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1516(華煉)
三十人目のお題:「終幕」 1516 マインドスナッチ サブキャラ 華煉
華煉は花火を縒っていた。
さすがにこの遺跡に来るだけの変わり者達。
これまでに作った20本以上の花火はどれもこれも変わった光を放つ花火になった。
─────これなら・・・”あれ”と交換でも十分過ぎる出来だわ。
華煉は満足していた。
華煉がどうしても欲しかった”あれ”
これでようやく手に入れることが出来る。
間もなく約束した聖霊がやってくるだろう。
「本当にお前さんも変わりもんさね」
「そうかしら?」
「火喰い鳥の民に加担する火霊、焔霊は、そうめずらしくはねぇさ。
やつらは最高の魔力媒体じゃからな。
あいつらを守護していると俺たち精霊の力も異様なほど伸びる。それに奴らが死んだ時には・・」
「やめて頂戴!!それ以上言ったら本気で怒るわよ!」
華煉の髪が逆巻く。
一気にあたりの温度が上昇する。
「おおっ。剣呑。剣呑。
しかし、お前さんほどの焔霊にそこまで言わせるとはなぁ。
お前さんが変わり者なのか・・・・そうじゃないなら」
「そうじゃないなら?」
「よほどその男がえれぇ器なのか・・・・
そんなにえぇ器なんじゃったら、ちょっと試食してみたいもんじゃな。
ほっほっほっ。
おおっ。剣呑。剣呑。」
華煉のオーラが燃え盛るのを見て、聖霊は少し後退りした。
「ほっほっほ。冗談じゃて。ほれ、お待ちかねの”あれ”じゃ。」
そういうと聖霊の手の上に小さな水晶球が現れた。
中にはたっぷり液体が入っている。
何の液体なのかわからないが、かすかに光を放っているのは間違いないようだ。
「そんなにいっぱい!?・・・・・・いいの??」
過去の取引の例を聞いた限りでは・・・・どんなに見事な花火であっても、
指一本分ぐらいの小さな瓶に一本分入っているぐらいしかもらえなかったらしい。
この水晶玉は両手でちょうど包み込めるぐらいの大きさだ。
「構わんよ。この花火はよく出来ている。
しかも一つ一つがいろんな色彩で輝くようだ。
火をつけなくても見ればわかる。一本一本のオーラが違う。
中にはハズレもあるかもしれんが、それもまた一興よ。ほっほっほ。」
華煉の渡す花火を満足げに眺めると、聖霊は水晶球を投げてよこした。
聖霊はその使い方を教えてくれる。
「よいかの?使い方は簡単じゃ。
この液体を夢の回廊を使用して現実世界におる何者かに託す。
あとは現実世界でこの液体を振りまいてもらえばそれだけでOKじゃよ。
一回の使用量はほんの少しで良い。いつも儂が一回の取引で出す分量は知っておるかの?」
華煉がこくりと頷くのをみて言葉を続ける。
「あれで、だいたい5回分じゃ。そういうたらこれがどれだけ使えるかわかるじゃろ?
もちろん1回に使う量を多くすれば多くするほど術の効力は強くなる。
だがな・・・・その分、現実世界の術者にも、応える精霊にも負担は重くなる。
何事もほどほどが肝要じゃよ。わかったな。」
華煉は再びこくりと頷いた。
「ふむ。今回は良い取引じゃったのぉ・・・・。
皆にも見せてやらねばなるまいて。
これから儂は花火大会の準備で忙しゅうなる。何ぞ聞きたいことがあったら今のうちじゃぞ。」
・・・・華煉は思い切って聞いてみた。
「普通の人間なら・・・・・何回分ぐらい一回に使っても耐えられるの?
