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闇と鎖と一つの焔

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  • 04/20/21:57

1173

バスケットにいっぱい

いっぱいのクルミ

ポケットにいっぱい

いっぱいの栗



カバンの中には

砂糖漬け

とっても香りの

いい紅茶



忘れちゃいけない

ぜったいに

両手にいっぱい

いっぱいのりんご



オーブンに火を入れて

ケーキを焼こう。

とってもおいしい

カントリーケーキ



ラズベリーを入れよう。

栗を入れよう

レーズンもいれて

ケーキを焼こう。



マフィンも焼こう。

一口マフィン

砕いたクルミを

そっと添えよぅ。



オーブンでケーキを

焼いてるとね。

とってもとっても

いい匂い



お菓子が焼ける

待ち時間

とってもとっても

幸せタイム



ケーキが焼けるよ。

あと少し。

硝子のティーセットを

用意しよう。



とってもとっても

おいしいお紅茶。

オレンジ・ペコを

もらったの。



今日は楽しい

ティーパーティ

みんなで楽しい

ティーパーティ



硝子の器に

入った紅茶

きらきら光って

宝石みたい。



みんなで頬ばる

木の実のケーキ

みんなで頬ばる

クルミのマフィン



とってもとっても

楽しい時間

明日もみんなで

お茶しよう。



今日はとっても

おいしかった。

みんなありがと。

ごちそうさま♪


二十五人目のお題:「硝子」  1173 スグリ
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1096

砂嵐がきそう?

砂地を日除けのマントを纏って歩いていた風屡は強い風の気配を感じた。
いつも一緒にいるライオンも低い唸り声を上げている。

こんな何もない場所で砂嵐に巻き込まれると辛い。
少し離れた場所に石造りの遺跡をみつけ、風屡は走った。
ライオンもぴったりとついてくる。
石造りの壁の影に飛び込んだ瞬間、強い風が吹いた。


サンドストーム


この広大な遺跡の中で何度かこの現象に出合った。
約30分ほどの嵐を、ある者は魔法防壁を作って防ぎ、ある者は地の中にもぐって避けた。
ある者は砂の舞い上がらないほど高い天空で風のみと闘い、
そして風屡のように地を歩む者は遺跡の影に隠れて嵐の過ぎるのをじっと待った。

所詮は遺跡の中の嵐
最初のうちは大したことないだろうと舐めてかかったものもいた。
だが、30分もの間、砂を叩きつけられて立っていられるものなどいない。


砂漠を旅することも多かった風屡は、最初にサンドストームにあった時から油断しなかった。
遺跡の中とはいえ、舞い上がる砂の量が半端ではなかったからだ。

この遺跡は確かに作り物かもしれない。
まがい物かもしれない。
だが、風に舞い上がったあの砂の量は間違いなく真実だ。


風屡のようにそれを見切ったものだけがこの地の最初の洗礼を何事もなく切り抜けた。

見切れずに砂地で強行した者達・・・彼らはサンドストームが去った後、体勢が整う前にモンスターに襲われて、一時的に遺跡外に撤退することすら余儀なくされた。

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1021

「ラフィー、何つくってるの?」
「ちょ・・・ちょっと待って」

いつものようにラフィーが料理を作ってる。
どうやら今は手が離せないみたい。

とってもいい匂い。
・・・いままでに感じたことのない匂い

肉料理?それとも蟹?タラバ?

ううん、ちがう。
もちろん草やパンくずじゃないことだけは確か。

このやわらかい匂いはカレーでもない。
でも、とってもおいしそう。

『保存食にこんないい匂いのするものあったかしら?』
ラピスは首をかしげた。




覗き込んでみようかとも思ったけど、珍しくラフィーは真剣だ。
細かい作業の邪魔になって、このいい匂いが消えちゃうのはもったいない。

ラピスはうずうずしながらラフィーが返事をしてくれるのを待っていた。




ラフィーはさらにバタバタと動き始めた。

ときどきラピスのほうを振り返って
「ごめんね。もうちょっと待ってて!!」
というのが精一杯みたい。

どうやら料理は佳境のよう。
オーブンに火を入れて、何かよくわからないものをオーブンに入れていた。
オーブンに入れる一瞬、オーブン皿の上に乗っていた物が見えた。

なんだか茶色い塊。

それしかわからない。



─────あんなにいい匂いがしているのに・・・・ちょっと不気味ね。

─────でも、食べるのはきっとラフィーだから・・・いいか。



ラピスはいい匂いに包まれながら、おとなしく待っていた。

ようやくお皿をオーブンに入れてラフィーの手が空いたよう。
ラピスはふわりっとラフィーの前に立ってみた。

ラフィーはなんとなく疲れた顔をしている。
あれだけ、バタバタ走り回っていたら当然だろう。


「ねぇ・・・・何をつくってるの?」
「うん・・・あのね・・」

チンッ!!

