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闇と鎖と一つの焔

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  • 11/23/02:13

54th day

久々の遺跡外

前の遺跡外では大失敗してしまったから、買い物に行く前にマナに会いに行く。

遺跡内で怒られてしまった。

ちょうど過酷な戦闘が始まるところで結界を張って、それ以来結界を解いていない。

その間、マナはずっと一人だったはず。

我ながら残酷なことをしてしまったかもしれない。

マナの行動の自由を封じているのに、外のことを知る自由すら封じてしまった。

だけど、戦闘中にあんな風に責められたら、きっと私は剣を握っていられない。

遺跡外の安全なこの小屋で封印を解こう。

ぺりぺりと1枚ずつ護符を剥いでいく。

そして感じる違和感。

マナしかいないはずの場所に誰かいる?

『ようやく気づいたか。はよぉ来るが良い。華煉。』

「清蘭様!」

そういえば、この護符は清蘭様の力を借りたもの。

精霊界の力を引き寄せる結界なら邪なものは入れないと思ったけど、清蘭様の力を借りている以上、清蘭様にはこの結界などないも同然。

力を失った私には結界の中を覗き見ることが出来なかったけど、マナと二人で何を話したんだろう。

そういえばこの前の遺跡外に出る直前も、マナは清蘭様と何かしていて・・・・あのとき、マナはちょっとおかしかった。

「清蘭様!マナに何もしていませんね!今すぐ行きます!」

そういって華煉は跳んだ。

火喰い鳥のナイフについた紅瑪瑙石の中へ。


◆              ◆              ◆              ◆


・・・少し暗い?

そういえば、清蘭様の魔法円の痕跡がない。

前に来た時はマナのベッドの回りに清蘭様の魔力がたくさん残っていた。

今は清蘭様の魔法円は完全に解かれているみたい。

私は指先に少しだけ火を灯した。

なのに・・・・火が闇を照らしてくれない。

闇が勝っている?そんな莫迦な。

闇に包まれているのはマナのベッド?

「マナ!」

「どうした?華煉」

マナの声が聞こえて・・・そして周囲が不意に明るくなった。

ほんの瞬き一つの間で穏やかなオレンジ色の光があたりを包み、椅子に座ってマナと清蘭様がいる。

ベッドにも穏やかな光が舞っている。

今の闇は気のせい?

ううん・・・・そんなはずはない。

この空間で私を騙すなんて、清蘭様にも不可能だ。

少し前までここに闇があったんだ。

私が覗けない間に、・・・とてつもない何かがここで起こっていたんだ。

私は呪印を切る。

「喝っ!」

裂帛の気合とともに焔が私の右腕から放たれる。

隠れた闇を暴き、燃やし尽くせ!

私はその意を込めて焔を放った。

解き放たれた焔は一直線に進んだ。

マナと清蘭様のいるほうへ。

「破!」

焔が一瞬で光に駆逐される。清蘭様の放った光に。

私には目を疑うことしか出来なかった。

闇を駆逐するため放った光は一直線にマナのほうへ向かっていたと気づいたから。

私の横に来た清蘭様が耳打ちする。

「いかんのぉ。いくら喧嘩したからといって、いきなりこんな熱をとばしてくるとはの。儂がおらなんだら、魂が焼き消されておったよ。消失した魂は甦りも起こらん。真の無じゃよ。」

なぜ?どうして?どうして闇の残滓がマナにあるの?

「まぁ、ちょっと二人で話をしたらどうじゃ?儂はすぐ来れる場所におるからの。」

そういって清蘭様は消えてしまった。

「華煉?今の焔は・・・・何をしようとしたんだ?」

私を疑いもしないマナの声。

今の焔が直撃したら、マナの魂は焼失していた。

清蘭様がいなければ、私がこの手でマナを。



私は呆然としてしまったらしい。

ふと気づいたら目の前にマナがいる。

「華煉」

心配そうに私の顔を覗きこむ。

「どうしたんだ?大丈夫か?」

そういいながら優しく私を抱きしめる。

とんとんと軽く背中を叩く。

安心していんだよというかのように。

・・・確かにマナだ。

安心する。

私は力を抜いてそっとマナの胸に寄りかかり・・

「いやっ!!」

マナを突き飛ばして大きく後ろに跳び退った。


◆              ◆              ◆              ◆


「いやっ!!」

声がして突き飛ばされた。

思わず緩んだ俺の腕の中から、ぬくもりが消えていた。

「華煉?」

「いやっ!来ないで!私に触らないで!」

拒絶する声。

「華煉?」

一歩前に出ようとして、思わず足が止まる。

声だけじゃない。

体も、細い腕も、輝く瞳も、燃えるような翼も、髪の毛の一筋さえも俺を拒絶している。

「華煉」

「・・・マナを返して・・私に元のマナを返してよ!」

どうして?

