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540
「マスター・フィーア、どうかなされましたか?」
ヘイズが心配そうな声で尋ねてくる。
「ううん、なんでもないよ。そんなに変な顔してたかな?」
にっこり笑ってごまかした。ヘイズに心配かけるわけにはいかない。
今ちょうどユハが料理中。
フィーアは考え事をしながらユハのほうを見ていた。
でも・・・ヘイズが心配そうにたずねてきたと言うことは、
きっと考えていたことが顔に出ていたんだろう。
ヘイズよりも気の利くユハは自分が見られていたことに気づいていたに違いない。
「おまたせ」
にっこり笑ってユハが料理を持ってくる。
ユハ特製の野菜バター炒め
これはいつ食べてもおいしい。
フィーアも大好きだ。
でもついつい言ってしまう・・・・
「どうせなら肉野菜炒めが食べたい」
ユハは困った顔をしている。
そりゃそうよね。この前鳩のお肉で丸焼きを作ってもらったばかり。
あとは保存食といつもの草しかない。
手持ちの食材の中ではベストの料理をしてくれたと思っている。
でもなんとなくユハに八つ当たりしたい気分だったのだ。
ヘイズが戻ってきてから、フィーアはずっとヘイズと一緒。
そのフィーアをかばうように、最近はずっとユハが前に出て戦ってくれている。
より一層気遣ってくれているのもわかる。
でも・・・・
「イタッ! フィーア、何?」
なんだかイライラして、ユハを叩いてしまった。
ユハが私を気遣ってくれるのはわかる。
いろいろ世話をしてくれて、いつもそばにいてくれる。
でも・・・でも・・・・
どんどんイライラして、ふつふつと闘志がわいてきた。
これをこのまま放置することなんて出来ない。
ここは一つ、がつんと言っておかなきゃ!
不穏な気配をかぎつけたのか・・・ヘイズはそ~~っとフィーアから距離をとった。
「ユハ!!」
いきなり怒鳴られてユハはきょとんとしている。
なぜかフィーアはものすごく怒っているようだ。
こんなに燃えているフィーアをみるのは久々だ。
「フィーア・・・何?」
「何じゃないわよ!
いい?
ユハが私のこと気遣ってくれているのはありがたいと思っているわ。
いつだって私の盾になってくれるし。
料理や買出しその他諸々・・・ユハがいてくれるおかげでとってもとっても助かっているわよ!
だけどね!
だけどね!!」
フィーアの顔が真っ赤になっていく。
話しているうちにますます興奮してきたらしい。
こんなに燃えているフィーアをみるのは久しぶりだ。
さすがのユハも思わず、1,2歩後ろへと下がる・・・・
フィーアはものすごい剣幕でびしっと指をさし、こう叫んだ!
「いくら健康にいいからって青汁・ハイパーミックスはどうかと思うの!!!」
食べ物の恨みは恐ろしい。
フィーア=セラフィスト
命が惜しければ、今の彼女に対して「肉なし」は禁句だ
十五人目のお題「闘志」 540 フィーア=セラフィスト(+サブキャラ ユハ&ヘイズ)
494
安らぎの時間を迎える。
いつもならなんとなく楽しい気持ちになる時間なのだが、今日はため息しか出ない。
───────そろそろ引退かしらねぇ
まだまだやれると思ってこの島にやってきた。
今でもまだまだやれるつもりだ。
だけど、最近若い人たちと話していると、ちょっとしたギャップを感じなくもない。
意外とこの島には学生が多い。
彼らから見れば私など母親ぐらいの年齢だろう。
─────限界とは思わないけど
魔術も舞踊も負ける気はしない。
円熟味を増してこその技もある。
それに料理や付加・・・若い者では出し切れない味がある。
─────そうさ。まだまだ私は限界じゃない。それを証明して見せようじゃないか!