「あっ!もう焼きあがっちゃった。ごめん。ラピス。もうちょっと待ってて!!」






うそーーーー!!

だって・・だって・・・まだオーブンにいれて1分も経ってないのよ!
1分も経ってないのに!!


ラピスは目を疑った。
オーブン皿には確かに茶色い物体が乗っていたのだ。
それをオーブンに入れたのだ。
なのに・・・なのに・・・・


出てきたオーブン皿の上に乗っていたものは 『白い』 のだ。






えぇえええええ。嘘ーーーーー!!



ラフィーは魔術師。
いままでだって驚くような技を使うこともあった。
でも、今回のは飛びっきりだ。

その白い塊が・・・ぶるぶると振るえはじめ・・・・
ふわふわしたいい匂いのする塊がパチパチっと目を開けた。
小さな丸い目はなんだか愛らしい。
目の下がもごもごもごっと動いたと思うと、パカッと口を開いた。


「ご命令を。ごちゅじんちゃま」


オーブン皿の上の白い白いふわふわした塊が口を開いた。

ラピスは口をパクパクさせて・・・・・


「ラフィーーーー!!!!」


と絶叫した。






ようやくラフィーが説明してくれた。
さっきからラフィーが作っていたもの。
あんなにいい匂いがしたのに・・・料理なんかじゃなかった。


新しい使い魔


もちろん魔力をもっているのでラピスを視ることもできるらしい。
しかもふわふわしててとってもいい匂い。
手足はないけど、ふわふわと浮き始めた。

最初は驚いたけど、なんだかかわいい。
おまけに・・・・これ・・・・パンくずだけで出来ているらしい。
貴重な保存食や肉を使わずに、余ったもので作ったとか。


「僕とラピスに絶対服従するんだよ。」
「ちょっとラフィー・・・絶対服従ってかわいそうじゃない?」
「こういう使い魔は役割をちゃんと決めてあげる方がアイデンティティがはっきりして、存在が安定するんだ。絶対服従ってしてあげるほうが、この子も長くこの世界に順応できるんだよ。」


そういうものなのかしら?
疑わしげにふわふわと漂う使い魔をみると、目をきらきらと輝かせてラピスの顔を覗き込んでくる。



「ご命令を。ごちゅじんちゃま♪」



か・・・かわいい。
かわいいけど、この子に何が出来るんだろう?

「ラフィー・・」

困ってしまってラフィーに話しかけたものの、ラフィーもなんだか困っている様子。

「うーーん。
 まさか一発で成功すると思ってなかったから、このあとのことを考えてなかったんだよね。」

そんな無責任な・・・
でも、あまりにも目をきらきらさせている使い魔を見ると、何も言わないわけにはいかない。

「じゃあ・・・・ラフィーが疲れてるみたいだからラフィーの肩を叩いてあげてくれる?」
「ちょ・・・ちょっとラピス」
「いいじゃない。そのぐらい。」


白いふわふわはにっこり笑うと、


「わかりまちた。ごちゅじんちゃま」


といってふわふわっとラフィーのそばに行き、ラフィーの肩の上で弾み始めた。

ぽーん、ぽーんと弾んでいるものの、元はふわふわのパンくず。
重量がないのでまったく肩叩きになっていないらしい。

どうやら使い魔本人もそれがわかったらしく、一生懸命力んだ顔をしてぽーんぽーんと勢いをつけて弾み始めたが、一向に効果は見えない。
さらに力んだ顔をして、向きになって弾む使い魔。
だんだんペースも速くなる。



ぽーん ぽーん ぽんっぽんっぽんぽんぽんぽぽぽ ぼふっ!!ぷしゅーーーーーーーー!!



