戻した。
視線が泳ぎ、そばに落ちているスケッチブックに気づいて手を伸ばす。
最初のページにはキツネ系の獣人女性の絵が描いてあった。
一ページめくると今度は龍族の少女の絵が描いてある。
もう一枚めくると白紙。
だが、ふと気づいてスケッチブックの最後のページを開く。
最後のページのほうからめくってみるとすでに何枚もの絵が描いてある。
炎のような長い髪。
薄絹を纏う細い身体。
笑ったり、拗ねたり、泣きそうな顔。
何枚も何枚も描きこまれた絵。
顔が紅潮するのがわかる。
スケッチブックをそっと閉じる。
華煉はマナがずっと握っていた
ナイフを鞘へと戻した。
ナイフを鞘に戻したとたんに華煉の身体は揺らぎ、透けるように消えた。
俺は目ざめた。
いつも華煉と会ったあとは、身体に力がみなぎっているのに、今日はけだるい。
心身ともに消耗している。
護符を火にくべた時には絶対にナイフを抜かないようにと華煉に注意された。
思いがけない華煉の顕現
だが、今の俺の力では、俺の意識と引き換えでないと華煉を呼ぶことは出来ないようだ。
俺は護符の燃え残りを処分して、荷物をまとめて屋根の外に出た。
みんなの気配がする。俺は合言葉を胸にベアとトーキチローを探しにいくことにした。
いつか俺が強くなったときに、みんなに華煉をあわせることができるかもしれない・・
俺の思ったことが届いたのか、ナイフは少し熱を帯びた。
マナの吹き矢を処分してしまいたかった。
凍結の吹き矢。
絶対に自分の宿ることの出来ない武器。
だけど、強い武器はマナの身を守るために不可欠だ。
マナはナイフをずっと大事に大事にしてくれている。
何度も合成を繰り返して強くして・・・。
他の剣に持ち替えることなどまったく考えていないように。
それに・・・・・・。
華煉は今日見た数枚の絵を思い出して顔を真っ赤にした。
今はそれだけで十分だ。
いよいよ宝玉が全容を見せ始めた。
今まで俺たちがもぐっていた外回りのルートを捨てて、内へ内へと進行する。
久しぶりにこの遺跡に来て最初にマークした魔法陣をくぐり、森を抜けて再び平原へ。
俺は少し早めについたらしい。
平原にて休息を取る。
ほんの短い時間だが空を飛んで森を抜けた俺と違い、皆は森を越えるのに少し時間がかかるだろう。
もっとも羽を持つ龍族の少女はどうやら俺とほぼ同時にこのエリアについたようだが・・・。
気配は感じるが、姿を見ることはできない。
俺は久々にスケッチブックを開くと、頭の中で少女の姿を思い浮かべてさらさらっと描きなぐった。
だが、どうも俺が描くと彼女のふわっとした雰囲気が出ない。
もっとやわらかいかんじで、ふわふわした空気を持っている彼女。
何度か描きなおしたが納得いくものは得られなかった。
俺は思わず絵に×印をつけようかと思ったが、さすがにそれもどうかと思い、とどまった。
この絵を見て、こんな風に苦労したこともあとでいい思い出になるだろうし、この絵を見返したら、彼女のふわっとした空気を再現できなかったことを思いだして、結果的に彼女そのものを思いだすことは可能だろう。
俺は絵を描くことをあきらめてスケッチブックを閉じた。
◆ ◆ ◆
まだみんなは到着しない。
森を飛んで抜けることがこんなに時間的に有利だとは知らなかった。
いや・・・・むしろ、森を踏破するのがそんなに厳しいとは知らなかったと言うべきか。
俺は久々に遺跡の中で昼寝をすることにした。
気配は遠いが龍族の少女も寝ているらしいことが感じられた。
見渡す限りの平原。
毒蛾や大烏がうろうろしているこの場所で無防備に眠るのは勇気がいる。
あの龍族の少女はかわいらしい見かけによらず豪胆なのだろう。
俺は遺跡内を見渡し、少し屋根の残っている場所を見つけた。
ツタが絡んでおり、かなり古い建物のようだ。
古い建物には地霊や精霊が宿っていることが多い。
悪しき精霊がいたら俺を狙ってくることだろう。
俺は懐から一枚の紙を取り出した。どうやら七夕のときの短冊の余りのようだが、紙には白く光るインクか何かで書かれたらしい複雑な文字が綴られている。
俺には読めないカオスワードなので、俺からみると文様にしかみえないのだが、この光る文字に何かしらの効力があるらしく、こういう場所で眠る前にはこれを燃やすようにと華煉から預かった。
七夕のときにやたら短冊の紙を切っていると思ったら、余った紙はすべて護符にするつもりらしい。
俺は翼から小さな炎を導くと紙を軽く捻り縒って、端から火をつけた。
紙から煙が立ち昇る。
軽く縒られた紙から一筋の煙が。
それとともに・・・・・・なんともいえない清浄な香り。
先ほどまでのよどんだ空気が嘘のようにさわやかに感じる。
どこかで感じた空気。
これは華煉の結界内と同じ空気。