ピーチはお茶の道具を片付け、外に出ると、自らの魔力を集中し始めた。
────こんな風に自分の力を試すのは久しぶりさね。
右手と左手に持った二つの魔石に力を篭める。
集中する・・・集中する・・・
やがて、ピーチの頭上に魔力球が形成され始める。
魔力球は次第に大きく・・大きくなっていく・・・
やまねこは扉を叩く音に気づいて、宿営地のドアを開けた。
そこには疲れ切って四つんばいになってぜいぜいと肩で息をするピーチがいた。
「ど・・・・どうしたにゃあ?なにかあったにゃあ?」
だがピーチは息も絶え絶えですぐには答えることが出来ない。
ようやく、声が出るようになったとき・・・
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・やっぱ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・年には・・・勝てないねぇ・・・・・」
と呟いた。
そう、ピーチは限界を感じていた。
自分の魔力に対してではない。
自分の脚力に。
巨大な魔力球を作り上げ、それを一気に放つ。
巨大な爆発音とともに近くの山が大きく形を変える。
自分の魔力は昔以上に冴えわたり、限界などまったく無いように思えた。
自分の戦闘能力に対するゆるぎない自信。
それを久々に確認した。
だが・・・昔なら・・・・爆発音に驚く人々がやってくる前に全力で走り去れたものだ。
山に巨大なクレーターを穿ち、形を変えた責任などとれようはずがない。
逃げるが勝ちさね!
だが、さすがにこの年で全力疾走は厳しすぎた。
足はもつれるわ、息はあがるわ・・・。
最後には魔術や呪術を使って自分の姿を消してようやくその場から去ることが出来た。
────これからは人に見られては困るようなことは控えないといけないねぇ
自分の戦闘能力に限界は無い。
だが、自分の逃げ足は昔ほどの冴えは無いようだ。
ピーチは半ば満足、半ば残念に思いながら、そのまま眠りについた。
翌朝・・・・
大きく形を変えた山を見て驚く人々に混ざって、ピーチも驚いてみせた。
逃げ足は弱っていても、演技力は向上している。
白を切る能力も年とともに円熟味を増している。
─────これなら・・・無理に逃げなくてもなんとかなったかも。
一週間ほどたって遺跡のあるエリアでも山の大陥没が見られた。
驚く人々の輪の中に、ピンクの髪にツインテール、フリフリの魔法衣を着た熟女がいたようだが、
山を変えた力の持ち主は誰なのか未だ不明のままである。
十四人目のお題「限界」 494 ピーチ・チャイム
403
ティル坊とセレ兄の様子がおかしい。
何かこそこそして2人で話し合っている。
「何か面白いことでも?」
と声をかけると2人してあわててバタバタと何かを隠す。
「なんでもない!なんでもないよ」
「ああ、大したことはない」
・・・・・・・・・へたくそな演技
ストレートに問い詰めようと思った。
2人が必死になって隠そうとしているので、余計に問い詰めてやろうと思った。
だがそのとき邪魔が入った。
「サグラドはん、いらっしゃる~?」
誰かが尋ねてきたらしい。
舌打ちしてその場を離れ・・・・・・・すっかり忘れていた。
ティル坊とセレ兄の様子がまたおかしい。
そういえば、少し前にも同じようなことがあったのに、聞き損ねていた。
今度こそ2人を問い詰めようと思った。
「何を2人でこそこそと・・」
「危ない!!」
突然後方から歩行小岩が襲い掛かってきた。
「ちぃ!」
──────ぶっ飛ばしてやる!!
そのまま戦闘が始まり・・・・・またも忘れてしまった。
ティル坊とセレ兄の様子がまたおかしい。
今度はふたりで何やら目配せしあっている。
どっちが先に切り出すか押し付けあっているような感じだ。
こういうすっきりしない空気はイライラする。
「ふたりとも私に何か隠してないか?」
問い詰めると二人そろって首を横に振る。
「そんなことないよ」
「隠し事などするわけないじゃないか」
またしてもへたくそな演技。目を見ればバレバレなんだよ。
「あのな・・・」
「あれ?ラズさんだ」
振り返ると旧知の友人がそこに立っている。
遺跡を別々に歩んでいると滅多に会えない。
そんな彼女が来てくれたのに、いつも一緒のPMを責める余裕などない。
またしても、機を逸してしまった。
ティル坊とセレ兄の様子が今日もおかしい。
今日こそは2人にちゃんと話をしよう。
そうおもって私が口を開く前に・・・
「見せたい物があるんだ。」
ティル坊が切り出した。どうやら2人も私に話す気になったらしい。
今まで2人がこそこそ隠していたもの。
上等!見せてもらおうじゃないの!