突然ぼふっという音がして、そのあと空気の抜けるような音がして、ラフィーとラピスの目の前でパンくずの使い魔は見る見る縮むとそのまま消えてしまった。



「あ・・・・」
「あ・・・・・・」


でも、もう遅い。
二人の目の前から使い魔は消えてしまった。

「ラピスがあんなこと命じるから」
「だって、ラフィーだって止めなかったじゃない」

二人で口げんかをして、それも一通りおさまり・・・・でも、消えた使い魔はもう帰ってこない。


かわいかったのにな・・・・
名前もつけてあげなかったな・・・・・


その後ラフィーがどれだけ再現しようとしても、二度と同じ使い魔を作ることは出来なかったという。


二十三番目のお題「服従」   1021 Rf

950

J.J.は体に見合わぬ斧を振り切る。
ぱっと見は華奢な体つき。
巨大な斧に振り回されそうに思うのに、戦闘態勢をみるとそれほどおかしくもない。
傍から見ていると斧が中空なのではないかと思うほど細い体で軽々と斧を操る。


だが、その斧の斬撃を見ればわかる。
あの斧は重量で相手を叩きつぶす豪斧・戦斧であると。


J.J.は素早い動きで相手を捕捉し叩きつぶす。
だが、おかしい。


普通の物理空間では考えられないような動き。
そもそも彼の人にあれほどの斧をもてるはずがないのだ。


違和感。
それが彼の人を見たときに誰もが感じること。







彼の人の周りに小さな光が見える。
よくよくみると小さな草妖精が魔法をつむいで援護している。


そばには一羽の鳥が羽ばたく
軽やかな鳥はときに短剣のごとき爪を剥く


小さなパーティ
この島にいる粗野な冒険者達から見ればあまりにもか弱く見える者たち






だが、彼らに共通して感じる違和感
彼らを侮ってはいけない。
大きさで見くびってはいけない。






熟練の冒険者達は見抜く。
彼の妖精が体に見合わぬ魔力を持ち合わせていること。
彼の鳥が見かけによらぬ鋭い爪を有していること
そして・・・・J.J.
彼の人は垣根を越える者
この世の物理法則は彼の人に適用されないようだ。



ある者は彼らを警戒し、
ある者は面白そうに観察し、
そして、また、ある者は彼らに腕を差し伸べる。


共に奇妙な遺跡を探索する仲間として
この奇異なる者たちと手を組もう。


握手をしよう。
この地にふさわしき者たちと。

彼らもまた時に選ばれし冒険者なのだ。


二十二番目のお題:「握手」  950 ジェニファー・ジャミー +白い花 シルバーベル

886

今日もデストミー様は絶好調だ。
中にいる面々の気も知らず・・・・

今日のデストミー様のお言葉はこの発言から始まった。

『世の中にはおもしろい技があるみたいじゃな』

「はぁ?面白い技ですか?」
【技?】
「ぐぱー?」

『我が偉大になるためにもっともふさわしい技があるではないか。
ヌシら、知っておったのならなぜ黙っておった?』

「・・・恐れながら、てりぼーぅ・デストミー様」

『なんじゃ?』

「その技とはどのようなものでしょうか?」

『ヌシら、その程度のこともわからんのか?それでは我が教えてやろう』

 デストミー様は紙にさらさらと技を書き始めた。
 同じ体に棲まっているため、紙に書いてもらえばすぐに通じる。

『これじゃ』

 ・下僕となれ
 ・いろいろ貢ぎなさい
 ・美はすべてを支配する
 ・スポットライトを私に

『極めつけはこれじゃ』

 ・私に従えないというのか

『これほどに我にふさわしい技があろうか?
 ヌシ等、知っておったのならなぜに言わぬのだ?』

「あいたたたたた」
『何か痛いのか?』
【どうするべ。】
「くぽーー」

「デストミーさまの偉大さはそのような技に頼らなくとも認めさせることなどたやすいことです。
 そのような技を使用するのは技に頼らないと偉大さを表現できない未熟者の行いに過ぎません」

『そういうものか?』

「もちろんでございます。
そのような技に頼るのは、かえって偉大でもなんでもないことをひけらかすようなことにございます。
例えるなら、力なき者が力のなさを補うために魔法に頼るように。
偉大でない者が、偉大でないことを補うために、そのような技に走るのです。」

