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701
なんじゃ?変な顔をしおって。
この程度のことで震えておるのか?
こんな木っ端モンスターに囲まれたぐらいで何を震えておるのじゃ?
度胸がないのぉ、お主。
この程度のこと、もっと楽観視出来んのか?
仕方がないのぉ
儂が一つ昔がたりをしてやろう。
周りを一角獣やスケルトンが取り囲み、今にも飛び掛ってきそうだというのに、
玖狼は胡坐をかいて、杯に酒を注ぎ、ぐびぐび飲みながら昔話を始めた。
昔のぉ・・・まだ儂が若かったときのことよ。
同じように周りを敵に囲まれたことがあってのぉ。
そのころの儂はまだ思うように人型をとることができんでな。
巨大狼じゃっちゅうて、棒を持った人に囲まれたんよ。
それもまぁ・・仕方のないことじゃて・・。
あのころ儂の仲間の一頭が人を懲らしめんといかんっちゅうてな、人里をおそっとったんよ。
儂ゃぁ、人を襲うのには反対じゃった。
確かに人の輩(やから)が森で傍若無人に振舞う様には儂も眉をひそめとった。
けどなぁ、人にも人の都合っちゅうもんがありそうじゃった。
年貢じゃとかいうて、せっかく作った米も取り上げられてのぉ・・・
ひどい世の中じゃった。
じゃけん・・・しゃあないと思うとった。
じゃが、儂はどうも変わりもんじゃったらしくてのぉ。
仲間は少しずつ人の輩(やから)を敵視していったんよ。
仲間が変わっていくのは寂しかったのぉ
あるときのぉ・・・年端もいかぬ赤ん坊っちゃあ、攫ってきおって・・・・
哀しむ母親の目の前で食い殺しよった。
ほんまに誇り高い狼の一族のもんが、弱い赤ん坊をかみ殺すなんぞ・・・・末代までの恥じゃ。
それまでは狼じゃあ言うたかて、それほど嫌われておらんじゃったよ。
せやけど、そっからあとはあかんかった。
人の輩(やから)と儂等狼の族(うから)は互いに憎しみあうようになったんじゃ。
儂が人の輩に取り囲まれたんは、そういう時代よ。
人々はおっそろしい形相で儂を睨んじょった。
ありゃあ、ニ、三十人はおったかのぉ。
あのときは儂も恐ろしかったよ。
何よりも儂が恐れたんはのぉ・・・・・人を殺すことよ。
なんのかんの言うても狼は一頭一頭が自分の王よ。
自分がよければそれでええっちゅうところがある。
せやけど、人の輩は違う。
なんでかしらんけど、奴らは仲間をものすごぅ大事にしよる。
あのとき儂が誰か1人でも殺しよったら、人の輩は狼を根絶やしにすることを辞さなかったやろ。
だからこそ、儂ゃあ、誰も殺しちゃあならんと思うた。
儂もあの頃は若かったからのぉ。
血の匂いを嗅いだら我慢できんやろうとおもうた。
せやからな、二、三十人に囲まれて、そこから儂は誰一人怪我させず、自分も血を流さずに脱出せにゃあならんかった。
ありゃあ、さすがにきつかったのぅ。
今でもどうやって逃げたのか、よぉ憶えてない。
何?かっこわるいじゃと?
お主、この程度のモンスターに囲まれてぶるぶる震えとるのに、よぉ言うのぉ。
なんじゃと?武者震いじゃと。
あっはっはっはっは。
お主、なかなか言いおるのぉ。
じゃがな、あのとき人と全面的に対決せんでよかったと儂は今でも思っちょるよ。
・・・なによりこんな風に昔を思い出したときに酒がまずくなるじゃろうが。
後悔はしたらあかん。
いつでも美味い酒が呑めるように生きるのが儂の生き方じゃよ。
何?
何でそんな風に人に囲まれたじゃと?
訊きたいか?
ふ~む。
まぁよかろうよ。
あのときはな、儂に縁(ゆかり)の狼にはじめての仔がおったのよ。
人の輩がな、その巣に気づきおった。
せやからな、儂が囮になったのよ。
あぁ、狼は一頭一頭が自分の王で他のもんは知らんと確かに言うたな。
だがな、儂は玖狼の神よ。
儂には儂に繋がる族を守る義務がある。
そんじょそこらの狼と一緒にしてもらっては困るのぉ
さて、酒が尽きた。そろそろ本気で行くかいの。
この昔語りの間・・・・玖狼はずっと右手に酒瓶、左手に杯を持ち、あぐらをかいたままで・・
時折右手の人差し指から出した鬼火でモンスターたちを牽制していた。
囲まれても平然として楽観していたのは、経験に裏打ちされた実力が伴うからだ。
昔語りを終え、すっくと立ち上がった玖狼が周りを囲むモンスターをなぎ倒すのにかかった時間はほんの一瞬のことだった。
倒してもいいなら、この十倍の敵に囲まれても儂ぁなんとでもなるでよ。
相手を倒さずに、自分も傷つかずに引く。
そのほうが何倍も難しいことを儂は知っとるからな。
そういい残すと、誇り高い狼神は遺跡の中へと消えていった。
十八人目のお題「楽観」 701 玖狼
この程度のことで震えておるのか?
