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闇と鎖と一つの焔

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  • 10/18/20:22

57th day

シクさんと遺跡内で組んで戦うのははじめてだった。

後ろから矢が飛んでくる・・・ベアさんと似た戦い方。

だけど、この矢は・・・・

銃と違って弓につがえる動作をしているはずなのに、それとは思えないほどの連射。

それに・・・つがえた矢が飛来するまでに分かれたように見えたのは私の目の錯覚ではないわよね。

特殊な矢を使った追加攻撃。

こんな技もあるのね。

ベアさんは盾弓を持ったまま呆然としてた。

通常戦もお互いに回復技の練習をしながら戦ったから、かすり傷ぐらいで終わった。

最近一人で戦うことが多かったから、二人で戦う安定感を久々に思い出した。

シクさんは「頑張って守らないとマナに怒られそうだ」って言ってた。

私の方こそ、後衛のシクさんを守れなかったら前衛失格だってマナに怒られたかもしれないけどね。

ねぇ、マナ・・・・怒っていいよ。

私、シクさんと二人で一日一緒だったよ。

蒼夜さんともずっと連絡取り合ってる。

今日もベアさんとスチールさんと一緒だよ。

怒っていいから・・・・・目を醒ましてよ。怒鳴ってもいいから声を聞かせて・・・・。

◆             ◆             ◆             ◆


「怒ってもいいよ」

ふくれっつらをしてカレンが俺の上着のすそを引っ張った。

「怒れないよ。」

そんな我が侭も本当に愛しいから。
俺は笑いながらカレンの頭をぐりぐりして、ついでに髪型をぐちゃぐちゃにしてやる。

「眞那!それやめて!もう・・・髪がぐちゃぐちゃになるでしょ!」
「まぁいいだろ?実際に髪をぐちゃぐちゃにしているわけじゃないし。この空間にいる間だけなんだからさ。」
「それでも嫌なの!眞那のいじわる!」

ここは俺が生み出した擬似空間。
焔霊の俺はカレンの世界に顕現できない。
だけど、カレンが眠るとその魂だけは一時的に俺の空間にやってくる。
何もない殺風景なやわらかいオレンジ色の世界。
ここにいるときだけ、俺はカレンの魂に触れる。カレンも俺に触れられる。
魂の形はあいまいだけど、二人ともなんとなくこの空間にいるときだけはヒトの形をとっている。
カレンの髪をくしゃくしゃにして、そしてそっと額に触れる。
刺青・・・・
両腕と額とそしてカレンの左の乳房に書き込まれた刺青
この胸の刺青は俺とカレンの結びつきの証。俺との守護契約の印。
腕の二つの刺青はカレンが二つの技で身を守れる戦士になった証。
だけど、額の刺青は俺よりも上位の存在がカレンを守る証。
俺が力を失ったときの保険。
俺はいつも複雑な思いで額の刺青を見つめる。
俺よりも強い力を持つ者が、この娘は・・・カレンはお前だけの者ではないと主張しているようで・・・・。

「眞那?どうしたの?」

カレンに問われてはっと気づく。
刺青に気を取られて少し呆けてしまったようだ。

「いや、すまん、なんでもない。」
「眞那・・・すごく寂しそうだった。私がここにいるのに遠くを見てるみたいで・・・」

そういってカレンがしがみついてくる。

「眞那・・・・一緒にいたいよ。本当に・・・・本当に・・・契約解除するしかないの?」

一言、一言が胸にしみる。

「カレン、ほんの少しの間だから。そうしないと俺はお前のそばにいれなくなる。」
「眞那・・・離れたくない。・・・ずっと眞那と一緒にいたいだけなのに、契約やっぱり解除しないとダメなの?」


何度も聞かれた質問。何度も聞いた我が侭。

イッショニ・・・イタイ

その言葉に怒ることなんて出来ない。


いつからだろう。
この腕の中にいる涙を目にいっぱい浮かべた存在がとてつもなく大事になってしまったのは。

最初は自分の力を高めたいだけだった。
女性の守護精霊になるつもりなどなかった。
女性の火喰い鳥の民は成人しても里の中で子供を生んで育てるだけの一生。
男性の守護精霊になる方が婚約した女性が成長するまで世界中を旅することが出来る。
守護精霊になるなら絶対に男性の火喰い鳥の民と契約しようと決めていた。
そう思う仲間は多くて、女性の火喰い鳥の民の守護契約はいつも難航した。
俺だって、カレンじゃなければ絶対に嫌だった。
カレンにも婚約者がいた。カレンがちょうど卵から孵った頃に成人した若い火喰い鳥の民。
だが、彼は不幸にも命を落とした。
婚約者のいないカレンは旅をすることを許された。
世界を旅する女性。
非力な女性を守ることでどれほどの経験が積めるだろう。
しかも婚約者がいないなら、里を出ても戻る必要がない。
ずっと旅を続けられる。
こんな好条件の女性なら・・・・
そんな裏情報を知って、俺はカレンの焔の成人儀礼に参加した。
裏情報がどこまで巡ったのかわからないが、そんなに出回らなかったのだろう。
カレンの成人儀礼に参加した焔霊の数は女性の成人儀礼の平均的な参加焔霊数より少し少なかった。
同じ日に別の男性二人が成人儀礼を行ったからそちらに回った者も多かった。