【・・・・うまい】

『うむ・・・・そうまでいうのならこれらの技はあきらめよう』


 デストミー様は肌蹴かけた着物を直しつつ考え込まれたようだ。


『では、ヌシ等に問う。我の偉大さをもっとも華麗に表現する技は?』

「・・・・・」
【・・・・・・】
「・・・・・・・くぽ」









デストミー様は先ほどから歌を歌い続けている。
その歌は・・・・・・決して旨くない・・・・・。
むしろ、騒・・・ry

別に音楽を憶えようとしているわけではない。



【なんであんなこといっちまったんだ】
「・・・・ごめん。あたしが悪かった」
「くぴー」





──デストミーさまの偉大さや華麗さを表現する方法を技に頼る必要はございません。
すでに身に備わった空気が偉大さや華麗さを十二分に引き立てておられます。
時には親しみやすさを表現することにより、デストミー様の身に纏う偉大さが強調されることになりましょう。
ですから・・・もっとも苦手とされている部分を表に出されてはいかがでしょうか?






それが歌とはおもっていなかった。
しかも・・・・・・これほどとは思っていなかった。
体を共有しているため、嫌でも耳に入ってくる。


このときほど変な魔法に巻き込まれて体を共有していることを呪ったことはなかった。

トミーの父親があんな馬鹿なことを思いつくから・・・

今すぐこの状態が解けるなら、どんな代償でも支払うのに・・・と誰もが考えたが、
今となってはデストミー様以外は魔力の欠片ももたない身。
魔法など揮えるわけもなく、悲痛な願いに答える神も悪魔もいなかったようだ。




その苦痛の時間はデストミー様が食事をとるために歌をやめるまで続いたのだった。

二十一人目のお題「魔法」  886 猫極堂ガトー

814

槍や薙刀はどちらも歩兵が騎兵に対抗するために作られた武器
その動作は両手を使った攻防一体の動作であることが多い。
薙ぎ・・・払い・・・そして突く。
だが、だからこそ、騎兵に対抗しうるだけの鋭い足捌きが必要となる。
前後への直線的な動きの多い騎兵に対抗する左右への俊敏な動作
流れるような足捌きこそが槍術を支える。



その槍術の中にあって、異質な術式

牙蹄流槍術



片手で手綱を片手で剣を扱う騎兵と異なり、
槍騎兵は片手で手綱を扱い、片手でランスと呼ばれる串刺しするのに適した槍を装備するのが基本だ。
戦場においては片手で手綱を片手で車輪のように槍を回転させ敵をなぎ払うこともある。


だが、それでは真の槍の力を発揮できない。
長槍術の技である薙ぎ、払い、突きを生かすにはどうしても両手での槍の扱いが必須となる。


強靭な足腰の力だけで馬を操り、両手で槍を操る。
槍術を極めた者のなかで、優れたバランス感覚と強靭な下半身を有する者だけが極めることを出来る術式


それが牙蹄流の槍術







霧生 透は優れたバランス感覚を有する少年だった。
友人に勧められた槍術。
リーチが長く、剣道よりも面白いと感じた。


彼は朝も学校帰りも道場に通った。


古武術の多くの例に漏れず、槍術の師範も礼儀にうるさい方だった。
朝、道場についてまず一礼。


最初にやるのは掃除。
道場の床を綺麗に磨き清める。
この掃除も足腰の鍛錬の一つなのだ。


掃除が終わると槍のチェックを行う。
稽古の時には鞘に入れたままの槍を使用する。
鞘を抜いて試合うのは、師範と師範代の模範試合のときのみだ。
だからこそ、鞘がすっぽ抜けることなど許されない。
また、長尺の武器だからこそ、自分の体に見合った重さの武器を選ばなければならない。
毎朝の手入れはこれからの鍛錬に問題がないことを確認する大切な時間だ。


多くの初心者はその重要性を理解せず、稽古の時間のみを楽しみにする。
だが、透はこういった一つ一つの所作も怠ることがなかった。






そして朝の鍛錬。
ここでは軽く型の確認を行う。


朝の鍛錬ののちに道場に飛び散った汗を清掃して、その後学校に行く。


学校が終われば道場に戻り、また一礼。
そして型の確認の後に、実戦的な試合形式の鍛錬が行われる。


夕刻、鍛錬が終了すると再び槍の手入れ。
柄についた汗を丁寧にぬぐう。
鞘止めを確認し、槍を仕舞う。


その後道場の清掃を行い、一礼してから道場を後にし、家路につく。


家に帰ればごくごく普通の学生らしく、テレビを見たり、ネットで遊んだり、携帯でメールをしたり・・
そんな生活がずっと続くと思っていた。








あるとき彼は牙蹄流と言う槍術の流派があることを知る。
正直、おもしろくないとおもった。
彼は槍術の流れるような足捌きを楽しいと思っていたから。
だから、馬術の訓練もそれほど気が入っておらず・・・
一応手綱をあやつって馬に乗れる程度の訓練はしたが、騎乗戦闘の訓練はしなかった。


