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闇と鎖と一つの焔

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  • 10/18/20:21

58th day

久々の遺跡外

マナに会いに行く。

火喰い鳥のナイフに戻された紅瑪瑙石の中の空間。

清蘭様がずっと術式を唱えている。

邪魔をしないようにそっと覗き込む。

翼は・・・・・五分の一ぐらい侵食されている。

目の下・・・・血の涙の跡が黒い模様のように見える。

肌の色がまた少し濃くなった。

清蘭様に言われて翼をじっと見る・・・・先端の風斬り羽根に混ざって細かい棘?

魔爪が生えかかっている。

泣いちゃダメ。泣いちゃダメ。

清蘭様に少しだけ力を貸して、私は元の身体に戻った。

「・・・ぅ・・・ぅう・・・マナ・・・」

身体に戻ったら抑えきれなかった。涙が流れて・・・止まらなくなった。

「どうして・・・・どうしてこんなことに・・・・」
 



◆             ◆             ◆             ◆


「どうして!どうしてこんなことになってるの!眞那!」

走ってきたカレンが慌てて火を消して、俺の方を振り返ると怒鳴った。
まぁ、確かに・・・俺が悪い。
いまいち火の使い方になれない。
昔は意識せずに扱えたから・・・・近くに布があると燃えるとか、手をかざすと火傷するとか・・・・どうにもぴんとこない。

今日俺がやってしまったのは・・・・・

「料理している時は目を離さないでっていったでしょ!私が来なかったら、今頃火事よ。もう・・・・今日の晩御飯どうするの?何か他にも食材ある?」

怒っているカレンが手に持っているのは煙を上げる真っ黒な鍋。
鍋の水がなくなっても火がささやきかけて来ない上に、自分で動かないと火が消えてくれないというのもついつい忘れてしまう。
料理というのはどうにも苦手だ。
食材・・・

「そういえば、こんな物を拾ったけど?」

そういって俺がみせたものを見て、ため息をつくカレン。
俺が山で拾ってきたものは少し大振りな卵3個ときのこが数種類。

火喰い鳥の里のある山の中。
焔霊たちの気配が多いこの場所で、俺が山にいくと何かが俺に語りかけてくる。
堕精したとはいえ、まだ少し力も残っているから、意識を集中すれば、焔霊たちの助けがなんとなく感じられる。
力に誘われるまま、山を進めば、いつも何かしらの収穫が得られた。
たまに近しい焔霊が俺の髪を引っ張ったり、服を引っ張ったりして、話しかけていく。
調子がいい時は声だって聞こえる。
だから・・・・俺はこの里でただ歩くだけで生きるのに困らない程度の援助が得られていた。

「これ、食える?」
「・・・・食べられるどころか・・・・年に数個しか見つからないバラガ鳥の卵に、薬膳効果のあるハリル茸、それに貴重なテティン茸・・・・・ハンターでさえ滅多に見つけられない高級食材よ。」
「そうなのか?」
「そうなの!・・・二人で分担しようっていったけど、眞那が食材調達係をして、私が料理係をするのが良さそうね。」

そういいながら、カレンは料理を始めた。
俺はその姿を見つめながら・・・・卵は鳥に悪いから10個ある中の1個だけを3箇所の巣からもらってきたこととか、茸はたくさん群生してたけど、どれが食べられるかわからなかったからちょっとだけしか持ちかえらなかったことなどを黙っておこうと思った。

カレンが茸を炒めながらふんわりと卵をいれて仕上げていく。
テーブルの上に並んだふんわりとしたパンはカレンが今日買ってきたものだ。

「料理できたよ。さ、食べよ。」

そういって振り向いたとき、少しだけ見えたカレンの胸元。
そこに見えたのは新たな刺青。
別の焔霊がカレンを守護する証。

「眞那、ご飯食べないの?」
「あ・・あぁ・・ちょっとぼうっとしてた。」
「温かいうちに食べよ。バラガの卵は本当に美味しいのよ。」

そういって笑うカレンはもう俺だけのものじゃない。

俺が堕精したと同時にカレンの胸にあった守護契約の刺青は消えてしまった。
堕精して生まれたばかりの火喰い鳥の民と、守護精霊が消失して守護のいない火喰い鳥の民。
だが、この里の結界の中にずっといるなら、守護契約など結ぶ必要はない。
二人でこの里で平和に過ごしたかった。
火喰い鳥の民と守護精霊の絆は強い。とても強いことを俺達は知っている。
だから、俺はカレンに新たな守護契約を結んで欲しくなかった。

それが許されなかったは、昨今のふもとの村との軋轢。
何人かの火喰い鳥の民が結界内で村人に襲われていた。
守護精霊がついていれば傷つくことなく村人から守られる。
だが、守護精霊がいない場合、どうしてもそばにいる焔霊が駆けつけるまでに時間がかかる。
焔霊達は里の守護を今まで以上に強くしたが、元々は魔に対抗する力を持つだけの精神体。
物質世界の悪意を持つ者たちに対処するには限界がある。

そうして、一人の火喰い鳥の民が片翼を切り落とされた。

今の里の状態は厳戒態勢で、小さな子どもは里から出ることが禁止。ある程度の年齢の者でも里に隣接する森以外は外出禁止。
守護精霊を持つものだけが少し離れた町へと行商に出ることが許されている。
(もちろん翼は隠しているし、守護精霊たちが強力な目くらましで赤い髪の色すら別の色にみせているらしい)
その行商も一度も里を離れた事のないような火喰い鳥の民にとっては危険な仕事で・・・
世慣れた者達(多くは世界を巡ってこの里に戻ってきて家庭を作った引退者達)のうち、壮年の者達は子どもから目を離せず、年老いた者たちでは町への往復にも時間がかかる。

