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闇と鎖と一つの焔

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  • 05/04/13:03

701

なんじゃ?変な顔をしおって。
この程度のことで震えておるのか?

こんな木っ端モンスターに囲まれたぐらいで何を震えておるのじゃ?
度胸がないのぉ、お主。

この程度のこと、もっと楽観視出来んのか?
仕方がないのぉ
儂が一つ昔がたりをしてやろう。




周りを一角獣やスケルトンが取り囲み、今にも飛び掛ってきそうだというのに、
玖狼は胡坐をかいて、杯に酒を注ぎ、ぐびぐび飲みながら昔話を始めた。





昔のぉ・・・まだ儂が若かったときのことよ。
同じように周りを敵に囲まれたことがあってのぉ。

そのころの儂はまだ思うように人型をとることができんでな。
巨大狼じゃっちゅうて、棒を持った人に囲まれたんよ。

それもまぁ・・仕方のないことじゃて・・。
あのころ儂の仲間の一頭が人を懲らしめんといかんっちゅうてな、人里をおそっとったんよ。

儂ゃぁ、人を襲うのには反対じゃった。
確かに人の輩(やから)が森で傍若無人に振舞う様には儂も眉をひそめとった。
けどなぁ、人にも人の都合っちゅうもんがありそうじゃった。
年貢じゃとかいうて、せっかく作った米も取り上げられてのぉ・・・
ひどい世の中じゃった。
じゃけん・・・しゃあないと思うとった。

じゃが、儂はどうも変わりもんじゃったらしくてのぉ。
仲間は少しずつ人の輩(やから)を敵視していったんよ。
仲間が変わっていくのは寂しかったのぉ

あるときのぉ・・・年端もいかぬ赤ん坊っちゃあ、攫ってきおって・・・・
哀しむ母親の目の前で食い殺しよった。
ほんまに誇り高い狼の一族のもんが、弱い赤ん坊をかみ殺すなんぞ・・・・末代までの恥じゃ。

それまでは狼じゃあ言うたかて、それほど嫌われておらんじゃったよ。
せやけど、そっからあとはあかんかった。
人の輩(やから)と儂等狼の族(うから)は互いに憎しみあうようになったんじゃ。




儂が人の輩に取り囲まれたんは、そういう時代よ。
人々はおっそろしい形相で儂を睨んじょった。
ありゃあ、ニ、三十人はおったかのぉ。

あのときは儂も恐ろしかったよ。
何よりも儂が恐れたんはのぉ・・・・・人を殺すことよ。

なんのかんの言うても狼は一頭一頭が自分の王よ。
自分がよければそれでええっちゅうところがある。

せやけど、人の輩は違う。
なんでかしらんけど、奴らは仲間をものすごぅ大事にしよる。
あのとき儂が誰か1人でも殺しよったら、人の輩は狼を根絶やしにすることを辞さなかったやろ。

だからこそ、儂ゃあ、誰も殺しちゃあならんと思うた。

儂もあの頃は若かったからのぉ。
血の匂いを嗅いだら我慢できんやろうとおもうた。
せやからな、二、三十人に囲まれて、そこから儂は誰一人怪我させず、自分も血を流さずに脱出せにゃあならんかった。
ありゃあ、さすがにきつかったのぅ。
今でもどうやって逃げたのか、よぉ憶えてない。




何?かっこわるいじゃと?
お主、この程度のモンスターに囲まれてぶるぶる震えとるのに、よぉ言うのぉ。

なんじゃと?武者震いじゃと。
あっはっはっはっは。
お主、なかなか言いおるのぉ。


じゃがな、あのとき人と全面的に対決せんでよかったと儂は今でも思っちょるよ。
・・・なによりこんな風に昔を思い出したときに酒がまずくなるじゃろうが。
後悔はしたらあかん。
いつでも美味い酒が呑めるように生きるのが儂の生き方じゃよ。