・・・・見せてもらった。
2人が隠していたもの。
「ティル坊が一生懸命作ったんだ。俺も少し手伝ったけどな」
「どう?」
この2人どこまで本気なんだ。
これはネタか?
あたしは怒るべきなのか?
2人から・・・というか主にはティル坊からのプレゼント。
よくよくみるとティル坊の指は絆創膏でいっぱいだ。
きっと慣れない作業で手をいっぱい怪我したんだろう。
それだけ見ていると、とてもからかうためにやったとは思えない。
だが・・・・・
ハート柄でひらひらのレースがついたピンクのエプロンを眺めながら、あたしは絶句した。
十三人目のお題「演技」 403 ペリィト・サグラド
349
いつものことだ。
周りの人が奇異の目で見つめる。
この島にやってきた奇特な人間達からみてもシャラザの風貌は異様に見えるのだろう。
異形ではない。
むしろ姿かたちは整っているほうだ。
もっともっと異形なものもこの島にはたくさんいるだろう。
異形であっても心身が健康的な者は受け入れられる。
シャラザのまとう空気は狂気。
微笑する口からもこぼれるどす黒い血。
体からにじみ出る狂気の元は弟への偏執愛
ただ、弟に良い生活をさせてあげたい。
純粋ながら屈折した愛情。
姉である自分への偏見が弟へと向かおうとしたとき、シャラザは牙をむく。
たとえ始終血を吐き続けていても、これほどの狂気がなければ・・・
弟への偏執があったとしても、見た目が健康的であったならば・・・・
だが、シャラザの体とまとう空気は、人々に畏怖の気持ちを起こさせる。
畏怖と血と狂気
この島の冒険者達をも退ける何か
一部の冒険者達を魅了する狂気
シャハラザード・・・・・・彼女がどこへ向かうのか、今はまだ誰も知らない。
十ニ人目のお題「狂気」 349 シャハラザード
284
この島にいる誰もが受け取った招待状
人によって受け取った形が違うこの招待状にスズの場合はおまけがついていた。
招待状を運んできた郵便配達人がこういったときは驚いた。
『実は・・・もう一通 あなたにだけメッセージカードがあるんです』
世界中の人に送られた招待状。スズにだけ渡された一枚のカード
『13日目の戦闘終了後
島で一番気持ちよく酒の飲める場所で待っている』
島で一番気持ちよく酒の飲める場所・・・
スズはこのカードを見て島にいく決意をさらに固めた。
13日目の戦闘が終わり・・・スズたちは遺跡外へと出てきた。
もしかしたら遺跡の中かもしれない。
だけど、遺跡の中で会える確率はものすごく低い。
だから・・・・きっと遺跡外だ。
10日目を過ぎる頃から鈴はずっと場所を考えていた。
遺跡外にあるいくつかの酒場、飲み屋
だが、いずれもぴんと来ない。
一体どこへ行けばいいんだろう・・と思いながら遺跡外に出てきた。
残り時間は短いはず。
約束の時間は今日の夜。
久々の遺跡外。
レナーテさんやびっさんと別れて、スズは1人で遺跡外を散策し始めた。
店の立ち並ぶエリアを抜ける。
港からは今日も新たな冒険者達が船を降りてくる。
二つの魔法陣のそばは人でにぎわっている。
こんな場所じゃない。
きっと、こんな場所が見える場所・・・
丘の上には修道院がある。
だが、あそこはいろんな人が出入りする、ある有名な戦闘集団の居留地になっていたはず。
とすれば・・・・
スズは港を囲むもう一方の丘の上へと歩いていった。
暑い夏
草が広がる手付かずの丘
誰も来そうにないこの雑草だらけの丘の上から、港や商店がよく見える。
風が渡る。
少し暑いがさわやかな風が吹く
丘の上には大きな一本の木
葉の生い茂るその木の木陰はとても気持ちが良い。
もうすぐ月も見えるだろう。
木の下のごく一部は下草が掃われている。
誰かがここで少し前に休んでいたのだろうか?
