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53th day
―これまでのダイジェスト―
魔に取り付かれやすく狙われやすい火喰い鳥の民のマインドスナッチ(マナ)は守護精霊である華煉とずっと旅をしてきた。招待状を受けてやってきたこの島で、華煉はこの島に引き寄せられるかのように堕精(=精神体である精霊が力の大部分を失い、植物や動物のように物質の中に封じ込められること)をはじめた。
堕精を止めるには火喰い鳥の里に戻り、マナとの守護契約を解除し、物質世界から離れ、精霊界に戻って力を戻す必要がある。
だが、マナと離れることを嫌った華煉は力が弱まったことを隠し、火喰い鳥の里へ戻ることをあきらめ、自ら堕精する道を選ぼうとする。
この島に来て30日を過ぎた頃、力の弱まった華煉の索敵能力が落ちた結果、マナは人斬りに切られ、Power Stoneを奪われてしまう。
マナが使うPower Stoneにはマナの気を残さないよう華煉が手を加えていたが、奪われたPSにはマナの気がたっぷり残っている。
マナの気を残したマジックアイテムが魔の手に落ちたら、そのままマナはその体も精神も魔に取り込まれてしまう。
力の弱まった華煉には奪われたPSをどうすることも出来ず、華煉はマナの体からマナの精神を抜き取り火喰い鳥のナイフについた紅瑪瑙石の中に封印し、自らはマナの体に宿って受肉=堕精する。
マナを侵食されないためには、精神を保護し、その精神を移す新しい器をつくらなければならない。
奪われたPSを媒介にしても干渉する事の出来ない新しい肉体をマナに授けるために、華煉は自ら剣を抜き、マナに変わって宝玉を探索することになる。
―ここ数回のお話―
華煉が顕現してから、封じ込められたマナのところに聖霊清蘭がたびたび訪ねてくるようになった。
彼が言うには焔霊が堕精してヒトの形をとったものと、その子孫が築いた一族が火喰い鳥の民なのだという。精霊の血を引く彼らは魔に狙われやすい・・・魔族にとって最高の生贄なのだという。
精霊族は火喰い鳥の民という不安定な存在を消滅させようと働きかけてきた。
だが、その働きかけの中で見つかったマナと華煉の魂は何度転生を繰り返しても必ず火喰い鳥の民とその守護精霊に生まれ変わるという特殊性をもっていた。
この二人を火喰い鳥の民の輪廻から外し、焔霊と人の輪廻に返さねば火喰い鳥の民という存在は消えそうにない。
元を辿れば、二人の魂は「はじめて堕精した焔霊」燦伽の魂と、燦伽と人の女性との間に生まれて魔に取り込まれた「最初の生まれながらの火喰い鳥の民」イールの魂が転生したものだった。(36~41日目ぐらいまでの日記にだらだら書かれている)
清蘭はマナと華煉のどちらの魂が燦伽の魂であるかを見極めるために、マナに時間回帰の術をかける。
前世、前々世、さらに過去へと回帰したマナは、少し前に取り込んだマナの雫と過去の膨大な記憶に影響され、存在が不安定になり、清蘭の作った結界の中から動けなくなってしまう。(48日目)
そんなとき遺跡外へと戻った華煉。
普通なら遺跡外の住処の結界を使って火喰い鳥のナイフの中でマナと会えるはずだったが、存在が不安定になったマナを華煉に見せたくないと考えた清蘭とマナに説得され先に探索に必要な買い物に出かける。
その出かけた先でトラブルに巻き込まれた華煉はマナを巻き込むことを恐れてそのまま一晩帰ってこれなくなった。(49日目)
そのまま華煉は、心配しきって消耗して眠りについたマナに詳しい事情を話す間もなく、闇の翼メンバーと合流して遺跡内に突入する。
遺跡内の戦闘の合間、華煉はマナを話す時間を見つけるが、ちょっとしたことでマナを怒らせてしまう。
それでもマナが戦闘に巻き込まれないように火喰い鳥のナイフに結界をかける華煉。
その結界は清蘭にもらった護符を使った結界陣だった。(51日目)
自分の力で作られた結界を苦もなく通過し、マナに対峙した清蘭は、結界の中でマナの姿に重なるように映る魔を垣間見る。
危険な状況を察知した清蘭は自らの腕でマナの胸を貫き、マナの体の中から闇の種子を取り除いた。
(52日目)
◆ ◆ ◆ ◆
突然の衝撃のあと・・・特に何も変わったことは起こらなかった。
1:3の戦闘も快勝で・・・・
命を奪う剣 ストームブリンガー
確かに強い。マナが気焔万丈を極めた私に、といって勧めただけのことはある。
炎に燃える私の体。その熱を、痛みを、傷を、敵の命で補っていく。
でも、本当にいいのかな?