それと・・・・・私なら何回分ぐらい一回に使っても耐えられるの?」
と。
それを聞いた聖霊はとたんに顔をしかめた。
「おぬし・・・・・何を聞いておったのじゃ。1回分は1回分じゃ。それ以上など保証できんわ。」
「でも、使えば使うほど、術の効力は強くなるって・・・」
聖霊はため息をつく。
「これは余計なことを言うてしもうたようじゃの。
だがのぉ・・・・・おぬし、これをあの火喰い鳥の民に渡すつもりなのじゃろ?」
華煉はこくりとまた頷いた。
「火喰い鳥の民ならばなおのことじゃ。やつらの体は良質の魔力媒体。
普通の人間の一回分を使ってもそれ以上に強い効き目をあらわすじゃろうて。
おそらく・・・・普通の人間の一回分でも空間をつなげるぐらいは軽くやってみせるじゃろうよ。
やめておけ。一回分以上は儂でもどうなってしまうのかわからん。」
それだけ言い残すと聖霊は立ち去ってしまった。
あの様子ではもう二度と取引してもらえないかもしれない。
華煉はため息をついた。
華煉がどうしても欲しかった”あれ”
それは・・・・・・・・精霊界と現実世界を一時的に近づける特殊な結界を作るための聖水。
聞いた話ではどれほど魔法センスのない人間に託したとしても、
このクスリを使えば精霊の声を現実世界に届けるぐらいのことは出来るらしい。
この薬品の力を使わなくても、火喰い鳥のナイフについた紅瑪瑙石とマナと言う魔法媒体を使えば、
華煉の力だけでも声ぐらい届けることは出来る。
今までも一部のマナの友人には何回か華煉からの挨拶を届けている。
だが、あの方法では華煉の力を大量に消費する。
空間を越えて力を作用させるのはそれほどに大変なことなのだ。
長時間にわたって現実世界に華煉の力を及ぼす方法は二つ。
一つは華煉がマナに憑依すること。
マナに憑依すれば、もちろんマナの周囲の人たちと話すことぐらいは出来るだろう。
だが、その間マナの精神は眠った状態になる。
華煉はマナと一緒に現実世界でいろんな人といろんな話をしたかった。
もう一つの方法がこの液体を使う方法。
これとマナの特異体質があれば、華煉の分身ぐらいは現実世界に送れるかもしれない。
おそらく掌に乗るぐらいの体のサイズで、しかも半ば透過したような状態かもしれないが・・・
それでも華煉は現実世界を知る必要があった。
火喰い鳥の民は良質な魔力媒体・・・そして守護する火喰い鳥の民が・・・・
華煉は考えたくなかった。
今はまだ、マナとの終わりを考えたくはない。
華煉とマナの守護契約はまだ始まって間もない。
まだ終わりを考えるときではない。
それでも・・・いつか必ずやって来る終焉のときのために・・・・。
華煉は血の涙を流す。
終幕が少しでも先であることを祈りながら。
それでもこの液体をマナに渡さなければならない。
いつか来るであろう終わりのときのために。
華煉は現実世界を知らなければならないのだ。
三十人目のお題:「終幕」 1516 マインドスナッチ サブキャラ 華煉
華煉は花火を縒っていた。
さすがにこの遺跡に来るだけの変わり者達。
これまでに作った20本以上の花火はどれもこれも変わった光を放つ花火になった。
─────これなら・・・”あれ”と交換でも十分過ぎる出来だわ。
華煉は満足していた。
華煉がどうしても欲しかった”あれ”
これでようやく手に入れることが出来る。
間もなく約束した聖霊がやってくるだろう。
「本当にお前さんも変わりもんさね」
「そうかしら?」
「火喰い鳥の民に加担する火霊、焔霊は、そうめずらしくはねぇさ。
やつらは最高の魔力媒体じゃからな。
あいつらを守護していると俺たち精霊の力も異様なほど伸びる。それに奴らが死んだ時には・・」
「やめて頂戴!!それ以上言ったら本気で怒るわよ!」
華煉の髪が逆巻く。
一気にあたりの温度が上昇する。
「おおっ。剣呑。剣呑。
しかし、お前さんほどの焔霊にそこまで言わせるとはなぁ。
お前さんが変わり者なのか・・・・そうじゃないなら」
「そうじゃないなら?」
「よほどその男がえれぇ器なのか・・・・
そんなにえぇ器なんじゃったら、ちょっと試食してみたいもんじゃな。
ほっほっほっ。
おおっ。剣呑。剣呑。」
華煉のオーラが燃え盛るのを見て、聖霊は少し後退りした。
「ほっほっほ。冗談じゃて。ほれ、お待ちかねの”あれ”じゃ。」
そういうと聖霊の手の上に小さな水晶球が現れた。
中にはたっぷり液体が入っている。
何の液体なのかわからないが、かすかに光を放っているのは間違いないようだ。
「そんなにいっぱい!?・・・・・・いいの??」
過去の取引の例を聞いた限りでは・・・・どんなに見事な花火であっても、
指一本分ぐらいの小さな瓶に一本分入っているぐらいしかもらえなかったらしい。
この水晶玉は両手でちょうど包み込めるぐらいの大きさだ。
「構わんよ。この花火はよく出来ている。
しかも一つ一つがいろんな色彩で輝くようだ。
火をつけなくても見ればわかる。一本一本のオーラが違う。
中にはハズレもあるかもしれんが、それもまた一興よ。ほっほっほ。」
華煉の渡す花火を満足げに眺めると、聖霊は水晶球を投げてよこした。
聖霊はその使い方を教えてくれる。
「よいかの?使い方は簡単じゃ。
この液体を夢の回廊を使用して現実世界におる何者かに託す。
あとは現実世界でこの液体を振りまいてもらえばそれだけでOKじゃよ。
一回の使用量はほんの少しで良い。いつも儂が一回の取引で出す分量は知っておるかの?」
華煉がこくりと頷くのをみて言葉を続ける。
「あれで、だいたい5回分じゃ。そういうたらこれがどれだけ使えるかわかるじゃろ?