スズはこの場所で待つことにした。
夕日が海に沈む。
綺麗だ・・・・・・
東の空は陰って白い月も見え隠れしはじめている。
蝉の声が響き渡る。
カエルの声が聞こえる。
自然豊かなこの場所
ふと気がつくとそばに待ち人が立っていた。
「やっぱり、あなたね」
遅れてやってきた待ち人は一升瓶をその場にどんと置く。
「もう・・・・あんなカードの伝言だけじゃわかんないよ。今度はもっとわかりやすくしてよね」
ふくれてみせると、相手が苦笑しているのがわかる。
でも、会えたからいいか・・・
月を見ながら、虫の声を肴に酒を呑む。
この島に来てからのこと。
今の仲間のこと。
島に来る前のこと。
この遺跡の話。
最初は尽きることなくいろんなことを話した。
昔のこと
前にあったときのこと
昔の仲間たちの消息
スズは楽しくて歌まで歌った。
だが、そのうち静かに酒を酌み交わし始めた。
二人とも静かに酒を呑む。
美味い酒だった。
気持ちのいい時間だった。
一升瓶が空いた。
2人は黙って月を見た。
どちらからともなく立ち上がり。
2人は静かに別れた。
再会の約束はしない。
それでもこの世に美味い酒がある限り、きっと彼らはもう一度会うだろう。
─────次回も曖昧な伝言に振り回されるのかな。
スズの顔に笑みが浮かぶ。
そんな不思議な関係をスズは楽しんでいた。
きっとあの人も楽しんでいるんだろう。
気持ちの良い真夏の宴会はこうして終わった。
十一人目のお題「伝言」 284 終日・鈴
231
────────来る!?
遺跡に潜むサンドジェリーや巨大ハムスターとの戦闘中
蒼夜はどこかなつかしいような嫌な気配を感じた。
蒼夜よりも遥かに感知能力の高い知視が俺の背後をみて顔色を変えたのがわかる。
だが、蒼夜にわかったのはそこまで。
背後からのしかかってくる重たい気配。
闇が俺を包む。
蒼夜は・・・・・・・戦闘中だと言うのに意識を手放した。
体が重い。
動かない。
腕を動かそうとしても拘束されている。
────貴方が悪いのよ
くすくす笑う声がする。
どこか調子の外れた声。
狂気を含んだその声に不安を感じる。
とにかくここを離れなければ・・・
だが、体はぴくりとも動かない。
────貴方がいけない人だから
女の声
どこかで聞いたような憶えのある声
くすくす笑う・・・その嘲笑が耳に障る。
「何がおかしい」
反応してはいけないと思いつつ、つい言葉が口をついて出た。
一瞬の静寂
だが・・・
くすくすくす
続く嘲笑。
あたりの空気にはますます狂気が満ち溢れてくる。
動け!!
頭の中で自分の体を叱咤する。
だが、動かない体。
いつしか体の上に何かが乗っているのに気づく。
───────貴方がとても魅力的だから・・・・
───────貴方がとてもつれない人だから・・・・
───────でも・・・これで貴方は・・・・私のもの!!
体の上に乗っている何か・・・いや・・・誰かが・・・女が顔をあげる。
その顔は
「!!!」
悲鳴を飲みこむ。
その顔は・・・
「蒼夜!!」
体を揺さぶられて気づく。
心配そうに覗き込んでくる、知視とミリナ。
「何が・・・起こった・・・」
蒼夜の声はかすれている。
その声を聞いて一段と顔をしかめる知視。
心配そうなミリナ。
「ミリナ・・すぐそばに水場があったよね?水を汲んできて」
小さな妖精が光のあとを残しながら飛んでいく。
二人きりになってから、知視はため息をついた。
「蒼夜」
「なんだ?」
「・・・・・・・・・女性にはもうちょっと優しくするべきだったね」
「どういう意味だ?」
だが、知視はそれ以上答えるつもりがないようだ。
もっとも、蒼夜も手の内を晒す気はなく、深く問われたらはぐらかす気でいたが。
『・・戦闘中にこれでは爆弾を抱えているようなものだ・・・』
知視は深くため息をついた。
蒼夜には相当たちの悪い女性が憑いている。
それも複数。
生霊から死霊まで・・
陣術を統べる蒼夜に単独で強硬に取り付くことの出来る霊はそれほどいないようだが・・・
『女性の恨みを買いすぎなんだよ。』
今回の霊は複合霊だった。
あまりにも恨みを買いすぎたから、複数の霊が共同して蒼夜を取り込もうとした。
もっとも、最後の最後で、蒼夜が顔を覗き込もうとしたときに
蒼夜に認識してもらいたいと思った霊同士で反発しあい、消えてしまった。
『いつか・・・・・・・・また来るな。』
こんな雑魚戦のときならまだいい。
だが、強い敵との戦闘中に蒼夜が取り込まれてしまったら、知視もミリアも共倒れだ。
再来の恐怖
それを知るのは蒼夜当人ではなく知視のみ
『女性の恨みは絶対に買わないようにしよう。』
蒼夜の背中につく巨大なてるてるぼうずと・・・複数の歪んだ女性の霊を視ながら
知視はもう一度深い深いため息をついた。
十人目のお題「再来」 231 鴉丸蒼夜
183
1人でお散歩した。
おなか空いたな・・・・
でも、いつも一緒のみんなをかじっているのも申し訳ないし。
チラッと視線を投げた先にはおいしそうな鳩が一羽
睨まれて動けずにいる鳩の翼をぱくっと口に入れてみる。
──────それ美味しいの?