何?
何でそんな風に人に囲まれたじゃと?
訊きたいか?
ふ~む。
まぁよかろうよ。

あのときはな、儂に縁(ゆかり)の狼にはじめての仔がおったのよ。
人の輩がな、その巣に気づきおった。
せやからな、儂が囮になったのよ。

あぁ、狼は一頭一頭が自分の王で他のもんは知らんと確かに言うたな。
だがな、儂は玖狼の神よ。
儂には儂に繋がる族を守る義務がある。
そんじょそこらの狼と一緒にしてもらっては困るのぉ

さて、酒が尽きた。そろそろ本気で行くかいの。





この昔語りの間・・・・玖狼はずっと右手に酒瓶、左手に杯を持ち、あぐらをかいたままで・・
時折右手の人差し指から出した鬼火でモンスターたちを牽制していた。

囲まれても平然として楽観していたのは、経験に裏打ちされた実力が伴うからだ。

昔語りを終え、すっくと立ち上がった玖狼が周りを囲むモンスターをなぎ倒すのにかかった時間はほんの一瞬のことだった。



  倒してもいいなら、この十倍の敵に囲まれても儂ぁなんとでもなるでよ。
  相手を倒さずに、自分も傷つかずに引く。
  そのほうが何倍も難しいことを儂は知っとるからな。


そういい残すと、誇り高い狼神は遺跡の中へと消えていった。



十八人目のお題「楽観」    701 玖狼
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641

「ママ、お帰りなさい♪」

熱を出して寝てたママ。
ようやく戻ってきてくれた。

でも兄弟たちはみんな不満みたい。
ウィレムは特にママが好きだから。

ママがお熱をだしたとき、ウィレムももっともっとお熱を出してたんだって。
でもウィレムはうれしそうだった。ママと一緒だったから。
ママがお城を出るときみんな寂しそうだった。


「マーマ、もうだいじょうぶ?」

ママはにっこり笑ってくれた。

「ねぇ、ママ。
 クロトね、パパに手伝ってもらってちゃんと宿題やったよ。
 だから、ママもやくそく守ってね!」

「約束?」

「そう!宿題したらクロトをちゃんと冒険につれていってくれるんだよね!」

「え、えぇ。そうね。クロトも一緒に行きましょうね」







ドキッとした。
クロトに約束といわれて・・・・。

高熱を出して寝込んでいたと聞かされたとき・・・・怖かった。
熱のせいでまた記憶を失ってしまったんじゃないかと・・・。
息子たちのこと、娘たちのこと、ただでさえ失われている記憶。
もうこれ以上失いたくなかった。

怖かった。本当は大丈夫なんかじゃなかった。
でも・・・・もう心配させたくないから。

だから・・・・クロウは小さな嘘をつく。
本当はわかっていないけど、わかった振りをする。
本当は大丈夫じゃないけど、大丈夫な振りをする。


「ママはもう大丈夫よ。一緒に行きましょうね」


と微笑んだ。







ママは大丈夫っていった。
だけど、クロトは気づいてしまった。
「やくそく」といったときママがちょっとだけ動揺したこと。
「一緒に行きましょうね」と笑ってくれたけど、心から喜んでなさそうなこと。

きっと、ママは本当はクロトが宿題をおわらせるのに、もっともっと時間がかかるとおもったんだ。
今回はクロトをつれていきたくなかったんだ。
クロトはいっしょうけんめい宿題やったのに・・・・


『そりゃ・・・・ちょっとだけパパにてつだってもらったけど』


マーマ・・・・

クロトはうっすらと涙を浮かべた。


「クロト?」

背後から声をかけられて振り向いた。あわてて服の袖で涙をぬぐう。

「パパ」

「どうかしたのか?」

パパはクロトの頭をわしわしって撫でてくれた。








いつもだったら頭を撫でると嫌がるクロトがしょんぼりしている。

「パパ」

「どうした?元気が無いな。ひょっとしてクロトも風邪引いたのか?」

「違うよー!クロトは元気だもん!・・・・・・・パパも・・クロトがいると邪魔なの?」

そういうと珍しく目から大粒の涙をぽろぽろ流した。
いつも強気なクロトが涙を流すなど、そうそうあることじゃない。

エドがひざをついて手を広げ、おいで、というと泣きながら抱きついてきた。
抱き上げて頭をさらにわしわしっと撫でても泣き止まない。


『パパも』

といった。ということは・・・・?