私はこの剣を揮うことで、命をもてあそぶ術に長けてしまったんじゃないだろうか?
もう・・・精霊にはきっと戻れない。
たくさんの命を奪って、たくさんの命を啜って、そして体を維持して生きている。
マナの体を借りているだけといいつつ、今の私のあり方は立派な火喰い鳥の民だ。
「マナ・・・・これから・・・どうなっちゃうのかな?私たち。」
手元にある弐つの宝玉をぎゅっと握り締める。
この玉石にどんなにすごい力があるのかはわからないけど・・・・・この島に来る前にはもう戻れない。
◆ ◆ ◆ ◆
「俺に何が起こっていた?」
ぶち抜かれた俺の心臓。
そしてそこから抜き取られた闇の種子と呼ばれるもの。
俺にはそれが何なのか、俺に何が起こっていたのか聞く権利がある。
「結界というものは外からの侵入を防ぐもの。だが、それと同時に内にある『守るべきもの』を外に漏らさないものでもある。
今この空間には二重の結界がしかれている。
火喰い鳥のナイフについた紅瑪瑙石の結界が一つ。魔を寄せ付けない魔法石そのものが結界になっている。
もう一つが華煉の張った護符の結界。
だが、さっきまでは儂の張った多数の魔法陣の結界もあったからお主は多重結界の中にあった。
そうそうたやすく破られるものではないし、破られれば儂と華煉にはすぐわかる。
だから、外から侵入したものは何一つない。そう儂には断言できる。
だがな・・・・・」
そういうと清蘭はじっと俺を見る。
「なんだよ。気持ち悪いな。俺がどうかしたのか?」
何かを探るかのような清蘭の視線。
一体なんだというのだろう?
切迫した重い空気を感じる。
俺は何が起こっていたのか知っていなければならない。
そう思わずにいられない。
「清蘭、話してくれ。頼むから。それがどんな不快なことでも構わない。俺は『知りたい』んだ」
教えてくれ。それはきっと俺が知らねばならないことなのだから。
その意思を込めて伝えた言葉。
精霊である清蘭には思いが通じるはずだ。
「・・・・・ヒトとはおかしなものだ。儂ら聖霊ですら眩く感じるほどの光を放つこともあれば・・・・信じられぬほどの闇を纏うこともある。
結界は中にあるものを外に漏らさない。
だから・・・・・多重結界の中でお主が生み出した闇が凝縮されてしまった。」
「俺が生み出した闇?」
「そうだ。憎悪、嫉妬、虚栄心、恨み、妬み、そういった負の感情をどうしてもヒトは持つ。だが、負の感情に囚われていては、ヒトは生きていけない。
だから、負の感情と向き合い、のた打ち回りながらも、自分の器の中で昇華していく。物に当たることもある。他人に話して声に出すことで吐き出すこともある。自分の中で理性的に原因を探り自分で納得させて昇華することもある。その反対に衝動に自分の身を委ね負の感情を楽しいと思う正の感情で上書きして消すこともある。
そうしてそういった負の経験を元にヒトは柔軟に成長して行くのだ。
次にそういった事態に陥りそうになったら一回り成長した自分の力で受け止めたり、それが無理なら回避したり、流したり・・・・そうして負の感情に陥らないように立ち回ることで進んで行く。
火喰い鳥の民は半人半精霊とでも言おうか・・・負の感情に囚われることは少ない。だが、負の感情を持たないわけではない。お主もそうだ。負の感情が生まれたらそれを外に吐き出さなければならない。
だが、この多重結界の中、生まれたものを精神体であっても外に漏らさない結界内で・・・お主の中に芽生えた負の感情はそのまま抜け出すことと知らず、新たな負の感情を呼び、ひたすら育ち、育って、一つの核にまで育ってしまった。
それがあの闇の種子だ。」
俺の負の感情が育って生まれた闇の種子。
だが、まだピンと来ない。
確かに少し前の俺は独占欲にかられ、嫉妬に狂いそうになっていた。思い出すだけで自分でも見苦しいと思うほどの負の感情。
その感情が育って・・・・それがそんなに危険なことなのだろうか?