振り返るとそこにはエミリーと同じぐらいの年のころの男の子が1人。
ただ・・・その子の体は半ば透けており、足も宙に浮いている。
「ん・・・・いまいち」
そう答えた瞬間・・・翼を開放された鳩は一目散に飛んで逃げてしまった。
「あん!せっかくの御飯だったのに。あなたが声をかけるから逃げちゃったわ。」
───────ごめん。ごめん。
男の子は頭をかいて謝った。
申し訳なさそうにしている様子を見て許してあげてもいいかなって思った。
「わたしはエミリー。エミリー・ゴースト。あなたは?」
───────僕は「れい」。れいって呼んで
れいと名乗った男の子はうれしそうににっこり笑った。
2人で森の中を散歩した。
眠りかけている鳥を見つけてかじってみたり、狼に追いかけられてあわてて逃げたり、
どんぐりをみつけて拾ってみたり、野兎をみつけて追いかけてみたり・・・
「あはははは」
───────あはは。ぼくこんなに楽しいの久しぶりだよ。
「あたしも」
2人はすっかり意気投合していた。
夜の森の中で遊ぶ子ども達。
アンデッドと幽霊の不思議な時間。
だけど、楽しい時はいつか終わりを迎える。
れいがぽつりをつぶやいた。
────────僕・・・そろそろ帰らなきゃ。
「え?もう?」
────────うん。もうすぐ陽が昇るから。
「もうちょっと一緒に居ようよ。」
────────ごめん・・・もう身体が透けて・・・
言われて見て気づく。
元々透けていた れいの身体は、より一層薄くなっていた。
消える・・・・・消えてしまう。
「待って。これを持って行って!」
エミリーはあわててある物を手渡した。
それは2人で一緒に拾ったどんぐり。
2人でそれに絵を描いた。
エミリーはどんぐりにリボンの絵を描いたのだ。
れいの手の上におくと、それも一緒に透明になりはじめた。
「よかった。れいだけ消えてこれは残っちゃうんじゃないかと思った。」
────────これ・・・もらっていいの?
「うん。今日の記念に持って帰って」
────────ありがとう。大事にする。僕のもあげたいけど・・・もう・・・・・
朝陽が昇る。
光が闇を駆逐する。
────────また、いつかきっと会える・・・・
その言葉を残して、れいはそのまま消えてしまった。
エミリーは哀しかった。
久しぶりに出来た同世代のお友達。
久しぶりの別れ。
また・・・いつか会えるかしら・・・
エミリーはとぼとぼと帰ってきた。
一晩中遊んで帰ってこなかったエミリーをみんなが待っていてくれた。
あまりにもしょんぼりとしているので、みんなが優しく迎えてくれた。
「おかえり」
梶井君が手を差し伸べてくれる。
エミリーはあまりにもしょんぼりしていたので気づかなかった。
梶井君の腕には昨日までなかったミサンガ。
そこについている古い小さなどんぐり。
消えかかっているけど、そこにうっすらとリボンの絵が残っていることに。
───────また、いつか会えるといいね。
それは暑い真夏の夜がみせた過去と現在の邂逅。
梶井君が小さい頃 れい と呼ばれていたときがあったことを、エミリーが知るのはまた別のお話
九人目のお題「別離」 183 エミリー・ゴースト