クロウがクロトを拒絶するはずが無い。
だが、クロトはクロウに拒絶されたと思っている?

クロトが泣きながら語った言葉。
クロウが何を考えていたのか、なんとなくわかってしまった。

クロウのことも気にかかる。
だけど、今すぐにやらないといけないことはたった一つ。

クロトは鋭敏な子だ。
嘘をついてもすぐに見分ける。
だから、・・・・・嘘のない、真実の言葉をあげよう。

エドはクロトをぎゅっと抱きしめると小さな耳にこうつぶやいた。


「クロト、パパはクロトのことが大好きだよ」




一つの些細な嘘で傷ついた心。癒すために必要なのは心からの言葉。

いつか、こんなこともあったね、とみんなで思いだせる日が来るといい。

『ママ、あのとき嘘ついてたでしょ!ちゃんとわかってたんだから!』

そんな風にクロトがクロウに言って、

『あの時クロトはわんわん泣いたんだよな。』

と俺が話して・・・・家族みんなで笑える日が来るといい。

いつかそんな風にみんなで笑える日がくるといい。



十七人目のお題「虚偽」
 641 クローヴィス・S・フェンデル (+ 1023 エドヴァン・S・フェンデル + ご家族の皆さん)

604

兎がいっぱい
ふわふわした兎が、ここにも、そこにも、あそこにも・・・

あまりにも兎がいっぱいでかわいくて、いつまでもここに居たいような・・・


「・・・・」


うさぎが一羽ぴょこんと僕のひざに乗ってきた。
また別の兎は僕のふくらはぎに頭をすりすりしている。

幸せだなぁ・・・


      「・・・!」


すぐそこにいる兎は顔を洗って、耳掃除を始めた。
兎の耳掃除のときの仕草には胸がキューンとする。
かわいい。
あまりのかわいらしさに思わず写真を撮っておきたい気分になる。


      「・・・ゆ・・ん!!」


隣にもう一羽兎がやってきて、目の前で二羽の兎が耳掃除
ずっとこの時間が続けば・・・


      「・・わゆ・・はん!」


誰?誰かが呼んでる。
あぁ、でもまた・・・
別の一羽が僕のひざの上に上ろうとして僕の太ももをつんつん突付き始めた。
かわいい。
思わずその兎を抱き上げようとする。


      「淡雪はん!起きなはれ!」


その瞬間兎が消える。
暗い・・・・暗い・・・・・誰かが体をゆすってる。
誰・・・

ゆっくり目を開ける。
心配そうに覗き込んでいる・・・・・吹雪?








戦闘中・・よりにもよって尾田はんが避けたせいで、敵の攻撃が淡雪はんを直撃しはった。
あわててフォローに入って、敵を倒したまではよかったが、淡雪はんはその場に倒れこみ・・・
尾田はんを半殺しにする(確定)のは後回しにして、あわてて抱き上げる。

「淡雪はん!しっかりしぃや!」

「・・・・・ぎ・・・・」

「淡雪はん!」

「・・・・さぎ・・・・・ぱい」

「大丈夫かいな。しっかりしぃ」

「・・・うさぎ・・・いっぱいいたのに・・・吹雪の莫迦」




・・・・莫迦?


人を莫迦呼ばわりした人騒がせな連れは、そのまますぅすぅと寝てしまった。
どうやらたいした怪我はしていないらしい。

こんな風に人の腕の中で安心しきった顔をして眠るんじゃねぇよ。莫迦。
人がどれだけ心配したと思っているんだ・・・





結論:全部尾田が悪い。








(このあと起こったことは非常にバイオレンスなため、掲載を控えさせていただきます)








次の日の朝、淡雪が目ざめたとき、あたりにはいつものいい匂い。
吹雪が料理をしているらしい。

昨日の戦闘途中から記憶が無い。
きっと戦闘中にドジってしまったんだろう。

ちゃんと食べないからだって言われそう。
また、目いっぱいの朝御飯が用意されているんだろうな。

すこしだけ憂鬱な気分になる。

それにしても昨日はなんだか幸せな夢を見た気がする。
どんな夢か憶えてないけど、まぁいいか。




結局、淡雪は吹雪を莫迦呼ばわりしたことはまったく憶えておらず、
八つ当たりの矛先は当然のように・・・・・



十六人目のお題「結論」   604 佐藤 淡雪 (+605 焔 吹雪) 