「清蘭」
「なんだ?」
「闇の種子が出来るというのはそんなにめずらしいことなのか?・・・・それに・・・・闇の種子がずっと俺の中にあったら、俺はどうなった?」
闇の種子が俺の生み出したものだとして、清蘭が俺の中から取り除き、しかもここにはおいて置けないぐらい危険といったのはどういう意味なのだろう。
俺は清蘭をじっとみつめた。
清蘭は少し躊躇して・・・・だが、もう一度俺の目を見てはっきりとこう言った。
「闇の種子を過去に生み出した火喰い鳥の民は一人しかおらぬ。自らの闇に囚われた火喰い鳥の民はイールだけだ。
闇の種子をそのまま放置すれば、負の感情を糧に芽吹く。
芽吹いた種子はお主を食らい・・・・お主は永遠に負の感情に捉えられ、やがて・・・お主を一人の魔に変える。
それも・・・・・おそらく儂ですら封じる事の出来ない強大な魔物に。
そして魔物に変わったお主が最初にやることはもっとも身近で良質な生贄・・・・つまり華煉を食らうことだろう。
イールが母親の腹を食い破って生まれたように・・・お主は華煉の体を貪り、そしてその体を乗っ取ってこの世界に一人の魔物が生まれるだろう。」
◆ ◆ ◆ ◆
「お待たせしました。」
合流地点に待っていたのは涼しげな目をした召喚士。
「シヴェルさんと遺跡内で組むのは・・・・あら?私ははじめてかしら?」
水の気の強い人はちょっと苦手。
だけど、穏やかなこの方に何度合成を助けられたかしら?
そういえば、マナはよくルイさんに美味しいものを作ってあげていた。
私はそれがとてもうらやましかったから、よく憶えてる。
目の前にいるのはダークホースと少女型の機械人形。
この怪物たちからこの方達を守らなければね。
それに・・・・ほんの少しだけこの方々を守れば・・・・きっと強い味方を呼んでくれるはず。
「私の焔を盾に・・・・・。この火の壁の中から、まさか水の刃が飛ぶとは思わないでしょうね」
私は微笑みながら剣を構えた。
魔に取り付かれやすく狙われやすい火喰い鳥の民のマインドスナッチ(マナ)は守護精霊である華煉とずっと旅をしてきた。招待状を受けてやってきたこの島で、華煉はこの島に引き寄せられるかのように堕精(=精神体である精霊が力の大部分を失い、植物や動物のように物質の中に封じ込められること)をはじめた。
堕精を止めるには火喰い鳥の里に戻り、マナとの守護契約を解除し、物質世界から離れ、精霊界に戻って力を戻す必要がある。
だが、マナと離れることを嫌った華煉は力が弱まったことを隠し、火喰い鳥の里へ戻ることをあきらめ、自ら堕精する道を選ぼうとする。
この島に来て30日を過ぎた頃、力の弱まった華煉の索敵能力が落ちた結果、マナは人斬りに切られ、Power Stoneを奪われてしまう。
マナが使うPower Stoneにはマナの気を残さないよう華煉が手を加えていたが、奪われたPSにはマナの気がたっぷり残っている。
マナの気を残したマジックアイテムが魔の手に落ちたら、そのままマナはその体も精神も魔に取り込まれてしまう。
力の弱まった華煉には奪われたPSをどうすることも出来ず、華煉はマナの体からマナの精神を抜き取り火喰い鳥のナイフについた紅瑪瑙石の中に封印し、自らはマナの体に宿って受肉=堕精する。
マナを侵食されないためには、精神を保護し、その精神を移す新しい器をつくらなければならない。
奪われたPSを媒介にしても干渉する事の出来ない新しい肉体をマナに授けるために、華煉は自ら剣を抜き、マナに変わって宝玉を探索することになる。
―ここ数回のお話―
華煉が顕現してから、封じ込められたマナのところに聖霊清蘭がたびたび訪ねてくるようになった。
彼が言うには焔霊が堕精してヒトの形をとったものと、その子孫が築いた一族が火喰い鳥の民なのだという。精霊の血を引く彼らは魔に狙われやすい・・・魔族にとって最高の生贄なのだという。
精霊族は火喰い鳥の民という不安定な存在を消滅させようと働きかけてきた。
