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闇と鎖と一つの焔

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  • 03/29/05:36

1516

マナは今日も吹き矢の練習をしていた。
難しい武器だったがようやく思う方向に飛ぶようになった。



「ふっ!!」

ぐさっ!

吹き矢が肉を直撃する。


パチパチパチパチ

「ようやく安定して飛ぶようになったな。」



ずっと練習に付き合ってくれたベアが拍手してくれた。


「ありがとう。ベアのおかげだ。」

「これからは剣と吹き矢を持ち替えて戦うのか?」

「そうだな・・・・主武器は剣から変えるつもりはないが・・・時と場合によっては吹き矢も併用だな。」


剣を持てば前衛を、吹き矢を持てば後衛を狙える。
これで吹き矢、銃、弓矢を持つベアと同様前後衛共に狙える。
トーキチローの魔法もいうまでもないし・・・・。


「これでオールラウンドに攻撃できるようになる。ありがとう。」


俺は練習を終えることにして、吹き矢を軽く清掃して腰のパッチにしまった。


そろそろ料理の準備をはじめよう。
今日もみんなにおいしい料理を作って食べさせたい。


そう思っていた俺にベアが後ろから声をかけてきた。

「今度は俺につきあってくれないか?」





振り返るとベアが見慣れない剣を持っていた。

「ベアも剣を憶えるのか?」

こくり



・・・・確か前に聞いたことがある。
ベアの持ち主・・・今はこの島にいないスチールというやつは剣の名手だったらしい。
となると・・・それを見慣れているベアもそこそこ使えるはずだ。





「軽く実力が見たい。かかってきてくれ。」

俺は火喰い鳥のナイフを鞘から抜いた。




やはり剣はいい。
闘志が湧く。
体が熱くなる。
翼が火を噴くのを感じる。


だが、ベアが相手では火気厳禁。
俺は火気を出来るだけ抑えた。

「来い。」

ベアも剣を抜くと俺に飛び掛ってきた。






早い!
だが・・・・斬撃が軽い。・・・受け流すよりも跳ね飛ばしやすい。

これが普通の相手で1対3なら俺はベアを跳ね飛ばして次の敵に向かっただろう。

俺は知っている。
ここでベアを跳ね飛ばすとベアの思い通りなのだ。
跳ね飛ばしたあとの一瞬でベアは空中から吹き矢を飛ばしてくる。


だからこそ・・・・俺はあえてその軽い斬撃をやや強い力で受け止めた。
ベアが力を加えてくるのにあわせて俺の力も少しずつ増やす。


少しずつ少しずつ拮抗が崩れる。
俺のナイフが少しずつベアの頭に近づいて行く。
ベアは剣を両手で持って、俺のナイフを受け止めるだけで精一杯だ。
今ベアが力を抜いたら俺のナイフはベアを両断しただろう。

俺は大きく後ろに跳び退った。

ベアが思わずバランスを崩す。

その瞬間、俺はベアの剣を叩き落した。







「ちょっと膂力が足りないな。まともに受け止めては力負けする。
 剣と剣がぶつかったらすぐ引くほうがいい。
 俊敏な動作を生かすなら短剣かレイピアの方がいいかもしれない。」

だが、ベアはスチールのことを思い出しているのか、どうしても剣がいいらしい。


「そうだな・・・・それなら俺のように長剣と短剣の間のような曲刀を使ってはどうだ?」

そういってみてもベアは首を縦には振らなかった。
あくまで長平剣を使いたいようだ。


「マナ」
「なんだ?」
「マナこそもっと長い剣を使わないのか?その方が合うだろう?」




確かに。




俺の戦闘スタイルも少しずつ変わっている。


最初のうちは翼を使って空から攪乱、上から剣で斬りつけ、すぐに引く。
そういった戦闘スタイルだった。
その戦法にはベアに勧めたような中途半端な剣が使いやすい。
俺が使っている火喰い鳥のナイフがそれに当たる。


だが、最近はベアとトーキチローをかばうため、しっかりと足を踏みしめ
剣と剣、剣と槍、剣と斧とのぶつかり合いをしている。
そういった戦い方の場合、長平剣の方が向いているのだ。


「ベアのいうことはもっともなんだがな・・・」

おれは火喰い鳥のナイフをじっと見つめると、ナイフの柄にそっと口づけた。


「これは・・・俺の宝物。ぜったいに手放せない物なんだ。
 悪いな。

 俺はもっともっと強い剣を持つべきなんだろうし、
 その方がみんなも楽が出来ると思うんだが・・
 ・・・・このナイフだけは手放すつもりはないんだ。」





たとえどれほどよい業物を与えられても
どれほどすごい武器を目の前に並べられても・・・

もしも一本だけ武器を選べといわれたら・・・俺が選ぶ武器はこれしかない。

紅瑪瑙石のついたナイフ。
俺の命よりも大切な物。



  華煉  俺の守護聖霊



火喰い鳥の里の結界から遠く離れたこの場所では・・・・
お前なくして生きることを俺は許されていない。


いつか・・・ベアとトーキチローにも話さなければならない。
俺の特異体質のこと。
そして、俺が常にあいつに守られていることを。


「こればっかりはお互い様だな。」


だが、今日話せるのはここまでだ。


きっと周りから見ると・・自分のナイフに語りかけたり、口づけている俺は、
相当な変わり者に見られているんだろうな。

俺はちょっとだけ苦笑した。



二十九人目のお題:「宝物」 1516 マインドスナッチ・・・すなわち・・・俺だ。
PMのホワイトベアにも協力してもらった。いつもつきあわせてすまない。
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