華煉が何を言っているのかわからない。

俺は俺なのに。

頭が痛い。

久しぶりに華煉に会うのに。

華煉・・俺の・・・

「マインドスナッチ!心を強くもて!闇に沈むでない!」

パチン!

何かがはじけるような音。

頬が痛い。

白い光。

目がくらむ。

消えてくれ。

おれは光の向こうにいる華煉をみたいんだ。俺の愛しい・・・

「華煉!彼を受け入れろ!彼を闇に渡すな!お前が鍵なんだ!疑うな!すべて説明してやる!だから、彼を呼び戻せ!」

うるさい

「・・・・」

だまれ

「・・・・」

華煉の声が聞こえない。

「・・・・」

この光が消えれば華煉が見えるのか?

「・・・・」

ならば

「・・・・」

キエロ・・キエテシマエ・・・・聖ナル光・・・・オマエナド・・

「マナ!マナ!行かないで!戻ってきて!」

白い光がオレンジ色の光に変わる。

あぁ、この声は華煉だ。俺の大事な愛しい・・

「華煉」

俺は微笑んで、意識を手放した。


◆              ◆              ◆              ◆


「華煉!彼を受け入れろ!彼を闇に渡すな!お前が鍵なんだ!疑うな!すべて説明してやる!だから、彼を呼び戻せ!」

嘘よ!だって、さっきまでマナの形をしていたそれ・・・今はどうみても一人の魔物。

捩れた角、黒い翼、闇の瞳、闇に息衝く者。

「嘘よ!あれがマナだなんて!私にマナを返して!返してよ!清蘭様」

「だから、これがマインドスナッチだと言っているだろう!お主が彼を怒らせたまま結界に封じたりするから、行き場のない怒りで彼は闇の種子を自分で作ってしまった。お主はどうして彼の怒りを受け止めてやらなんだ!」

闇の種子!?

ヒトの負の感情を凝縮して作られるもの。

芽吹けばヒトの心は食いちぎられる。

「一度は取り除いた!結界も薄めた!だが一度作られた土壌は些細なことでたやすく種子を生み出してしまう。お主は自分が何をやったかわかっているのか!」

「嘘!嘘よ!マナはそんなに弱い人じゃないわ!肉体を失って魂だけになっても・・・・笑って・・・・私を許してくれて・・・・ずっといてくれるって!一緒にいたいから、私が頑張るって言ったら、いつも優しく支えてくれて、・・・・私はマナぐらい優しい人を知らない!マナが闇を抱えるなんてそんなことありえない!」

だって・・・こうしている間も闇はどんどん深くなる。

信じられないほど強大な力がそこに生まれようとしていて・・・

「儂を信じろ!華煉!今お前が彼を救わなければ、彼はそのまま闇に取り殺される!見てわからないのか!彼は「彼」だ!」

嘘よ。信じられない。

もう一度闇を見据える。

清蘭様を睨みつけ、まぶしそうにしている魔物。

まぶしそうにしている手をかざす。

その手に指輪。

赤い石のついた指輪。

私の腕輪についているのと同じ石のついた指輪。

腕に刺青

そして額にも刺青。

マナが生まれた時に刻まれた印。

嘘・・嘘よ・・・

否定したい現実。

だけどわかってしまった。

あれは・・・・・マナだわ・・・

「華煉、闇から彼を引きずり出せ!彼の魂を取り戻せ!あのまま闇に引き渡すな!」

マナの手に闇が集まる。

あの闇を放ったら、マナの魂も闇に染まってしまう。

そんなこと・・・・そんなこと・・・

考えるより先に体が動いた。

清蘭様とマナの間に割って入る。

「マナ!マナ!行かないで!戻ってきて!」

闇が集まっていることなど気にしない。

マナの腕を取る。

手が黒い闇で侵食される。

私は侵食された自分の体を燃やす。

マナ、マナ、嘘でしょ?闇に負けるなんて嘘よね?清蘭様と二人でからかっているんでしょう?

そう言いたいけど声が出ない。

私の全身が闇を嫌って焔を放つ。

「マナ!」

瞬間、私の方を見てマナが微笑む。

「華煉」

私の名を呼ぶ。

やわらかで穏やかな微笑みが、闇を駆逐する。

そして、一瞬の後、いつものマナがそこにいて、そのまま力が抜けたように倒れこんだ。

とっさに両手で支えようとして、二人して床に倒れこむ。

「マナ!目を醒まして!マナ!」

「華煉、マインドスナッチをそのまま拘束しておれ。」

そういうと清蘭様はマナの胸の真ん中に腕を突っ込み、闇の種子を取り除いた。

残されたのは穏やかな寝顔。闇の欠片も残っていないマナの魂。

「華煉、どこから話そうかのぉ」

そういうと清蘭様はポツリポツリと話し始めた。

私とマナの特異な関係と時間回帰、そして闇の種子の話を。
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