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闇と鎖と一つの焔

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  • 11/22/17:15

50th day

魔法陣に足を踏み入れる。

この魔法陣に来るのは久しぶり。

ミーティアさんが夢幻戦のあとに独眼竜につかまってしまったらしい。

先に行ってと言われて、とりあえず遺跡内で待つことに。

マナに憶えるように言われたストームブリンガーという技は練習試合でもそれなりに使えたみたい。

今回の遺跡内は少し長くなりそう。

ミーティアさんを待つと食料が持つか心配だけど・・・・これだけ買ってあれば大丈夫よね。

一人で移動をはじめて・・・声がかかる。

「華煉、遺跡外で何を買ってきたんだ?好きなものを買って来いっていったよな」

「マナ!起きたの!」

「あぁ、さっき起きた。この朝帰り娘!あとで何があったのかちゃんと話してもらうからな!!」

マナ・・・・本気で怒ってる。

すごく心配かけさせちゃったんだ・・・

空を飛んでいてもなんだか落ち着かなくて・・・・私は砂地に舞い降りるととぼとぼと歩き始めた。



◆            ◆            ◆            ◆



「ものすごくしょげかえっておるの!翼に力がなく、とぼとぼ歩いておるではないか。」

「・・・・そんなに気にするなら朝帰りなんかしなければいいんだ、まったく・・・」

俺はすこぶる不機嫌だった。
ただでさえ複雑な術のあとで疲れているのに、心配で寝れなかったから。
起きたら、華煉はもう遺跡内で移動をはじめているし。
碌に話もできていない。

「そんなに気になるのなら私が教えてやろうか?」

高慢な声と共に舞い降りる焔。
焔はゆらゆらとゆれ・・・・人の形を取る。
長い髪
真っ直ぐで癖のない髪。きつい目。俺を睨む。

「緋魅さん?」

「あの子が昨日の夜何をしていたのか、誰といたのか気になって仕方がないんだろう?」

「・・・・・・・気にならない方がおかしい。」

俺は大人気ないと思いつつ、不機嫌さを隠すことが出来なかった。
里を出てから、ずっと一緒で離れたことなどなかったのに。
いつも俺のそばにいた華煉が、俺のそばを離れ・・・・朝帰りしやがった。
夜遊びするにもほどがある。
ましてや、こんな危険な島で。
遺跡外はセーフティゾーン、剣を持って出かけたとはいえ、心配じゃないなんてありえない。

「信用していないのか?あの娘を。他の男と一緒にいたのがそんなに気になるか?ん?」

「!」

帰りが遅いから心配してはいたが、せいぜい迷子になった程度にしか考えてなくて、
「他の男と一緒にいる」
なんてことは全く考えても見なかった。
いや、そんな・・・・華煉にかぎって、まさか・・・・

というか、華煉の体って女体化しているけど、元は俺の体で・・・俺の体で・・・朝帰り?

「ふん。相変わらず器の小さい男だこと。何を考えているのか容易に想像できるわね。」

頭が真っ白になって、きっと俺はボーっとしていたんだと思う・・・・
緋魅さんのこの台詞を聞いて、ふと意識が戻ると心配そうな顔をした清蘭が俺の両目の前で手を振ってた。

「大丈夫かの?ちゃんと自我は戻っておるか?」

「あ・・・・いや・・・なんでもない。すまん。大丈夫。俺は俺だから。」

よくよく考えれば、緋魅さんがついていて、華煉がヒトの男に何かされるはずがない。
それを許すような精霊じゃない、緋魅さんは。

「清蘭様、私は戻ります。この島に残っている結界はきつ過ぎます。」

「うむ。辛かったじゃろ。ほれ。これを持っていけ。」

清蘭は緋魅さんに何か白くてきらきら光るものを投げた。
どこから取り出したのか、綺麗な白い丸い玉。

「礼じゃよ。とっとけ。」

「清蘭様、こんなもの頂かなくても、私はいつでも華煉のためにここに参りますのに。」

「華煉が呼んでおらぬのに、この地に留まるのはきつかったじゃろ?結界から出たらそれがないと動けんぞぃ。」

「・・・・・そうでしたね。今回はありがたく頂戴いたします。」

そういうと緋魅さんは俺の目の前から姿を消した。
清蘭と二人きりになって・・・少しほっとした。
居る時は意識していなかったが、どうやら俺は緋魅さんが苦手のようで、一緒に居ると息が詰まる。
綺麗なんだけど、俺に対する言葉に棘がある・・・。
華煉を溺愛しているから仕方ないのだろうとは思うけど。

思わずため息一つ。

そして、もう一度緋魅さんの言ったことを思いだして、急に不安になる。

男と一緒にいた?
一体誰だ?