そして、カレンが目をつけられた。
本来ならまだ引退もしていないぐらい若く、外の世界にも慣れており、子どももおらず、自由な者。
里の多くの者たちの意向にカレンは逆らえなかった。

二度目の成人儀礼。
特別に俺も立ち合わせてもらった。

俺よりもカレンに近いもの。
俺の代わりにカレンを守るもの。
カレンが死んだとき、俺には何も残らない。
カレンのすべてを俺から奪っていくものを選ぶ儀式。

堕精しなければ・・・・
守護契約を解除した焔霊として守護期間の記憶を消してしまえば・・・こんな辛い思いはしなくて済んだのにと何度も思った。
忘れる不幸と、そばにいるのに奪われる不幸・・・どちらがより不幸だったのだろう。

そうしてカレンが選んだのは・・・

「美味しそうだね。本当にカレンの料理は美味しそうだ。それに比べて眞那はまだ焔霊のときの癖が抜けないんだねぇ」
「緋魅?」
「緋魅、これだけ近かったら俺にも聞こえてるんだけど・・・」
「聞こえるように言ったからね。聞こえてくれないと困るよ。」

選んだ焔霊は俺の旧知の焔霊だった。
あまりにも近しくて、契約者にしか聞こえないはずの守護精霊の声が俺にも聞こえてしまうぐらいの・・・・。
こうなってからの俺達は3人で時間を共有しているようなものだ。

「俺だって、いつか料理の一つも出来るようになるさ。」
「そうさね。一回死んで生まれ変わりでもしたらうまくなるかもね。」
「緋魅ってば眞那に対しては辛らつね。」

くすくすとカレンが笑う。

「否定できないだろう?あの鍋を見たら。」

あまりにもごもっともで俺は食べることに集中することにした。
くそっ。緋魅の奴・・・・言いたい放題言いやがって。

「口で勝てないとなるとすぐに黙る。」
「うるさい。食事中に話しかけるな。」
「はいはい。黙りますよ。こうやって声を届けるのも大変なんだからね。」

カレンは笑いが止まらないようだ。
その笑いの中で、緋魅の気配が薄くなる。

「あ、おい。待てよ、緋魅」
『うるさいといったり、呼び止めたり忙しい男。何?』

俺は頭の中で言葉を構築する。
焔霊の力を失っていても、指向性と強い思念があれば、想いが伝わることを経験で俺は知っている。

『今日このあとカレンが眠るまで、家ごと結界で包んで中を見ないようにしてくれ』
『・・・・・・・・承知』

これはカレンも知らない、俺と緋魅との間の約束事。
俺とカレンは婚約していた。
俺が成人していないため(=成人儀礼を一つも受けていないため)、形の上での結婚はまだだったが、実質夫婦として暮らしている。
元焔霊の俺は緋魅がカレンを見守っているとその気配を感じてしまうが、夫婦ともなると、他者に四六時中見られているといろいろと不都合なこともあるわけで・・・。
俺が見られたくない時、緋魅は家ごと結界の中に置き、家の中は覗かないようにしてくれる。

今日、カレンが戻ってくる少し前に連絡があった。
カレンは明後日また町まで行かなくてはならない。
明後日の朝は早いから、明日の夜はゆっくりと休ませてあげないといけない。
町にいくとしばらく会えないから・・・・だから・・・・

「あぁ、おかしかった。ごちそうさま。緋魅と眞那ってある意味波長が合ってるよね。」
「・・・・・・そんなかわいくないことをいうのはこの口か?」
「ふぇ・・ごへんなひゃい・・・・」

俺はカレンの頬から手を放し、手早く食器を片付けた。
食器を洗い終えても、カレンはまだ痛そうに両頬を撫でている。

「眞那・・・ひどい・・・」

ちょっとだけ涙目になっているカレンをみて、やりすぎたかな?と思った。

「ごめん。痛かったか?ちょっとやりすぎた。」
「ほんとだよ。眞那ひどい。」

そういってじゃれついてくるカレンの頭を撫でながら・・・

「また・・・明後日行商隊が出るらしい。」
「え?」
「カレン、お前にも行って欲しいとさっき連絡があった。」

・・・伝えないといけないことを伝えた。

この瞬間がいつも一番つらい。
里に戻るまではいつも一緒にいたのに、またしばらく会えなくなってしまう。

「眞那」

俺を見上げるカレンの目が潤んでる。
行かせたくないのは俺も同じ。
だが、里の皆の説得に負けて守護契約を結んだのはカレンだ。
この小さな里では、皆が何かしらの役目を負わなくてはならない。
力ある者は力あるものなりの務めを果さなければならない。

「カレン、だから・・」

そのあとの言葉を耳元で囁く。
カレンの顔が赤くなる。耳まで赤くなって・・・俺の胸に顔をうずめる。

「いいだろ?」

そっと抱きしめながら俺が尋ねるとカレンはこくりと頷いた。
俺は軽く啄むように何度も口づけながら、そっとカレンの体を抱え上げ、そのまま寝室へと向かった。

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