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1021
「ラフィー、何つくってるの?」
「ちょ・・・ちょっと待って」
いつものようにラフィーが料理を作ってる。
どうやら今は手が離せないみたい。
とってもいい匂い。
・・・いままでに感じたことのない匂い
肉料理?それとも蟹?タラバ?
ううん、ちがう。
もちろん草やパンくずじゃないことだけは確か。
このやわらかい匂いはカレーでもない。
でも、とってもおいしそう。
『保存食にこんないい匂いのするものあったかしら?』
ラピスは首をかしげた。
覗き込んでみようかとも思ったけど、珍しくラフィーは真剣だ。
細かい作業の邪魔になって、このいい匂いが消えちゃうのはもったいない。
ラピスはうずうずしながらラフィーが返事をしてくれるのを待っていた。
ラフィーはさらにバタバタと動き始めた。
ときどきラピスのほうを振り返って
「ごめんね。もうちょっと待ってて!!」
というのが精一杯みたい。
どうやら料理は佳境のよう。
オーブンに火を入れて、何かよくわからないものをオーブンに入れていた。
オーブンに入れる一瞬、オーブン皿の上に乗っていた物が見えた。
なんだか茶色い塊。
それしかわからない。
─────あんなにいい匂いがしているのに・・・・ちょっと不気味ね。
─────でも、食べるのはきっとラフィーだから・・・いいか。
ラピスはいい匂いに包まれながら、おとなしく待っていた。
ようやくお皿をオーブンに入れてラフィーの手が空いたよう。
ラピスはふわりっとラフィーの前に立ってみた。
ラフィーはなんとなく疲れた顔をしている。
あれだけ、バタバタ走り回っていたら当然だろう。
「ねぇ・・・・何をつくってるの?」
「うん・・・あのね・・」
チンッ!!
「あっ!もう焼きあがっちゃった。ごめん。ラピス。もうちょっと待ってて!!」
うそーーーー!!
だって・・だって・・・まだオーブンにいれて1分も経ってないのよ!
1分も経ってないのに!!
ラピスは目を疑った。
オーブン皿には確かに茶色い物体が乗っていたのだ。
それをオーブンに入れたのだ。
なのに・・・なのに・・・・
出てきたオーブン皿の上に乗っていたものは 『白い』 のだ。
えぇえええええ。嘘ーーーーー!!
ラフィーは魔術師。
いままでだって驚くような技を使うこともあった。
でも、今回のは飛びっきりだ。
その白い塊が・・・ぶるぶると振るえはじめ・・・・
ふわふわしたいい匂いのする塊がパチパチっと目を開けた。
小さな丸い目はなんだか愛らしい。
目の下がもごもごもごっと動いたと思うと、パカッと口を開いた。
「ご命令を。ごちゅじんちゃま」
オーブン皿の上の白い白いふわふわした塊が口を開いた。
ラピスは口をパクパクさせて・・・・・
「ラフィーーーー!!!!」
と絶叫した。
ようやくラフィーが説明してくれた。
さっきからラフィーが作っていたもの。
あんなにいい匂いがしたのに・・・料理なんかじゃなかった。
新しい使い魔
もちろん魔力をもっているのでラピスを視ることもできるらしい。
しかもふわふわしててとってもいい匂い。
手足はないけど、ふわふわと浮き始めた。
最初は驚いたけど、なんだかかわいい。
おまけに・・・・これ・・・・パンくずだけで出来ているらしい。
貴重な保存食や肉を使わずに、余ったもので作ったとか。
「僕とラピスに絶対服従するんだよ。」
「ちょっとラフィー・・・絶対服従ってかわいそうじゃない?」
「こういう使い魔は役割をちゃんと決めてあげる方がアイデンティティがはっきりして、存在が安定するんだ。絶対服従ってしてあげるほうが、この子も長くこの世界に順応できるんだよ。」
そういうものなのかしら?
疑わしげにふわふわと漂う使い魔をみると、目をきらきらと輝かせてラピスの顔を覗き込んでくる。
「ご命令を。ごちゅじんちゃま♪」
か・・・かわいい。
かわいいけど、この子に何が出来るんだろう?