俺はナイフに手を伸ばす。
紅瑪瑙石が熱を持っている。
俺は何気なくナイフを鞘から引き抜いた。
そして目の前に広がるオレンジ。
俺の目の前に広がる炎のような・・・髪。
それと同時に急激な脱力感。
俺はその場に倒れ伏した。
◆ ◆ ◆
マナがナイフを抜くと思わなかった。
華煉の護符。
この護符には聖霊からもらった秘薬で呪言が記載されてあった。
聖霊からは直接液体を撒くように言われていた。
だが華煉は少し応用して、紙にしみこませ、それを火で燃やすようにマナに指示した。
火を介することで、その場所はより一層強く華煉の空間とつながる。
そしてナイフを引き抜くことは、華煉の力を呼ぶこと。
マナの魔力媒体としての力は強く、これだけで華煉はその場に顕現した。
だが・・・・顕現により媒体であるマナの力は急激に消耗する。
たとえ、火喰い鳥の民の肉体であっても長時間耐えることなどできない。
ましてや、今回のように偶発的な顕現では、精神がそれを受け止められるはずがない。
華煉は倒れたマナの身体を優しく腕で包み込む。
マナの髪を優しくなで、マナの胸の刺青にそっと触った。
マナの胸の刺青は華煉との契約の徴。
刺青に手をあて、目を閉じると、マナの消耗した力を補うように華煉の力を注ぎ込む。
華煉の護符。
この護符には聖霊からもらった秘薬で呪言が記載されてあった。
聖霊からは直接液体を撒くように言われていた。
だが華煉は少し応用して、紙にしみこませ、それを火で燃やすようにマナに指示した。
火を介することで、その場所はより一層強く華煉の空間とつながる。
そしてナイフを引き抜くことは、華煉の力を呼ぶこと。
マナの魔力媒体としての力は強く、これだけで華煉はその場に顕現した。
だが・・・・顕現により媒体であるマナの力は急激に消耗する。
たとえ、火喰い鳥の民の肉体であっても長時間耐えることなどできない。
ましてや、今回のように偶発的な顕現では、精神がそれを受け止められるはずがない。
華煉は倒れたマナの身体を優しく腕で包み込む。
マナの髪を優しくなで、マナの胸の刺青にそっと触った。
マナの胸の刺青は華煉との契約の徴。
刺青に手をあて、目を閉じると、マナの消耗した力を補うように華煉の力を注ぎ込む。
どれぐらいそうしていただろう。
マナの心音と呼吸が安定したのを確認すると、そっとその場にマナの身体を横たえた。
マナの持つ吹き矢を複雑そうな顔で見つめている。
吹き矢にそっと手を伸ばしかけて・・・あきらめるように手を戻した。
視線が泳ぎ、そばに落ちているスケッチブックに気づいて手を伸ばす。
最初のページにはキツネ系の獣人女性の絵が描いてあった。
一ページめくると今度は龍族の少女の絵が描いてある。
だが、ふと気づいてスケッチブックの最後のページを開く。
最後のページのほうからめくってみるとすでに何枚もの絵が描いてある。
炎のような長い髪。
薄絹を纏う細い身体。
笑ったり、拗ねたり、泣きそうな顔。
何枚も何枚も描きこまれた絵。
顔が紅潮するのがわかる。
スケッチブックをそっと閉じる。
華煉はマナがずっと握っていた
ナイフを鞘へと戻した。
ナイフを鞘に戻したとたんに華煉の身体は揺らぎ、透けるように消えた。
◆ ◆
暗い空間。
前にもこんなことがあった。
前は蜘蛛のような化け物に食われそうになった。
だが、今回は違う。
確かに暗い。
何も見えない。
だが・・・・・・・これはいつもの華煉の空間だ。
何も見えないのは光源がないからだ。
いつもこの空間を明るく照らすもの。
それは華煉本人の姿に他ならない。
炎を纏うように光り輝く華煉がいてこそ、この空間は光を放つ。
「華煉」
いつもこの場所にいるのに。
俺がこの場所にたどり着けないことはあった。
だが、俺がここに来た時にはいつも華煉はいたのに。
「華煉?」
俺は護符を火にくべた。
あのとき確かに華煉の気配を感じた。
俺がここにくることを華煉も知っていたはずだ。
それなのに・・・・・・・・・。
「華煉・・・」
俺の右手が無意識のうちにナイフを触ろうとしていたらしい。
俺は自分がナイフを持っていないことに気がついた。
暗い闇の中。
確かに華煉の空間なのに。
「どうしたっていうんだ・・・」
俺はここに来る前のことを思い出し始めた。
華煉にもらった護符を火にくべ、そして俺は何気なくナイフを引き抜いた。
あのときまでナイフを持っていたはずだ。
そして、俺の目の前に飛び込んできたあの影。
炎のような長い髪、しなやかな手足と身体を包む薄絹、透けるような白い白い肌。
あれは・・・・
「マナ」
かすかな声とともに世界に光が戻る。
炎のような長い髪と、しなやかな手足、身体を包む薄絹からこぼれる白い白い肌。
