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闇と鎖と一つの焔

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  • 10/18/20:21

41日目(遺跡外)の日記 補完

炎がゆらゆらと揺れている。
宙を舞う炎は6個
闇の中で六芒星を描く
炎が揺らめくその中心で・・・・・・・

一本の剣を奉げ持ち、ただひたすら祈りを奉げる姿
長い髪
緋色の翼
白い衣に炎が橙色の光を落とす

 

湖のほとりの小屋
この場所は特別な場所

華煉はこの地でマナの体を自分の体に再生した。
それから、宝玉探索のために遺跡に入り・・そしてはじめての遺跡の踏破を終えて、この小屋へ帰ってきた。
今は精霊の力を持っていない、火の力が強いだけの、ただの火喰い鳥の民。

だが、華煉は堕精する前に・・・自分に二つだけ普通の火喰い鳥の民と違う能力を残した。
一つはマナの魂を維持する火喰い鳥のナイフの仕掛け。
いつかマナに体を返すか、新しい体を用意するまで・・・マナと二人で過ごせる日が来るまでのマナの仮の居場所。
火喰い鳥のナイフに封印したマナの魂は今のままでは輪廻の輪に戻ることもない。
新しい体に魂を移し、その体が滅びるときまでマナの魂は消えない。
その仕掛けを施した。

もう一つがこの小屋。
この小屋の中でだけ・・・・華煉は精霊の力を取り戻すことが出来る。
あらかじめ用意した護符を燃やし、術式を施すことで、「場」を形成する。
「場」にある時だけは力を取り戻せる。
術式の鍵となるのは護符と・・・火喰い鳥のナイフ。
華煉は自らの力のすべてをマナと共にナイフに封じた。

 

術式が完成する
「場」が完成する
風もないのに髪がゆらめく
ゆらゆらと震える体
やがて・・・華煉の姿は消え・・・・
残ったのは宙に浮かぶ六芒星の炎と・・・誰に支えられるわけでもなく宙に浮いた火喰い鳥のナイフ
ナイフの刃が炎を浮かべ照り返す。
紅瑪瑙石が煌く

そして・・・・彼女は・・・力の主は封じられた紅瑪瑙石の中の空間へと顕現した。



何かを探すように視線が彷徨う。
そして、彼女は探しものを見つける。
何よりも愛おしい彼女の大事な大事な・・・・

「マナ」

にこやかに微笑む華煉の声に・・・・マナはおびえるようにびくっと震えた。
ベッドに腰掛け、うなだれ、顔を伏せたまま・・・・視線を合わせることを拒否するその姿をみて、怯まなかったといえば嘘になる。
それでも・・・今のままではあまりにも辛いから。

「マナ」

名前を呼ぶ。
マナには声が届いている。
華煉は勇気を振り絞って一歩一歩前に進む。
こちらを見ようともしないマナの方へと。

ふと足が止まる。
耳に届いた言葉を頭が理解する前に体が凍ったように動かなくなる。
今・・・・何?私・・・・何を聞いた?
小さな声
ささやかな声
でも、その短い言葉が全身の力を奪う。
最初の言葉は「ク」
その次の言葉は「ル」
最後の言葉は・・・・・「ナ」
聞こえてしまった。
小さな声だったのに。
雷鳴よりも心の中に響く。

「来るな」

ねぇ、マナ・・・・今そういったよね。
ねぇ、どうして。
どうして?



◆               ◆               ◆

 

「来るな」

思わず声がこぼれた。
声がこぼれてから後悔した。
顔をあげることが出来ない。
だけど、足が止まったのはわかった。


声にならない声が聞こえる。


どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?・・・・・・・


あぁ、今、すべてを話してしまえたら・・・そうしたら、華煉、お前どうする?
俺はどれだけ考えても、お前にかける言葉を見つけられなかった。
お前を拒絶する言葉しか見つけられなかった。
来ないでくれ。
何も聞かないでくれ。
俺はもうお前を見ることすら出来ない。
俺は・・・・

 


どれぐらい俺たちはこうしていたんだろう。

 


だけど、いつも・・・・そう、いつも、俺たちの間に出来た壁を打ち崩すのはお前だった、華煉。

 


