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闇と鎖と一つの焔

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  • 11/16/00:31

30th day (Part.1)

ぴちゃん・・・・ぴちゃん・・・・
どこかで水の音がする。
水滴の落ちる音。
俺はおぼろげな意識の中でとても大事なことを思いだせずにいた。
俺の大事なあいつのことを。


◆     ◆     ◆


「もうし、もうし、そこのお方」

遺跡外で食料を買い込んだ俺。
今回からは今までより良い食材を買いそろえ、いつものように湖のほとりの隠れ家で調味料を作り、お菓子を作り、そして紅茶葉を用意して準備をしようとしていた。

そろそろコンビニにいこうか。
今の時期ならサンタグッズもそろっているんだろうな。
きっと華・・が喜ぶだろう。
いっそトナカイの仮装をするほうが一夜やぴぃには受けそうだ。

そんなことを考えていた俺は後ろから声をかけられた。
振り返るとそこにいたのは青い髪、青い服を着た長髪の女性。
肌が白くて俺とは対照的な・・・
いや、俺というより華・・と対照的というべきか・・・
すらりとした女性が立っていた。

「俺に何か用か?」
「お見受けしたところ、強い火の加護をお持ちのようですが、ひょっとして火喰い鳥の民?」

その言葉を聞いたときに、俺はこの女性から離れるべきだった。
守護精霊たちがその存在をひた隠しにする火喰い鳥の民。
共に時間を過ごした者達も、やがて記憶の中からその姿を忘れ去る。
今は共にいるベアやトーキチローだって、俺と別れたら1年と経たないうちに俺のことを忘れるはずだ。

その存在を秘された民。

なぜ違和感を覚えなかったのか全くわからない。
確かにこの島で知り合った人たちの何人かは俺が火喰い鳥の民であることを知っている。
だが、俺を知っている人たちは、俺以外の人に俺の話題を話すことなどほとんどない。
華・・が精神的な結界を貼っているからだ。
だから、俺自身が見知った相手でなければ、俺のことを知っているものなどほとんどいない。
俺、または華・・がその人柄を知り、気を許した相手以外は。

だから、俺はそのときにあいつを呼ばなければならなかった。
俺の知らないこの女は華・・の知り合いなのかと。
だが、俺は思いつきもしなかった。
そのときから俺はきっと術にかかっていたのだろう。

「俺のことを知っているのか?」
「えぇ、私と対照的な方々ですから。私は水晶宮の民。水霊の加護を受ける者」

言われてみれば、この女性の雰囲気は水を感じさせる。
長いまっすぐな水色の髪。

「そうか、水霊の加護を受ける民もいるんだな。」
「私は氷彌(ひみ)と申します。あの・・・それで・・・折り入ってお話が・・・」

そういうと氷彌は水晶玉を取り出した。

「水の民は水をよく使います。その技の一つとして水占があります。水の加護を受けた我らは普通の人間よりも高い能力で先視(さきみ)をすることができます。お声をかけたのは他でもありません。私と対照的な貴方を一目見た時に感じるものがありました。それをぜひお伝えしたい。それを聞いてどうされるかは貴方次第です。」

今思えば胡散臭い言葉。
なぜ素直に聞いてしまったのか、自分でもわからない。
氷彌と名乗る女性は水晶玉を抱えながら俺にこう言った。

「貴方は気づかないうちに貴方のそばにいる大事な人を傷つけています。今気づけば貴方はその人を救うことが出来るようです。誰か憶えはありませんか?貴方が無意識で傷つけている人。」


◆     ◆     ◆



同時刻・・・

「貴方がいらっしゃるなんて、夏以来ですわね。でもちょうどよかった。」

華煉は突然の訪問者を自らの空間に招きいれていた。

「ふむ?ちょうどよかったとは?お主、また何かあったのか?
おまけに堕精はより一層進んでおるようじゃのぅ。困ったことじゃ」

頭をかきながら入ってきたのは、華煉が夏に花火の取引を行い、それ以降も相談にのってもらっていた聖霊
華煉の堕精を知っている方。
この方の助力が得られれば、不穏な気配を辿ることが出来るだろう。

「昨日、何者かが私の結界に触れました。それも触れた痕跡を綺麗に消し去って。」
「相手を特定できないというんじゃなかろうな。お主、そこまで堕精が進んでおるのかの?」

そういいながら聖霊はキョロキョロとあたりを見渡す。

「確かに力は落ちています。ですが、痕跡を消すのは相手の腕が良いから。容易ならざるものと見受けました。貴方なら痕跡を辿ることもできるのではありませんか?」

聖霊は目を細めて遠くを見るような目をした。
華煉の結界を量っているかのように。

「すまんのぉ。儂にはわからんようじゃぞ。おぬしの結界でないとすると、触れられたのはあの火喰い鳥の民かの。あれは今どうしとるのじゃな?遺跡の中かの?」

「いえ・・・・マナは今」

違和感。
マナは遺跡外にいる。買い物をして、誰かと話している。
華煉の見知らぬ・・・いや・・・どこかで知っている誰かと。
なのに、相手が見切れない。
おかしい。何かが。