花火の途中

半分きました。
華煉は次々花火が出来て楽しそうです。
マナはあっちで吹き矢のトレーニングをしています。
PLは腱鞘炎でペースダウン中です。

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540

「マスター・フィーア、どうかなされましたか?」

ヘイズが心配そうな声で尋ねてくる。

「ううん、なんでもないよ。そんなに変な顔してたかな?」

にっこり笑ってごまかした。ヘイズに心配かけるわけにはいかない。

今ちょうどユハが料理中。
フィーアは考え事をしながらユハのほうを見ていた。

でも・・・ヘイズが心配そうにたずねてきたと言うことは、
きっと考えていたことが顔に出ていたんだろう。
ヘイズよりも気の利くユハは自分が見られていたことに気づいていたに違いない。

「おまたせ」

にっこり笑ってユハが料理を持ってくる。
ユハ特製の野菜バター炒め
これはいつ食べてもおいしい。
フィーアも大好きだ。
でもついつい言ってしまう・・・・

「どうせなら肉野菜炒めが食べたい」

ユハは困った顔をしている。

そりゃそうよね。この前鳩のお肉で丸焼きを作ってもらったばかり。
あとは保存食といつもの草しかない。
手持ちの食材の中ではベストの料理をしてくれたと思っている。

でもなんとなくユハに八つ当たりしたい気分だったのだ。

ヘイズが戻ってきてから、フィーアはずっとヘイズと一緒。
そのフィーアをかばうように、最近はずっとユハが前に出て戦ってくれている。
より一層気遣ってくれているのもわかる。
でも・・・・

「イタッ! フィーア、何?」

なんだかイライラして、ユハを叩いてしまった。
ユハが私を気遣ってくれるのはわかる。
いろいろ世話をしてくれて、いつもそばにいてくれる。
でも・・・でも・・・・

どんどんイライラして、ふつふつと闘志がわいてきた。

これをこのまま放置することなんて出来ない。

ここは一つ、がつんと言っておかなきゃ!

不穏な気配をかぎつけたのか・・・ヘイズはそ~~っとフィーアから距離をとった。



「ユハ!!」


いきなり怒鳴られてユハはきょとんとしている。
なぜかフィーアはものすごく怒っているようだ。
こんなに燃えているフィーアをみるのは久々だ。


「フィーア・・・何?」


「何じゃないわよ!
 いい?
 ユハが私のこと気遣ってくれているのはありがたいと思っているわ。
 いつだって私の盾になってくれるし。
 料理や買出しその他諸々・・・ユハがいてくれるおかげでとってもとっても助かっているわよ!
 だけどね!
 だけどね!!」



フィーアの顔が真っ赤になっていく。
話しているうちにますます興奮してきたらしい。

こんなに燃えているフィーアをみるのは久しぶりだ。

さすがのユハも思わず、1,2歩後ろへと下がる・・・・





フィーアはものすごい剣幕でびしっと指をさし、こう叫んだ!










「いくら健康にいいからって青汁・ハイパーミックスはどうかと思うの!!!」






食べ物の恨みは恐ろしい。


フィーア=セラフィスト
命が惜しければ、今の彼女に対して「肉なし」は禁句だ


十五人目のお題「闘志」   540 フィーア=セラフィスト(+サブキャラ ユハ&ヘイズ)

494

紅茶を入れてほっと一息。
安らぎの時間を迎える。

いつもならなんとなく楽しい気持ちになる時間なのだが、今日はため息しか出ない。


───────そろそろ引退かしらねぇ


まだまだやれると思ってこの島にやってきた。
今でもまだまだやれるつもりだ。

だけど、最近若い人たちと話していると、ちょっとしたギャップを感じなくもない。

意外とこの島には学生が多い。
彼らから見れば私など母親ぐらいの年齢だろう。


─────限界とは思わないけど


魔術も舞踊も負ける気はしない。
円熟味を増してこその技もある。
それに料理や付加・・・若い者では出し切れない味がある。


─────そうさ。まだまだ私は限界じゃない。それを証明して見せようじゃないか!