だが、その働きかけの中で見つかったマナと華煉の魂は何度転生を繰り返しても必ず火喰い鳥の民とその守護精霊に生まれ変わるという特殊性をもっていた。
この二人を火喰い鳥の民の輪廻から外し、焔霊と人の輪廻に返さねば火喰い鳥の民という存在は消えそうにない。
元を辿れば、二人の魂は「はじめて堕精した焔霊」燦伽の魂と、燦伽と人の女性との間に生まれて魔に取り込まれた「最初の生まれながらの火喰い鳥の民」イールの魂が転生したものだった。(36~41日目ぐらいまでの日記にだらだら書かれている)
清蘭はマナと華煉のどちらの魂が燦伽の魂であるかを見極めるために、マナに時間回帰の術をかける。
前世、前々世、さらに過去へと回帰したマナは、少し前に取り込んだマナの雫と過去の膨大な記憶に影響され、存在が不安定になり、清蘭の作った結界の中から動けなくなってしまう。(48日目)
そんなとき遺跡外へと戻った華煉。
普通なら遺跡外の住処の結界を使って火喰い鳥のナイフの中でマナと会えるはずだったが、存在が不安定になったマナを華煉に見せたくないと考えた清蘭とマナに説得され先に探索に必要な買い物に出かける。
その出かけた先でトラブルに巻き込まれた華煉はマナを巻き込むことを恐れてそのまま一晩帰ってこれなくなった。(49日目)
そのまま華煉は、心配しきって消耗して眠りについたマナに詳しい事情を話す間もなく、闇の翼メンバーと合流して遺跡内に突入する。
遺跡内の戦闘の合間、華煉はマナを話す時間を見つけるが、ちょっとしたことでマナを怒らせてしまう。
それでもマナが戦闘に巻き込まれないように火喰い鳥のナイフに結界をかける華煉。
その結界は清蘭にもらった護符を使った結界陣だった。(51日目)
自分の力で作られた結界を苦もなく通過し、マナに対峙した清蘭は、結界の中でマナの姿に重なるように映る魔を垣間見る。
危険な状況を察知した清蘭は自らの腕でマナの胸を貫き、マナの体の中から闇の種子を取り除いた。
(52日目)
◆ ◆ ◆ ◆
突然の衝撃のあと・・・特に何も変わったことは起こらなかった。
1:3の戦闘も快勝で・・・・
命を奪う剣 ストームブリンガー
確かに強い。マナが気焔万丈を極めた私に、といって勧めただけのことはある。
炎に燃える私の体。その熱を、痛みを、傷を、敵の命で補っていく。
でも、本当にいいのかな?
私はこの剣を揮うことで、命をもてあそぶ術に長けてしまったんじゃないだろうか?
もう・・・精霊にはきっと戻れない。
たくさんの命を奪って、たくさんの命を啜って、そして体を維持して生きている。
マナの体を借りているだけといいつつ、今の私のあり方は立派な火喰い鳥の民だ。
「マナ・・・・これから・・・どうなっちゃうのかな?私たち。」
手元にある弐つの宝玉をぎゅっと握り締める。
この玉石にどんなにすごい力があるのかはわからないけど・・・・・この島に来る前にはもう戻れない。
◆ ◆ ◆ ◆
「俺に何が起こっていた?」
ぶち抜かれた俺の心臓。
そしてそこから抜き取られた闇の種子と呼ばれるもの。
俺にはそれが何なのか、俺に何が起こっていたのか聞く権利がある。
「結界というものは外からの侵入を防ぐもの。だが、それと同時に内にある『守るべきもの』を外に漏らさないものでもある。
今この空間には二重の結界がしかれている。
火喰い鳥のナイフについた紅瑪瑙石の結界が一つ。魔を寄せ付けない魔法石そのものが結界になっている。
もう一つが華煉の張った護符の結界。
だが、さっきまでは儂の張った多数の魔法陣の結界もあったからお主は多重結界の中にあった。
そうそうたやすく破られるものではないし、破られれば儂と華煉にはすぐわかる。
だから、外から侵入したものは何一つない。そう儂には断言できる。
だがな・・・・・」
そういうと清蘭はじっと俺を見る。
「なんだよ。気持ち悪いな。俺がどうかしたのか?」
何かを探るかのような清蘭の視線。
一体なんだというのだろう?
