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25thday
この前の遺跡外・・・灯明祭のときはあんなに楽しそうだったのに。
俺たちは今、この先にいるビーバーとの戦いに備えて一人ずつ分かれて行動している。
ビーバー戦に向かう者はソロで、向かわない者は臨時のパーティを組んで近くで待機。
俺は誇り高いビーバーに会うのを楽しみにしていたこともあってソロだ。
ハーカとベアと別れて一人になったあと、華煉は小妖精程度の大きさで俺の肩の上に顕現している。
俺が単独だと何が起こるかわからないから、ということらしい。
だが、顕現してからもほとんど何も話さずにずっと考え事をしているようだ。
思いつめた表情をしているように見える。
普段の華煉なら心配事があっても俺に悟られないように何事もないような顔を作っていることが多い。
こんな風に考え込んでいる華煉を見るのは久しぶりだ。
くやしいことに華煉の心配事というのは大抵俺がらみで、おまけに俺に相談されても難しすぎてわからないことが多い。
だから、華煉は他の精霊たちに相談を持ちかけたりしているらしい。
この島にいる間も華煉の空間に他の精霊たちが訪れたりしていたようだし。
こんな風に考え込んでいるのも珍しいが、きっとそのうち他の精霊たちに相談して、そしていつもの華煉に戻るのだろう。
だが・・・・少なくとも今はこの沈黙で気詰まりする。
24th day(フルバージョン)
二つの道(後編) (今回の日記は23日目の続編で場所はまだ遺跡外です)
昔々の物語
小さな火の精が人間の女の子に恋をしました。
火の精は人間に化けて女の子にプロポーズ。
二人は結婚して仲良く暮らしていました。
やがて女の子は赤ちゃんを授かりました。
ところが火の精の子どもはやっぱり火の精で・・・
女の子はおなかの子どもの火に耐えられず焼け死んでしまいました。
残された火の精は哀しくて、
泣いて泣いて・・・泣きながら神様にお願いしました。
「彼女を返して下さい。僕は何でもします。」
大泣きする火の精は少しずつ自分の涙で消されて今にも消えそうでした。
かわいそうに思った神様は火の精に言いました。
「一度死んだ者は戻ってこない。
だけど、一度だけ彼女を生まれ変わらせてあげよう。
そのかわりに君はもう二度と火の精には戻れないよ。
それに君の姿も変わる。
彼女は君のことを憶えていない。
それでも構わないかい?」
火の精は答えました。
「かまいません。僕は必ず彼女をもう一度見つけます。」
神様が力を揮うと遠くの方で赤ん坊の声がしました。
そして火の精の姿はみるみる変わって、彼は炎の翼を持つ不思議な人に変わりました。
「彼女を見つけてごらん。今度こそ彼女との間になら子どもも授かるよ。
ただし、間違えると君の選んだ人はまた子どもと共に死んでしまうかもしれない。
絶対に間違えてはいけないよ。」
そういい残して神様は消えました。
彼は一人探しました。
彼と神様が出会った日に生まれた女の子。
彼の愛する彼女の生まれ変わりを。
やがて彼は一人の女の子に出会います。
彼女こそ愛した人の生まれ変わりに違いない!
彼はそう思って女の子にプロポーズ。
彼の姿におびえていた彼女も、やがて彼に惹かれ、二人は結婚しました。
二人の間にはなかなか子どもを授かりませんでした。
彼は今の彼女をとても愛していました。
もしも彼女があの女の子の生まれ変わりじゃなかったら・・・
彼は彼女を失うのが怖かった。
ある日彼女は尋ねます。
「貴方は子どもが嫌いなの?」
彼はすべてを打ち明けます。
昔の女の子とのこと。
神様の話。
彼女を見つけたこと
そして、今の彼女をとても深く深く愛していることを。
彼女はとても驚きました。
彼は自分が生まれたときから愛する人を探していた。
昔の女の子にとても嫉妬しました。
でも彼が今の自分をとてもとても愛してくれていることも知りました。
生まれたときから彼に出会うために生きている女性がいる。
その女性が自分以外だとは思えない。
彼女は決意します。
そして、二人は子どもを授かりました。
二人はとてもとても不安でした。
やがて子どもが生まれる日を迎えました。
彼は彼女の手を握り、彼女は彼の手を握り、そのときを迎えました。
生まれたのは小さなオレンジの卵
彼女こそあの女の子の生まれ変わりでした。
卵から生まれたのは炎の翼を持つ有翼種の女の子。
二人はその後も多くの娘を授かりました。
その娘達が普通の人と結婚して生まれた子供たちも炎の翼を持つ有翼種でした。
こうして強い炎の力を持った火喰い鳥の民が生まれましたとさ。
火喰い鳥の里に伝わるおとぎ話
23th day(フルバージョン)
22th day
男はイガラシと名乗った。
そして・・・男がその手に握る物───────火の宝玉
そう。俺たちはあれを奪うためにやってきた。
新しい剣は間に合わなかった。
・・・それはすなわち目の前の男が火喰い鳥のナイフで最後に切り結ぶ相手ということ。
このナイフに捧げる手向け・・・これ以上ふさわしい相手はいないだろう。
21th day
たいした広さじゃないが、荷物を置くのには十分だ。
華煉も喜んでいる。
固定の場所が決まると結界を強化しやすいらしい。
どうやら日々俺の隠れ家に行っているようだ。
俺は昨日のことを思い出した。
華煉に殴られて、闘技大会の相手にとんでもない伝言を頼まれかけて・・・俺は今までの悩みを一瞬忘れていた。
これも華煉の気遣いだったのかもしれない。
そんな華煉に俺は聞きたくて聞けないことがあった。
「なぁ、華煉」
「何?」
俺は思い切って聞いてみた。
「火喰い鳥のナイフを手放して新しい剣に紅瑪瑙石を移植したいんだが・・」
20th day
遺跡外にいた間は華煉が気を遣ってくれたので、会うことがなかった。
俺も遺跡外では吹き矢を使っていたし、本当に会うことがなかった。
だが、せっかくもらった時間内に俺は迷いを断ち切れなかった。
どうするべきか悩みつつ、また遺跡内に戻ってきた。
俺はここで今必要とされている。
だから、悩んでいても行くしかない。
そして俺は吹き矢を火喰い鳥のナイフに持ち替える。
俺の左肩に暖かい気配。
暖かい?
暖かいを超えて熱い!
「華煉!」
「マナ、ちょっと話があるから寝てくれない!」
なぜかわからないが怒っている。
こんなに怒っている華煉は久しぶりに見た。
こういう時は従うに限る。
今は遺跡内に移動してきたばかり。
まだ、トーキチローとベアとも合流を果たしていない。
俺はなんだかわからないまま、軽く眠ることにした。
いつものように華煉にもらったお札を燃やして、香の結界を張ると俺は腰を落として眠りについた。