「清蘭様、少し待っていていただけますか?マナの様子が・・・」

説明する時間すらもどかしい。疾くマナの元へ駆けたい。マナの身体のところへ。
マナのそばへの実体化を試み・・・

「お主!あの薬をまだ使っておるのか!!お主今一体何をやろうとした!」

引きずり落とされた。聖霊-清蘭-に。

「わかっておるのか!お主は今堕精しようとしておるのじゃぞ!実界への干渉など最低限にせねばならん!」
「ですが、清蘭様!マナが」
「あの男のところなら儂が行ってやる!」

そういって縛り付けられる。清蘭の精神結界に。

「清蘭様!確かに貴方の力は強い。ですが私はマナと守護契約を結んでいる。マナのそばなら私のほうが強い!」
「そうして、儂に見てみぬふりをしろというのか!お主は!」

結界を叩く華煉。
反射的に叫び、そして俯く清蘭。

「頼むから。儂の前でぐらいおとなしくしておくれ。そうじゃないと儂は・・・お主とお主の守るあの男が極めて危険な状態にあると、あのお方に告発せねばならなくなる。そんなことはしたくないんじゃ。お主が望まぬことを儂はしたくない。」
「清蘭様」
「儂はそなたがかわいい。頼むからここにいてくれ。儂がいる間ぐらい無理をしてくれるな。」

そういうと清蘭は消えた。おそらくマナのところへ。
華煉は待つことしか出来なくなった。


◆     ◆     ◆



「憶えはありませんか?貴方の近しい人。」
「そうだな。ベアにはいつも迷惑かけているな。トーキチローのペットにも助けてもらってるし。トーキチローはペット好きだからペットを盾にするあの戦闘は不本意かもしれないな。」

「女性のようですよ。」
「女性?となるとジゼルかな?鬱陶しがられていてもおかしくないし。あとはぴぃか?」

「どうやら共に戦う人のようです。」
「となると、舞華やミーティアとはあまり組んでないから、一夜かハーカか?」

あの二人にそんなに迷惑かけたかな?

「あぁ、失礼。女性かと思ったら、どうやら性のない方のようです。」

わかった。

「メイリさんか!確かに俺が変な行動を取るとメイリさんには迷惑がかかっていそうだな。」

困った。俺そんなに迷惑かけただろうか。

俺が悩んでいると氷彌さんがさらに声をかけてくる。

「それ以外に思いつかないのですか!?」
「そういえばメイリさんとは一緒に戦ったことがないな。ひょっとしてハーカは竜だから性がないのか?」
himi1.jpg
いや、まさかシヴェルやシクが女性とか・・・ありうる。二人とも綺麗な顔をしているし。

俺は気づかなかった。
氷彌さんが少しずつ言葉を荒げていたことに。
少しずつ変わっていたことに。

「もうよい。」

静かに・・・・静かに・・・怒りを込めた声が響く。
その声を合図に姿を変える。
服の色が水色からオレンジに
青い瞳がどす黒い赤に
水色の髪がオレンジに
まとう空気さえ水の空気が消え、燃えるような緋色に。

「もうよい。お前はあの子にふさわしくない。それがわかった。」
「氷彌さん?」
「お前など消えてしまうがいい!」

強い衝撃。
頭が割れそうで・・・・

「華・・・・・・」

俺は意識を喪った。最後まで名前を呼ぶことが出来なかった。なぜか思い出せなかった。あいつの名を。


◆     ◆     ◆



「緋魅」
「清蘭様、この男は華煉にふさわしくない。まったくふさわしくない。あの子が望んでも私が許さない。」
「華煉は来れんよ。封じてきたから。」

ならば・・・・連れ去るのみ。
この男をこの島から外へ。
火喰い鳥の里へ。

「空間をつなぎましょう。あの里へ」
「それはできんようじゃの」
「なぜですの。空間さえつなげば一気にあの里へ行ける。華煉は助かりますわ。」
「華煉とこやつの絆を舐めてはいかんようじゃ。お主昨日こいつの精神に手を出したじゃろ。華煉は気づいておったよ。見てみるが良い」

驚愕。
島から外へ出ようとする者を捕らえる結界。
華煉がマナを守るためにたった一日で作り上げたもの。
それは清蘭と緋魅の力を持ってしても破ることの出来ない精緻な結界。
これではマナをこの島の外に連れ出すことは出来ない。

「ふむ、この島の特性は利用できそうじゃの。そこの魔法陣から水の気配が強い地に飛ぼう。そこならばわしの力で華煉の火の力を打ち破れるかもしれん。」

緋魅と清蘭はマナをつれて魔法陣を渡る。この島でもっとも水の力の強い地へ。


◆     ◆     ◆



ぴちゃん・・・・ぴちゃん・・・
どこかで水の音がする。
誰かが俺を呼んでいる。
『マナ、マナ、お願い呼んで。私の名を。貴方が呼んでくれれば私は強くなれるから。だからお願い』
名前を呼んで・・・・
そういったのは・・・あれは誰?

華・・ 

それ以上、俺には思いだせなかった。
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