切迫した重い空気を感じる。
俺は何が起こっていたのか知っていなければならない。
そう思わずにいられない。
「清蘭、話してくれ。頼むから。それがどんな不快なことでも構わない。俺は『知りたい』んだ」
教えてくれ。それはきっと俺が知らねばならないことなのだから。
その意思を込めて伝えた言葉。
精霊である清蘭には思いが通じるはずだ。
「・・・・・ヒトとはおかしなものだ。儂ら聖霊ですら眩く感じるほどの光を放つこともあれば・・・・信じられぬほどの闇を纏うこともある。
結界は中にあるものを外に漏らさない。
だから・・・・・多重結界の中でお主が生み出した闇が凝縮されてしまった。」
「俺が生み出した闇?」
「そうだ。憎悪、嫉妬、虚栄心、恨み、妬み、そういった負の感情をどうしてもヒトは持つ。だが、負の感情に囚われていては、ヒトは生きていけない。
だから、負の感情と向き合い、のた打ち回りながらも、自分の器の中で昇華していく。物に当たることもある。他人に話して声に出すことで吐き出すこともある。自分の中で理性的に原因を探り自分で納得させて昇華することもある。その反対に衝動に自分の身を委ね負の感情を楽しいと思う正の感情で上書きして消すこともある。
そうしてそういった負の経験を元にヒトは柔軟に成長して行くのだ。
次にそういった事態に陥りそうになったら一回り成長した自分の力で受け止めたり、それが無理なら回避したり、流したり・・・・そうして負の感情に陥らないように立ち回ることで進んで行く。
火喰い鳥の民は半人半精霊とでも言おうか・・・負の感情に囚われることは少ない。だが、負の感情を持たないわけではない。お主もそうだ。負の感情が生まれたらそれを外に吐き出さなければならない。
だが、この多重結界の中、生まれたものを精神体であっても外に漏らさない結界内で・・・お主の中に芽生えた負の感情はそのまま抜け出すことと知らず、新たな負の感情を呼び、ひたすら育ち、育って、一つの核にまで育ってしまった。
それがあの闇の種子だ。」
俺の負の感情が育って生まれた闇の種子。
だが、まだピンと来ない。
確かに少し前の俺は独占欲にかられ、嫉妬に狂いそうになっていた。思い出すだけで自分でも見苦しいと思うほどの負の感情。
その感情が育って・・・・それがそんなに危険なことなのだろうか?
「清蘭」
「なんだ?」
「闇の種子が出来るというのはそんなにめずらしいことなのか?・・・・それに・・・・闇の種子がずっと俺の中にあったら、俺はどうなった?」
闇の種子が俺の生み出したものだとして、清蘭が俺の中から取り除き、しかもここにはおいて置けないぐらい危険といったのはどういう意味なのだろう。
俺は清蘭をじっとみつめた。
清蘭は少し躊躇して・・・・だが、もう一度俺の目を見てはっきりとこう言った。
「闇の種子を過去に生み出した火喰い鳥の民は一人しかおらぬ。自らの闇に囚われた火喰い鳥の民はイールだけだ。
闇の種子をそのまま放置すれば、負の感情を糧に芽吹く。
芽吹いた種子はお主を食らい・・・・お主は永遠に負の感情に捉えられ、やがて・・・お主を一人の魔に変える。
それも・・・・・おそらく儂ですら封じる事の出来ない強大な魔物に。
そして魔物に変わったお主が最初にやることはもっとも身近で良質な生贄・・・・つまり華煉を食らうことだろう。
イールが母親の腹を食い破って生まれたように・・・お主は華煉の体を貪り、そしてその体を乗っ取ってこの世界に一人の魔物が生まれるだろう。」
◆ ◆ ◆ ◆
「お待たせしました。」
合流地点に待っていたのは涼しげな目をした召喚士。
「シヴェルさんと遺跡内で組むのは・・・・あら?私ははじめてかしら?」
水の気の強い人はちょっと苦手。
だけど、穏やかなこの方に何度合成を助けられたかしら?
そういえば、マナはよくルイさんに美味しいものを作ってあげていた。
私はそれがとてもうらやましかったから、よく憶えてる。
目の前にいるのはダークホースと少女型の機械人形。
この怪物たちからこの方達を守らなければね。
それに・・・・ほんの少しだけこの方々を守れば・・・・きっと強い味方を呼んでくれるはず。
「私の焔を盾に・・・・・。この火の壁の中から、まさか水の刃が飛ぶとは思わないでしょうね」
私は微笑みながら剣を構えた。
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