気配はなかったのに、ふと気づいたらお前は俺のすぐ前に立っていた。
腕がそっと伸びてくる。

パシッ

頬にかかろうとする手を振りはらう。
顔をあげたくなかった。

もう一度腕が伸びてくる。
今度はうなだれる俺の頭の上にそっと手が下りてくる。

「マナ・・・・もう何も言わなくてもいいよ。顔をあげたくないならそのままでいい・・・私の顔を見たくないならそのままでもいい。でもね・・・」

うなだれていた俺の視界の縁にかろうじて見えていた華煉の足が消える。

ふわっ

宙を舞う気配。
舞い降りたのは俺が背を向けていたベッドの上。
背中が温かくなる。

「少しだけ、ほんの少しだけ、こうしててもいいかな?」

おずおずと手が回されて・・・俺の背に華煉が抱きついてきたのがわかった。


あぁ・・・・・こんなことが前にもあった。
「いいよね・・・・甘えても・・・・」
そういわれて、背中が温かくなった・・・・あれはいつのことだった?
木々にろうそくのように焔を灯した・・・
子供達の喜ぶ声。
パーティの会場。
あれは?

ただ、あの時と違うこと。
声は聞こえない。
声を殺しているのがわかる。
だけど、漏れ聞こえてしまう。
すすり泣きの声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降参

俺の負け
そう・・・・俺は絶対に勝てないんだ。勝てないから畏れたんだ。
勝てない以上・・・どれだけ困難でも俺は強くならなければならないから。
卵の殻をまだ破りたくなかった。
もう少し逃げていたかった。
重たい現実から目をそむけて、自分の殻の中に閉じこもって甘えていたかったけど、俺の負け。
華煉はいつだって、俺の中に・・・俺の一番奥にするっと入り込んできてしまうんだ。

弱った俺の姿を見て、華煉は察してしまうかもしれない。
だから、俺は封印する。
華煉は何も知らなくていい。
だから・・・・俺は強くなる。弱い自分と共に重たい真実を封印する。封じてみせる。

息を吸って・・・・口にする言葉は一つしかない。
俺は選んだのだから。

「ごめん。華煉」

上体をひねる。
久しぶりに顔を見た。

そうだった。

「華煉」

いつもそうだった。

どうして俺が名前を呼ぶだけで、そんなにうれしそうな顔をするんだろう。
涙が流れていても、俺が名前を呼ぶだけで、信じられないという顔をして
俺が名前を重ねて呼ぶだけで、にっこりと笑う。
まだ両目からは涙が流れ続けて・・・

「華煉」

手を華煉の頬に伸ばし、指の先でそっと涙をぬぐう。

「おいで、華煉」

「・・・・マナ」

 

◆               ◆               ◆

 

どれぐらい二人そうしていたんだろう。
何度も何度も名前を呼んで
何度も何度も謝って
何度も涙を流した華煉の涙をぬぐって

少し乱れたベッドの上で二人の間に穏やかな時間が流れ始めた頃、華煉はようやく口にした。

「ねぇ、マナ。清蘭様から何か聞いたの?」

この質問を少し前の俺は畏れていた。
馬鹿だったな、俺。
畏れて、畏れて、華煉を避けて、俺は弱くなっていた。
簡単なことだったのに。
答えは決まっている。

「今はいえない。だけどいつか話すよ。」

俺はこういったあとにさらに問い詰められることを畏れていた。
真実を華煉に話したくない。
だけど、華煉に目の前で泣かれたら俺は勝てないから、だから、俺は華煉を避けていた。

本当に俺は馬鹿だった。
俺がこういったあと、華煉がどう答えるのか、今の俺はわかっている。

「うん、じゃあ、待ってる。マナが話してくれるのを待ってる。」

ほら。
そういって華煉はにっこり笑った。
そして、俺は苦笑した。
苦笑しながら、この光景を見ているかもしれない、聖霊に心の中で呼びかけた。


清蘭、あんた、今度華煉にあったら大変だぜ。あんたが華煉に真実を話せるわけがないもんな。


どこか遠くのほうから、わかっておるよ・・・お主らの好きにするといい・・・・そんな声が聞こえた気がした。

 

◆               ◆               ◆

 