「ラフィー・・」
困ってしまってラフィーに話しかけたものの、ラフィーもなんだか困っている様子。
「うーーん。
まさか一発で成功すると思ってなかったから、このあとのことを考えてなかったんだよね。」
そんな無責任な・・・
でも、あまりにも目をきらきらさせている使い魔を見ると、何も言わないわけにはいかない。
「じゃあ・・・・ラフィーが疲れてるみたいだからラフィーの肩を叩いてあげてくれる?」
「ちょ・・・ちょっとラピス」
「いいじゃない。そのぐらい。」
白いふわふわはにっこり笑うと、
「わかりまちた。ごちゅじんちゃま」
といってふわふわっとラフィーのそばに行き、ラフィーの肩の上で弾み始めた。
ぽーん、ぽーんと弾んでいるものの、元はふわふわのパンくず。
重量がないのでまったく肩叩きになっていないらしい。
どうやら使い魔本人もそれがわかったらしく、一生懸命力んだ顔をしてぽーんぽーんと勢いをつけて弾み始めたが、一向に効果は見えない。
さらに力んだ顔をして、向きになって弾む使い魔。
だんだんペースも速くなる。
ぽーん ぽーん ぽんっぽんっぽんぽんぽんぽぽぽ ぼふっ!!ぷしゅーーーーーーーー!!
突然ぼふっという音がして、そのあと空気の抜けるような音がして、ラフィーとラピスの目の前でパンくずの使い魔は見る見る縮むとそのまま消えてしまった。
「あ・・・・」
「あ・・・・・・」
でも、もう遅い。
二人の目の前から使い魔は消えてしまった。
「ラピスがあんなこと命じるから」
「だって、ラフィーだって止めなかったじゃない」
二人で口げんかをして、それも一通りおさまり・・・・でも、消えた使い魔はもう帰ってこない。
かわいかったのにな・・・・
名前もつけてあげなかったな・・・・・
その後ラフィーがどれだけ再現しようとしても、二度と同じ使い魔を作ることは出来なかったという。
二十三番目のお題「服従」 1021 Rf
「ちょ・・・ちょっと待って」
いつものようにラフィーが料理を作ってる。
どうやら今は手が離せないみたい。
とってもいい匂い。
・・・いままでに感じたことのない匂い
肉料理?それとも蟹?タラバ?
ううん、ちがう。
もちろん草やパンくずじゃないことだけは確か。
このやわらかい匂いはカレーでもない。
でも、とってもおいしそう。
『保存食にこんないい匂いのするものあったかしら?』
ラピスは首をかしげた。
覗き込んでみようかとも思ったけど、珍しくラフィーは真剣だ。
細かい作業の邪魔になって、このいい匂いが消えちゃうのはもったいない。
ラピスはうずうずしながらラフィーが返事をしてくれるのを待っていた。
ラフィーはさらにバタバタと動き始めた。
ときどきラピスのほうを振り返って
「ごめんね。もうちょっと待ってて!!」
というのが精一杯みたい。
どうやら料理は佳境のよう。
オーブンに火を入れて、何かよくわからないものをオーブンに入れていた。
オーブンに入れる一瞬、オーブン皿の上に乗っていた物が見えた。
なんだか茶色い塊。
それしかわからない。
─────あんなにいい匂いがしているのに・・・・ちょっと不気味ね。
─────でも、食べるのはきっとラフィーだから・・・いいか。
ラピスはいい匂いに包まれながら、おとなしく待っていた。
ようやくお皿をオーブンに入れてラフィーの手が空いたよう。
ラピスはふわりっとラフィーの前に立ってみた。
ラフィーはなんとなく疲れた顔をしている。
あれだけ、バタバタ走り回っていたら当然だろう。
「ねぇ・・・・何をつくってるの?」
「うん・・・あのね・・」
チンッ!!
「あっ!もう焼きあがっちゃった。ごめん。ラピス。もうちょっと待ってて!!」
うそーーーー!!
だって・・だって・・・まだオーブンにいれて1分も経ってないのよ!
1分も経ってないのに!!