こんな木っ端モンスターに囲まれたぐらいで何を震えておるのじゃ?
度胸がないのぉ、お主。
この程度のこと、もっと楽観視出来んのか?
仕方がないのぉ
儂が一つ昔がたりをしてやろう。
周りを一角獣やスケルトンが取り囲み、今にも飛び掛ってきそうだというのに、
玖狼は胡坐をかいて、杯に酒を注ぎ、ぐびぐび飲みながら昔話を始めた。
昔のぉ・・・まだ儂が若かったときのことよ。
同じように周りを敵に囲まれたことがあってのぉ。
そのころの儂はまだ思うように人型をとることができんでな。
巨大狼じゃっちゅうて、棒を持った人に囲まれたんよ。
それもまぁ・・仕方のないことじゃて・・。
あのころ儂の仲間の一頭が人を懲らしめんといかんっちゅうてな、人里をおそっとったんよ。
儂ゃぁ、人を襲うのには反対じゃった。
確かに人の輩(やから)が森で傍若無人に振舞う様には儂も眉をひそめとった。
けどなぁ、人にも人の都合っちゅうもんがありそうじゃった。
年貢じゃとかいうて、せっかく作った米も取り上げられてのぉ・・・
ひどい世の中じゃった。
じゃけん・・・しゃあないと思うとった。
じゃが、儂はどうも変わりもんじゃったらしくてのぉ。
仲間は少しずつ人の輩(やから)を敵視していったんよ。
仲間が変わっていくのは寂しかったのぉ
あるときのぉ・・・年端もいかぬ赤ん坊っちゃあ、攫ってきおって・・・・
哀しむ母親の目の前で食い殺しよった。
ほんまに誇り高い狼の一族のもんが、弱い赤ん坊をかみ殺すなんぞ・・・・末代までの恥じゃ。
それまでは狼じゃあ言うたかて、それほど嫌われておらんじゃったよ。
せやけど、そっからあとはあかんかった。
人の輩(やから)と儂等狼の族(うから)は互いに憎しみあうようになったんじゃ。
儂が人の輩に取り囲まれたんは、そういう時代よ。
人々はおっそろしい形相で儂を睨んじょった。
ありゃあ、ニ、三十人はおったかのぉ。
あのときは儂も恐ろしかったよ。
何よりも儂が恐れたんはのぉ・・・・・人を殺すことよ。
なんのかんの言うても狼は一頭一頭が自分の王よ。
自分がよければそれでええっちゅうところがある。
せやけど、人の輩は違う。
なんでかしらんけど、奴らは仲間をものすごぅ大事にしよる。
あのとき儂が誰か1人でも殺しよったら、人の輩は狼を根絶やしにすることを辞さなかったやろ。
だからこそ、儂ゃあ、誰も殺しちゃあならんと思うた。
儂もあの頃は若かったからのぉ。
血の匂いを嗅いだら我慢できんやろうとおもうた。
せやからな、二、三十人に囲まれて、そこから儂は誰一人怪我させず、自分も血を流さずに脱出せにゃあならんかった。
ありゃあ、さすがにきつかったのぅ。
今でもどうやって逃げたのか、よぉ憶えてない。
何?かっこわるいじゃと?
お主、この程度のモンスターに囲まれてぶるぶる震えとるのに、よぉ言うのぉ。
なんじゃと?武者震いじゃと。
あっはっはっはっは。
お主、なかなか言いおるのぉ。
じゃがな、あのとき人と全面的に対決せんでよかったと儂は今でも思っちょるよ。
・・・なによりこんな風に昔を思い出したときに酒がまずくなるじゃろうが。
後悔はしたらあかん。
いつでも美味い酒が呑めるように生きるのが儂の生き方じゃよ。
何?
何でそんな風に人に囲まれたじゃと?
訊きたいか?
ふ~む。
まぁよかろうよ。
あのときはな、儂に縁(ゆかり)の狼にはじめての仔がおったのよ。
人の輩がな、その巣に気づきおった。
せやからな、儂が囮になったのよ。
あぁ、狼は一頭一頭が自分の王で他のもんは知らんと確かに言うたな。
だがな、儂は玖狼の神よ。
儂には儂に繋がる族を守る義務がある。
そんじょそこらの狼と一緒にしてもらっては困るのぉ
さて、酒が尽きた。そろそろ本気で行くかいの。
この昔語りの間・・・・玖狼はずっと右手に酒瓶、左手に杯を持ち、あぐらをかいたままで・・
時折右手の人差し指から出した鬼火でモンスターたちを牽制していた。
囲まれても平然として楽観していたのは、経験に裏打ちされた実力が伴うからだ。
昔語りを終え、すっくと立ち上がった玖狼が周りを囲むモンスターをなぎ倒すのにかかった時間はほんの一瞬のことだった。
倒してもいいなら、この十倍の敵に囲まれても儂ぁなんとでもなるでよ。
相手を倒さずに、自分も傷つかずに引く。
そのほうが何倍も難しいことを儂は知っとるからな。
そういい残すと、誇り高い狼神は遺跡の中へと消えていった。
十八人目のお題「楽観」 701 玖狼
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