「あの男とよく話すのですってね。」

「不満かのぉ?緋魅?」

「えぇ、あの男、未だに信用できません。私の可愛い妹分を・・・華煉を堕精させて・・・ふがいのない男」

「あれはなかなか骨がある男じゃよ。儂の作った体に移っても全く影響されなんだ。ほんに・・・どちらが燦伽の魂なのじゃろうな?」

「華煉に決まっているではないですか。あの男・・・・生まれたときから禍々しい・・・あの男の生まれた年にはあの男以外火喰い鳥の民が孵らなかったというではないですか。あの男は不吉です。イールに決まっています。」

「ほぉ、緋魅・・・おぬしも知らなんだのか?」

「何を・・・ですの?」

「火喰い鳥の里で行われた試しのことよ。あの男が卵の中にいたころから、あれが燦伽かイールの魂を持って生まれてくることはわかっておった。じゃからな。あの男が生まれる時に儂ら聖霊が干渉したのじゃよ。」

「なんですって?」

「火喰い鳥の民は火霊と人間の両方の要素を併せ持って生まれる。じゃが、ここらで、あの燦伽とイールを火喰い鳥の民から切り離そうと言う試みがなされた。
あの二人が鍵となってあの民は生まれた。あの二人が本来あるべき火霊とヒトに戻れば、もう火霊の堕精などという悲劇は起こらなくなるかもしれない。
そこでの・・・一人が火喰い鳥の民にうまれつくということは、もう片方は火霊として生まれてくるはず。火霊にはより強い霊力を授け、ちょっとやそっとのことでは堕精しない強い精霊に・・・そして、火喰い鳥の民の方からは火霊の力を奪い、ただの人として転生させようとしたのじゃ。
じゃがなぁ・・・火霊の力を強めるほうはともかくとして、火喰い鳥の民から火霊の力を奪う術を火霊が行うと、火霊の霊力の欠片がどうしてものこってしまうじゃろ?じゃからな・・・儂ら聖霊族が干渉したんじゃ。
あのマナという男が卵から孵る前に、儂ら聖霊族が卵から奪い取れる限りの火霊の力を奪って、他の卵に火霊力を分配したのじゃよ。」

「そんなこと・・・聞いたことがありません。第一・・・あの男は火喰い鳥の民ではないですか・・」

「そうじゃ・・・儂ら聖霊族が力を尽くしたにも関わらず・・・あの男は火喰い鳥の民として生まれた。儂らは火霊の力を奪う術式が失敗したのかと思ったよ。じゃがな・・・・しばらく様子を見ておったら・・・あの男から奪った火霊の力を分配した卵が一つも孵らなかったことがわかった。
なぜじゃかわかるかの?
他の卵はのぉ・・・あまりにも強い火霊の力を授けられたため、火喰い鳥の民としての姿を保てなくなり、卵から孵ると同時に完全な火霊として転生したのよ。
つまりあのマナと呼ばれる男は・・・・儂らの干渉がなければ、ものすごく強い火霊の力を有した火喰い鳥の民として生まれたはずじゃった。儂らの術式が失敗したわけではない。術式は成功しておった。あの男から火霊の力を奪えるだけ奪っておった。それでもあの男は奪い取りきれないぐらい強い強い火霊の力を有しておったのじゃ。じゃからの・・・・あの男が燦伽なのではないか?と皆が思うた。」

「そんな!それでは華煉は?
いえ・・・・待ってください、清蘭様。火霊の力を奪えるだけ奪った、といいましたね・・・・まさか・・・・」

「ほう。気づきおったか。そうよ。あの男は結果的に火喰い鳥の民に生まれたものの、霊力は最低レベル。あの男の肉体と精神・・・両方を手に入れたとしても大きな術式の生贄にするには弱い。つまりの・・・・あの男の死体など昇華する必要もない。そのまま朽ち果てさせても何の問題もなかったのよ。」

「莫迦な!それなら華煉はあんな風にあの男の体を乗っ取って堕精する必要などなかった!ただ、あの男を殺し、そのままその魂を輪廻の輪に戻し、華煉は火霊として残ればよかったのではないですか!」

「そうよ。儂は華煉にあの男を殺すしかないと思い込ませ、華煉があの男を殺したあと、・・・昇華を始める前に干渉して華煉を捕らえるつもりじゃった。
普通の守護精霊は相手を殺して昇華を始める前に守護契約を破った衝撃で一時的に意識を失いかける。その一瞬を捉えて捕捉するつもりじゃったのに・・・あの娘は火喰い鳥のナイフを使った術式を施しおった。あのような術式を施せば殺すことも守護の一環、契約は破られない。衝撃も受けない。儂が干渉するよりも早く昇華と惰性と術式を完成させおったわ。」