そして、俺が選ばれた。
カレンは俺との契約の証を胸に刻み込むと、そのまますぐに旅に出た。
俺は仲間の焔霊たちに事前情報をどこから入手していたんだと問い詰められたものだった。

俺とカレンの旅はずっと続くはずだった。
俺が・・・・・・カレンに特別な感情を抱くまでは・・・・。

俺に警告を発したのは旧知の聖霊だった。
言われて俺も気がついたが、もう遅かった。
俺の魂は少しずつ物質化している。受肉している。
この空間でも不定形をとるのが難しくなっている。
ヒトの器に俺は縛られてしまう。

そうなったら、カレンはどうなる?
俺という守護精霊をなくしたカレンはどうなってしまう?

まだ、間に合うかもしれない。
火喰い鳥の里に戻る。
俺とカレンの守護契約を解除して、俺は完全に受肉する前に魂を燃やして転生する。
カレンは新たな契約を結べばいい。
俺はどうなってもいい。
カレンを守りたい。

俺はカレンに嘘をついた。
カレンのためだといったら、カレンは絶対にいうことを聞いてくれないだろう。
だから、・・・・俺の魂が受肉して、ヒトとなったら、俺は焔霊達に処分されると伝えた。
案の定、カレンは俺を処分などさせないと言ってくれた。

「眞那を失いたくない。眞那、どうすればいいの。」

目に涙をいっぱいためたカレンを見て胸が痛まなかったといったら嘘になる。
俺は受肉を避けるには守護契約を一時的に解除して、俺が精霊界に戻るしかないといった。

「力をもう一度貯めてくる。それまで安全な火喰い鳥の里で待っていてくれないか?
俺がいない間に浮気するなよ。守護契約が解除されたからって他の奴を守護精霊に選んだりするな。
俺が戻るまで・・・・待てるか?カレン」

カレンは俺と一緒にいるために里に戻るといってくれた。
少しの罪悪感。
カレン・・・・ごめんな。
俺はそばにいられなくなるけど、お前を危険な目にあわせるのだけは嫌なんだ。

そして・・・・里まであと少し。
明日の夕方には里に入れるだろう。
このあたりでも焔霊の気配が強い。本当なら、俺は旧知の焔霊に声をかけたり出来るほどの距離だ。
今日の昼ごろから近くに焔霊の気配を感じる。きっと誰かが俺に語りかけている。
だけど、受肉しかけている俺にはもうその声は聞こえない。
あと一日。たったの一日だ。

「カレン、そろそろ体に戻るんだ。もうすぐ朝だ。目覚めて里に戻れ。」

そういってもう一度ぎゅっと抱きしめた。

「しばらく会えなくなるけど、待っていてくれ。俺を。俺だけを待っていると誓ってくれ。」

しばらくじゃない・・・本当は二度と会えない。だけど、お前を守る方法を他に思いつかない。
だから、俺は嘘をつく。
最後まで嘘をつきとおそう。

カレンが俺にしがみつく。

「待ってる。ずっと待ってる。眞那以外の精霊を選べない。選ばない。だから、必ず帰ってきて。」

必ず戻るとはいえない。でも

「必ず・・・な。、カレン」

必ず、俺はお前を守るからな、カレン。
わざとふせた思い。
お前は知らなくていいんだ。

「眞那、大好き」

そういい残してカレンは体に戻っていった。
もうほとんど受肉している俺は泣いた。
焔霊なのに、涙など出ないはずなのに、心で泣いた。

「カレン」



俺は本当にカレンとの契約を解除して、カレンを自由にするはずだった。
なのに、間に合わなかった。
火喰い鳥の里
焔霊の里の結界にカレンが足を踏み入れた瞬間、俺の魂に衝撃が走った。
純粋な焔霊の集まる里の結界は、中途半端な焔霊の俺を焔霊として受け入れようとしなかった。
結界に弾き飛ばされる!
だが、俺の魂は契約でカレンに縛られている。
押しつぶされそうになった俺の魂は、里に入るたった一つ残された手段を無意識に選んだ。

そして・・・・・カレンが里の結界を越えた瞬間。
安全な火喰い鳥の里で俺は堕精した。

「眞那?眞那!嫌!眞那を殺さないで!処分なんてしないで!」

焔霊たちが寄ってくるのを見てカレンが俺をかばう。
俺の嘘を信じているんだね。俺が処分されると思って懸命に俺を守ろうとして剣を掲げるカレン。
カレン、いいんだ。
俺は処分なんてされない。
あれは俺の嘘だったんだ。
でも、俺は自分への誓いを守ったよ。
カレン、この里ならお前は無事でいられる。
俺は転生できなかったけど・・・・・・お前が無事ならもう焔霊に戻れなくても構わない。

受肉した俺は、はじめて意識を失うということを知った。
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