ラピスは目を疑った。
オーブン皿には確かに茶色い物体が乗っていたのだ。
それをオーブンに入れたのだ。
なのに・・・なのに・・・・
出てきたオーブン皿の上に乗っていたものは 『白い』 のだ。
えぇえええええ。嘘ーーーーー!!
ラフィーは魔術師。
いままでだって驚くような技を使うこともあった。
でも、今回のは飛びっきりだ。
その白い塊が・・・ぶるぶると振るえはじめ・・・・
ふわふわしたいい匂いのする塊がパチパチっと目を開けた。
小さな丸い目はなんだか愛らしい。
目の下がもごもごもごっと動いたと思うと、パカッと口を開いた。
「ご命令を。ごちゅじんちゃま」
オーブン皿の上の白い白いふわふわした塊が口を開いた。
ラピスは口をパクパクさせて・・・・・
「ラフィーーーー!!!!」
と絶叫した。
ようやくラフィーが説明してくれた。
さっきからラフィーが作っていたもの。
あんなにいい匂いがしたのに・・・料理なんかじゃなかった。
新しい使い魔
もちろん魔力をもっているのでラピスを視ることもできるらしい。
しかもふわふわしててとってもいい匂い。
手足はないけど、ふわふわと浮き始めた。
最初は驚いたけど、なんだかかわいい。
おまけに・・・・これ・・・・パンくずだけで出来ているらしい。
貴重な保存食や肉を使わずに、余ったもので作ったとか。
「僕とラピスに絶対服従するんだよ。」
「ちょっとラフィー・・・絶対服従ってかわいそうじゃない?」
「こういう使い魔は役割をちゃんと決めてあげる方がアイデンティティがはっきりして、存在が安定するんだ。絶対服従ってしてあげるほうが、この子も長くこの世界に順応できるんだよ。」
そういうものなのかしら?
疑わしげにふわふわと漂う使い魔をみると、目をきらきらと輝かせてラピスの顔を覗き込んでくる。
「ご命令を。ごちゅじんちゃま♪」
か・・・かわいい。
かわいいけど、この子に何が出来るんだろう?
「ラフィー・・」
困ってしまってラフィーに話しかけたものの、ラフィーもなんだか困っている様子。
「うーーん。
まさか一発で成功すると思ってなかったから、このあとのことを考えてなかったんだよね。」
そんな無責任な・・・
でも、あまりにも目をきらきらさせている使い魔を見ると、何も言わないわけにはいかない。
「じゃあ・・・・ラフィーが疲れてるみたいだからラフィーの肩を叩いてあげてくれる?」
「ちょ・・・ちょっとラピス」
「いいじゃない。そのぐらい。」
白いふわふわはにっこり笑うと、
「わかりまちた。ごちゅじんちゃま」
といってふわふわっとラフィーのそばに行き、ラフィーの肩の上で弾み始めた。
ぽーん、ぽーんと弾んでいるものの、元はふわふわのパンくず。
重量がないのでまったく肩叩きになっていないらしい。
どうやら使い魔本人もそれがわかったらしく、一生懸命力んだ顔をしてぽーんぽーんと勢いをつけて弾み始めたが、一向に効果は見えない。
さらに力んだ顔をして、向きになって弾む使い魔。
だんだんペースも速くなる。
ぽーん ぽーん ぽんっぽんっぽんぽんぽんぽぽぽ ぼふっ!!ぷしゅーーーーーーーー!!
突然ぼふっという音がして、そのあと空気の抜けるような音がして、ラフィーとラピスの目の前でパンくずの使い魔は見る見る縮むとそのまま消えてしまった。
「あ・・・・」
「あ・・・・・・」
でも、もう遅い。
二人の目の前から使い魔は消えてしまった。
「ラピスがあんなこと命じるから」
「だって、ラフィーだって止めなかったじゃない」
二人で口げんかをして、それも一通りおさまり・・・・でも、消えた使い魔はもう帰ってこない。
かわいかったのにな・・・・
名前もつけてあげなかったな・・・・・
その後ラフィーがどれだけ再現しようとしても、二度と同じ使い魔を作ることは出来なかったという。
二十三番目のお題「服従」 1021 Rf
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