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襲い掛かってくる狼の勢いを利用してカウンターで技を当てる。
「あぁ東方の言葉って舌噛みそうだよ…! 六彩、七音、八卦良し!落ちよ天穹――」
神鳴る力
バスタードソードが唸る。
狼達が悲痛な声をあげる。
ごめんね
心の中で彼らに謝る。
ハーフドッグである彼にとっては親戚といえないこともない相手。
魅惑や魅力の技能を修めていない以上、彼らが牙を引っ込めてくれるはずもない。
ただ、ゴーチェに魅惑されることだけを祈りつつ、彼らの動きを止める。
戦闘後にゴーチェに魅惑され、従順になる狼達を見て、より一層感じる罪悪感
味方になるかもしれないものたちとはいえ、
襲い掛かってくる以上動きを止めるのは前衛である彼の役目。
この役って損かも
そんなことを考えたりもした。
戦闘が終わって、装備の手入れをしたり、料理をする時間。
「あれぇぇえええ??」
ABCDは荷物を確認してすっとんきょうな声をあげた。
「僕のお弁当がない!!」
そう・・・・彼の手荷物には食材がまったくない。
──────これじゃあ、おなかがすいちゃうよ。
彼はチラッと狼たちの方を横目で見た。
──────確か・・・彼らは牙しか持ってないんだよね。
はちみつやお肉でも持っていればいいのに・・・・
さっきまでの罪悪感はどこへやら。
ABCDの頭の中はもう食事のことでいっぱい。
ハーフドッグである彼にとって食事に勝る大事な物があるだろうか?
だからこそ、狼たちのことを ハズレ と思い始めた彼のことを冷たいやつだと思わないで欲しい。
仕方なく彼は1人で狩りに出かけた。
───────やっぱりこのあたりの敵は肉を持ってないや・・・・
いくつかの戦闘を繰り返し、そして失望とともに襲い来る罪悪感。
ごめんね。
彼は心のなかで深く謝った。
だが、・・・・・・・・・・この気持ちもしばらくしたら忘れてしまうだろう。
彼は薄情なわけではない。
彼は過去を憶えていない。憶えられない。
彼は過去に引きずられない。
彼は未来に思いをはせることもない。
過去と罪悪を超越するもの。アーサー・バーナード・クラーク・ダグラス
にこやかな笑顔を持つ、悪気のない子犬はいつも「今」を生きている。
彼が悪いわけではない。
憶えておけるなら、彼だってどれだけ幸せなことだろう。
だが、忘却こそが彼が知らずして犯してしまう一番の罪悪なのかもしれない。
七人目のお題「罪悪」 92 アーサー・バーナード・クラーク・ダグラス(ABCD)
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