もちろん1回に使う量を多くすれば多くするほど術の効力は強くなる。
だがな・・・・その分、現実世界の術者にも、応える精霊にも負担は重くなる。
何事もほどほどが肝要じゃよ。わかったな。」
華煉は再びこくりと頷いた。
「ふむ。今回は良い取引じゃったのぉ・・・・。
皆にも見せてやらねばなるまいて。
これから儂は花火大会の準備で忙しゅうなる。何ぞ聞きたいことがあったら今のうちじゃぞ。」
・・・・華煉は思い切って聞いてみた。
「普通の人間なら・・・・・何回分ぐらい一回に使っても耐えられるの?
それと・・・・・私なら何回分ぐらい一回に使っても耐えられるの?」
と。
それを聞いた聖霊はとたんに顔をしかめた。
「おぬし・・・・・何を聞いておったのじゃ。1回分は1回分じゃ。それ以上など保証できんわ。」
「でも、使えば使うほど、術の効力は強くなるって・・・」
聖霊はため息をつく。
「これは余計なことを言うてしもうたようじゃの。
だがのぉ・・・・・おぬし、これをあの火喰い鳥の民に渡すつもりなのじゃろ?」
華煉はこくりとまた頷いた。
「火喰い鳥の民ならばなおのことじゃ。やつらの体は良質の魔力媒体。
普通の人間の一回分を使ってもそれ以上に強い効き目をあらわすじゃろうて。
おそらく・・・・普通の人間の一回分でも空間をつなげるぐらいは軽くやってみせるじゃろうよ。
やめておけ。一回分以上は儂でもどうなってしまうのかわからん。」
それだけ言い残すと聖霊は立ち去ってしまった。
あの様子ではもう二度と取引してもらえないかもしれない。
華煉はため息をついた。
華煉がどうしても欲しかった”あれ”
それは・・・・・・・・精霊界と現実世界を一時的に近づける特殊な結界を作るための聖水。
聞いた話ではどれほど魔法センスのない人間に託したとしても、
このクスリを使えば精霊の声を現実世界に届けるぐらいのことは出来るらしい。
この薬品の力を使わなくても、火喰い鳥のナイフについた紅瑪瑙石とマナと言う魔法媒体を使えば、
華煉の力だけでも声ぐらい届けることは出来る。
今までも一部のマナの友人には何回か華煉からの挨拶を届けている。
だが、あの方法では華煉の力を大量に消費する。
空間を越えて力を作用させるのはそれほどに大変なことなのだ。
長時間にわたって現実世界に華煉の力を及ぼす方法は二つ。
一つは華煉がマナに憑依すること。
マナに憑依すれば、もちろんマナの周囲の人たちと話すことぐらいは出来るだろう。
だが、その間マナの精神は眠った状態になる。
華煉はマナと一緒に現実世界でいろんな人といろんな話をしたかった。
もう一つの方法がこの液体を使う方法。
これとマナの特異体質があれば、華煉の分身ぐらいは現実世界に送れるかもしれない。
おそらく掌に乗るぐらいの体のサイズで、しかも半ば透過したような状態かもしれないが・・・
それでも華煉は現実世界を知る必要があった。
火喰い鳥の民は良質な魔力媒体・・・そして守護する火喰い鳥の民が・・・・
華煉は考えたくなかった。
今はまだ、マナとの終わりを考えたくはない。
華煉とマナの守護契約はまだ始まって間もない。
まだ終わりを考えるときではない。
それでも・・・いつか必ずやって来る終焉のときのために・・・・。
華煉は血の涙を流す。
終幕が少しでも先であることを祈りながら。
それでもこの液体をマナに渡さなければならない。
いつか来るであろう終わりのときのために。
華煉は現実世界を知らなければならないのだ。
三十人目のお題:「終幕」 1516 マインドスナッチ サブキャラ 華煉
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