彼は馬術に対しては礼を払わなかった。
あくまで槍に対してのみ心を砕き、礼を重んじた。


どれほど優れた資質があっても、礼を持たぬ者に開かれる扉はなし。
牙蹄流の門は彼に対して二度と開かれることはなかった。










「あぁ!ちくしょう!!もっと、まじめにやっておけばよかったぜ!!」


見渡す限りの砂地
見渡す限りの平原の続く広大な遺跡。


騎乗戦闘をこなし、すばやく隣接する戦場へと移動する人々を見ながら、透は後悔していた。


あの頃・・・もっとちゃんと馬術も極めておけばよかったと。


開かれた門をくぐるも閉ざすも本人次第。
だが、機会は多く訪れるわけではない。
一度閉ざされた門が都合よく開かれることもなし。


彼は彼に見合った力でこの島での戦闘をくぐりぬけることとなる。



二十人目のお題「礼儀」  814 霧生 透

※言うまでもなく・・・牙蹄流などという流派はありません。フィクションです。

749

ジルがこの島に来てすでに10日過ぎた。

両親が旅行に行っている間、家の改装のために無理やり追い出されてこの島に送り込まれた。
まだ、たった9歳の少女。
誰が聞いても同情したくなるような境遇。

最初のうちこそ拗ねてもいた。
萎縮したり・・・・、仲間に遠慮もあった。
だが、元々は適応力の高い少女であったジルは、着実にこの遺跡での生活になじみ始めた。

慣れにより、本来の自分を存分に発揮できるようになって来たこと。
そして、厳しい遺跡の中の日々の生活
心身ともに鍛えられる修行のような日々

生来持っているある能力を引き出すための条件が整おうとしていた。





ある日の日記
「今日、散歩をしていたら、なんとなくうり坊に会う気がした。
 なんとなくお肉が固そうだと思った」



ある日の日記
「今日、遺跡を歩いていたら、なんとなく子猫に会う気がした。
 なんとなくお肉が小さい気がした」



ある日の日記
「今日、遺跡を歩いていたら、なんとなく変な人に会う気がした。
 香りの良い香水みたいな草を拾いそうだと思った」





日記を読めば気づいた者がいるかもしれない。
ジルはこの先で会うであろう敵とその敵から奪うアイテムを直感的に知っていた。

彼女の能力は直感力とシンクロ
その二つの能力は今まさに開花しようとしていた。

どうやらジルには少し先を行く冒険者たちの動きが見えるらしい。
もちろん少し先を行く冒険者達と同じ敵と戦うとは限らない。
シンクロして少し先にいる敵が見えたとしても、
実際にジルたちがその場を通るときに何と当たるかは直観力が決め手となる。

その直観力の当たる確率は5割程度。
だからこそ、不用意に漏らしてPTのみんなに嘘つき呼ばわりはされたくないと思った。
ジルはその能力の確度が上がるまでみんなには内緒にしておこうと決めた。





あるときジルはまたも白日夢のように、少し先のブロック、または近くのブロックにいる誰かとシンクロした。
そして・・・・・そのままジルは卒倒した。




ジルが見たもの。
それは9歳の少女にはあまりにも刺激的な内容だった。


そのままパーティメンバーに遺跡外に連れ出された。
あまりの衝撃にジルの脳はそのときのことを記憶するのを拒絶した。


だから、ジルは知らない。
自分が何を見たのかを。

心配するパーティメンバーも憶えていないものは訊きようがない。
だから、ヒントはジルがうわごとのようにつぶやいた言葉だけ。

パーティメンバーには何のことだかさっぱりわからない。
もちろんジルにもさっぱりわからない。
謎の言葉が残った。



9歳の少女の脳に残ることを拒絶された謎



「・・・・ピンクの・・・・」


一体何を彼女が見たのか・・・それはご想像にお任せします。
ただ、あまりのトラウマのために、開花しかけた彼女の能力は数日間復帰しなかったと言う。


十九人目のお題「開花」  749 ジリアン・アマーリア