だが、それは華煉に聞かないと・・・華煉以外の人から聞いていい話でもない。
だから、俺は別のことを清蘭に聞いた。

「この島の結界ってなんだ?」

「うむ。華煉がのぉ・・・前に張ったのよ。儂と緋魅をこの島から追い出すために、の。」

「・・・・・・あんた達、何をやったんだ?」

「たいしたことではない。お主を拉致しただけじゃよ。」

そういうと清蘭はにやりと笑った。
たいしたことではない・・・って・・・

「俺を拉致って・・・そりゃ華煉の逆鱗に触れるだろう?なんで・・」

「無論、おぬしを火喰い鳥の里に返すためよ。華煉が堕精する前にのぉ。
お主憶えておらぬのか?儂が丁寧に結界をほどいている隙をついて、お主が華煉を呼んだのに。」

「俺が?」

「おうよ。お主があの時「華煉」の名を呼ばねば、華煉は儂の精神結界の中で指を銜えてお主が連れて行かれるのを見ておるしかなかった。
お主が名を呼んだから、儂の結界は引き裂かれ、華煉の結界に弾き飛ばされ・・・
まったく、散々な日じゃった。お主を連れて帰るのを儂と緋魅はしくじって、しばらくはこの島にすら入れなんだ。」

「いつのことだ?」

「ふぅむ・・・・20日ほど前のことじゃの。」

「俺が斬られる少し前だな。」

「そういうことになるのぉ。
おぉ、そうじゃ。あの日、この島の時が巻き戻りおったよ。そうか、それでお主憶えておらんのじゃな。」

そういえばそうじゃった・・・・といいながら清蘭は何やら納得した様子だが、俺には全く理解できない。
時の巻き戻り?
いったい・・・・

「ふむ。思い出してみるかの?」

そういうと清蘭が俺の額の刺青に手を触れる。
何かが・・・・俺の頭の中でぐるぐる回る。
遺跡外、買い物、氷彌さんに会い・・・・そうして俺は拉致され、緋魅さんと清蘭が何やら結界をほどこうとして、
そして俺は夢を見ていた。
その夢の中で俺は眞那と呼ばれて・・・・・・・これは、俺はあのとき俺の少し前の生を思い出していたのか。
カルラレナータ・・・カレンの名を呼ぼうとして清蘭に止められる。
俺はあの時華煉を呼ぼうとしていなかった。
俺は昔を思い出して・・・・そして、夢見心地だった俺の耳に緋魅さんの声が届く。
華煉の泣く声。
あぁ、そうだ・・・・・俺は思いだして、華煉の名を呼んで・・・
泣き出した華煉に守護誓約を破棄しないと約束して・・・・

「思い出したかの?」

「俺は・・・・・」

「時の巻き戻りは強烈だったからのぉ。この島にいたもの全員が巻き込まれおったわ。」

「・・・・・・・」

「少し休め。華煉の話はあとで聞くと良い。忘れていた記憶を無理やり穿り返したからな。おぬしは休まねばならん。」

「清蘭・・・」

清蘭がもう一度俺の額の刺青に触る。
そして・・・・俺は意識を手放した・・・・

「もうそろそろ見てきた過去を聞きたいが・・・・華煉の朝帰り理由を聞くまでは待ってやるとするかの」



◆            ◆            ◆            ◆



大地を移動する・・・
暑い砂地の上・・・・
少し疲れた。

そして、歩きつかれた私の目の前に立つのは・・・

「また・・・」

げっそりした声が出る。練習試合をしようとベアさんが目の前に立ち、そしてその先には

「また・・・エゾリス・・・」

私はげっそりしながらも剣を構えた。

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