間違えることなどない。
あのとき、あの場所に現れたのは・・・・・
「華煉!」
いつも俺のそばに居る守護精霊。
あんな風に現実世界であえるとは思っても見なかった。
光が戻ってきたことで、闇の中でどれほど心細く感じていたかを再認識させられた。
華煉がそこにいることがうれしくて・・・・・・・そっと頬に手を伸ばす。
だが・・・・・・・・俺の手は華煉の身体を通り抜けてしまった。
華煉の体が透けている。
「華煉?」
俺は呼びかける。
少し、華煉の姿がはっきりする。
俺は通り抜けてしまった手を戻して、華煉の頬がある位置で手を止める。
そして自分に出来る唯一のことをする。
ただひたすらに華煉のことを思い、何度も何度も名前を呼びかける。
少しずつ、少しずつはっきりする華煉の身体。
ようやく肌が質感を持ち始めたころ、まだ揺らぐ華煉の右手が俺の胸の刺青にそっと触れる。
光があたりに満ち溢れる。
「華煉」
「マナ」
いつもの華煉がそこにいた。
暗い空間。
前にもこんなことがあった。
前は蜘蛛のような化け物に食われそうになった。
だが、今回は違う。
確かに暗い。
何も見えない。
だが・・・・・・・これはいつもの華煉の空間だ。
何も見えないのは光源がないからだ。
いつもこの空間を明るく照らすもの。
それは華煉本人の姿に他ならない。
炎を纏うように光り輝く華煉がいてこそ、この空間は光を放つ。
「華煉」
いつもこの場所にいるのに。
俺がこの場所にたどり着けないことはあった。
だが、俺がここに来た時にはいつも華煉はいたのに。
「華煉?」
俺は護符を火にくべた。
あのとき確かに華煉の気配を感じた。
俺がここにくることを華煉も知っていたはずだ。
それなのに・・・・・・・・・。
「華煉・・・」
俺の右手が無意識のうちにナイフを触ろうとしていたらしい。
俺は自分がナイフを持っていないことに気がついた。
暗い闇の中。
確かに華煉の空間なのに。
「どうしたっていうんだ・・・」
俺はここに来る前のことを思い出し始めた。
華煉にもらった護符を火にくべ、そして俺は何気なくナイフを引き抜いた。
あのときまでナイフを持っていたはずだ。
そして、俺の目の前に飛び込んできたあの影。
炎のような長い髪、しなやかな手足と身体を包む薄絹、透けるような白い白い肌。
あれは・・・・
「マナ」
かすかな声とともに世界に光が戻る。
炎のような長い髪と、しなやかな手足、身体を包む薄絹からこぼれる白い白い肌。
間違えることなどない。
あのとき、あの場所に現れたのは・・・・・
「華煉!」
いつも俺のそばに居る守護精霊。
あんな風に現実世界であえるとは思っても見なかった。
光が戻ってきたことで、闇の中でどれほど心細く感じていたかを再認識させられた。
華煉がそこにいることがうれしくて・・・・・・・そっと頬に手を伸ばす。
だが・・・・・・・・俺の手は華煉の身体を通り抜けてしまった。
華煉の体が透けている。
「華煉?」
俺は呼びかける。
少し、華煉の姿がはっきりする。
俺は通り抜けてしまった手を戻して、華煉の頬がある位置で手を止める。
そして自分に出来る唯一のことをする。
ただひたすらに華煉のことを思い、何度も何度も名前を呼びかける。
少しずつ、少しずつはっきりする華煉の身体。
ようやく肌が質感を持ち始めたころ、まだ揺らぐ華煉の右手が俺の胸の刺青にそっと触れる。
光があたりに満ち溢れる。
「華煉」
「マナ」
いつもの華煉がそこにいた。
◆ ◆ ◆
俺は目ざめた。
いつも華煉と会ったあとは、身体に力がみなぎっているのに、今日はけだるい。
心身ともに消耗している。
護符を火にくべた時には絶対にナイフを抜かないようにと華煉に注意された。
思いがけない華煉の顕現
だが、今の俺の力では、俺の意識と引き換えでないと華煉を呼ぶことは出来ないようだ。
俺は護符の燃え残りを処分して、荷物をまとめて屋根の外に出た。
みんなの気配がする。俺は合言葉を胸にベアとトーキチローを探しにいくことにした。
いつか俺が強くなったときに、みんなに華煉をあわせることができるかもしれない・・
俺の思ったことが届いたのか、ナイフは少し熱を帯びた。
◆ ◆ ◆
凍結の吹き矢。
絶対に自分の宿ることの出来ない武器。
だけど、強い武器はマナの身を守るために不可欠だ。
マナはナイフをずっと大事に大事にしてくれている。
何度も合成を繰り返して強くして・・・。
他の剣に持ち替えることなどまったく考えていないように。
それに・・・・・・。
華煉は今日見た数枚の絵を思い出して顔を真っ赤にした。
今はそれだけで十分だ。
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