「なぜ真実を話さなかったのですか!あの男が金を奪われたところで、世界に影響するような災いは起きないと知っていたら、華煉はあの男を殺すことなどなかった。そうすれば」

「そうすれば、華煉はあの男への愛に狂って放っておいても堕精した。霊力の少ないあの男はともかく、堕精した華煉は危険すぎる。華煉がまだ火霊であるうちにあの男から引き離し、火霊のまま転生させるか、火喰い鳥の里で堕精させる必要があった。だから、華煉にあの男を殺させ、引き離そうとしたのに・・・・。

結果的には華煉は通常とあまりにも違う惰性をした。
あの男の体に受肉し堕精することで、堕精した華煉もそれほど危険な存在ではなくなった。
最悪の事態は回避できたといえるじゃろうよ。
だが、あの術式のために、あの男は転生出来なかった。
今のままでは一つの体に二つの魂・・・どちらかは永遠に転生できない。」

「それをあの男に話したのですか?」

「どちらかが転生できないことはあの男が魂だけになった時に話した。
あの男はあっさりと自分が永遠に転生しないことを選んだよ。華煉の幸せを願って、ずっとたった一人紅瑪瑙石の中で彷徨うことを選んだ。
じゃからな、儂も降参したよ。
あの男に儂の知るすべてを話した。
あの男はショックを受けておったようじゃの・・・・自分さえ火喰い鳥の里に戻っていればこんなことにはならなかっただろうこと、里から遠いこの島で堕精しかけなければ華煉にあの男を殺させる必要はなかったこと、こんな風に片方が転生できないような異常事態に陥らなくても済んだかも知れなかったこと、それらすべてを知って、里に帰らなかった自分を責めておったようじゃな。
華煉に何を話したら良いのかわからず、ただひたすら殻に閉じこもっていたようじゃ・・・つい先ほどまでな」

「清蘭様・・・・・華煉はどうなるのですか?常に対となって転生した魂が転生しなくなったら・・・華煉の魂は?」

「ごく普通に転生するとは思うが、最悪の場合、混沌に沈み二度と転生しないのかもしれない・・・」

永遠に転生を許されず石の中に囚われたまま彷徨い続ける魂。
転生しようとしてずっと転生しない魂。

どちらがより不幸?


「だが・・・少なくともイールと燦伽の二つの魂が対となって転生することはこれでなくなるじゃろうて・・・・」


何度も何度も繰り返された堕精の連鎖はこれで終わるかもしれない。
火喰い鳥の民はやがて生まれなくなるかもしれない。
だが・・・・


「あの二人の代になって、あの二つの魂は転換期を迎えた。この先のことなど誰にもわからぬよ。」

 

◆               ◆               ◆

 

「もう行くのか?」

「うん・・・・次はね、とても面倒な相手と一人で戦うかもしれないの。・・・マナ」

「わかっている。華煉。ずっと見てる。俺はずっとここにいる、無茶なことはするな。ゆっくりでいいから。」

そう・・・俺はずっとここにいる。もう覚悟は出来ている。

華煉、世界を知れ。
お前はきっとこれからも俺を取り戻すことだけを願って孤独な道をいく。
だけど、いつかお前を転生させるから。
いつか、俺を忘れて新しい生を生きる時が来る。
俺たち二人の呪縛はここで断ち消える。俺がここに残るから。

「マナ・・・いつか絶対にマナを取り戻すから。私は・・・・マナといっしょに肩を並べて世界を旅したい。」

あぁ、その夢は永遠の夢だ。
叶わないから輝き続ける夢。
だが、なんて甘美な夢なんだろう・・・・

「華煉、俺、まだ大事なことを言ってなかった。」

華煉、その夢を追って・・・いつか倒れても俺のことは気にするな。
俺は未来永劫この石の中に封じられたとしても、お前が幸せならそれでいい。俺は・・・・

「二度は言わない。俺は世界中の誰よりもお前を愛してる。だから絶対に無理するな、華煉。」


さぁ、俺はすべてのカードを出し切った。
華煉、驚いた顔をしているお前・・・・これからどうする?

でも、お前が何をしても、俺はきっと勝てないんだろうな。

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