ピーチはお茶の道具を片付け、外に出ると、自らの魔力を集中し始めた。


────こんな風に自分の力を試すのは久しぶりさね。


右手と左手に持った二つの魔石に力を篭める。
集中する・・・集中する・・・
やがて、ピーチの頭上に魔力球が形成され始める。
魔力球は次第に大きく・・大きくなっていく・・・








やまねこは扉を叩く音に気づいて、宿営地のドアを開けた。
そこには疲れ切って四つんばいになってぜいぜいと肩で息をするピーチがいた。

「ど・・・・どうしたにゃあ?なにかあったにゃあ?」

だがピーチは息も絶え絶えですぐには答えることが出来ない。
ようやく、声が出るようになったとき・・・


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・やっぱ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・年には・・・勝てないねぇ・・・・・」


と呟いた。


そう、ピーチは限界を感じていた。






自分の魔力に対してではない。


自分の脚力に。






巨大な魔力球を作り上げ、それを一気に放つ。
巨大な爆発音とともに近くの山が大きく形を変える。

自分の魔力は昔以上に冴えわたり、限界などまったく無いように思えた。
自分の戦闘能力に対するゆるぎない自信。
それを久々に確認した。


だが・・・昔なら・・・・爆発音に驚く人々がやってくる前に全力で走り去れたものだ。
山に巨大なクレーターを穿ち、形を変えた責任などとれようはずがない。


逃げるが勝ちさね!


だが、さすがにこの年で全力疾走は厳しすぎた。
足はもつれるわ、息はあがるわ・・・。
最後には魔術や呪術を使って自分の姿を消してようやくその場から去ることが出来た。


────これからは人に見られては困るようなことは控えないといけないねぇ


自分の戦闘能力に限界は無い。
だが、自分の逃げ足は昔ほどの冴えは無いようだ。

ピーチは半ば満足、半ば残念に思いながら、そのまま眠りについた。



翌朝・・・・
大きく形を変えた山を見て驚く人々に混ざって、ピーチも驚いてみせた。
逃げ足は弱っていても、演技力は向上している。
白を切る能力も年とともに円熟味を増している。


─────これなら・・・無理に逃げなくてもなんとかなったかも。



一週間ほどたって遺跡のあるエリアでも山の大陥没が見られた。
驚く人々の輪の中に、ピンクの髪にツインテール、フリフリの魔法衣を着た熟女がいたようだが、
山を変えた力の持ち主は誰なのか未だ不明のままである。


十四人目のお題「限界」  494 ピーチ・チャイム

403

「?なんだ?」

ティル坊とセレ兄の様子がおかしい。
何かこそこそして2人で話し合っている。

「何か面白いことでも?」

と声をかけると2人してあわててバタバタと何かを隠す。

「なんでもない!なんでもないよ」
「ああ、大したことはない」

・・・・・・・・・へたくそな演技

ストレートに問い詰めようと思った。
2人が必死になって隠そうとしているので、余計に問い詰めてやろうと思った。

だがそのとき邪魔が入った。


「サグラドはん、いらっしゃる~?」


誰かが尋ねてきたらしい。
舌打ちしてその場を離れ・・・・・・・すっかり忘れていた。






ティル坊とセレ兄の様子がまたおかしい。
そういえば、少し前にも同じようなことがあったのに、聞き損ねていた。

今度こそ2人を問い詰めようと思った。

「何を2人でこそこそと・・」
「危ない!!」

突然後方から歩行小岩が襲い掛かってきた。

「ちぃ!」

──────ぶっ飛ばしてやる!!


そのまま戦闘が始まり・・・・・またも忘れてしまった。






ティル坊とセレ兄の様子がまたおかしい。
今度はふたりで何やら目配せしあっている。
どっちが先に切り出すか押し付けあっているような感じだ。

こういうすっきりしない空気はイライラする。

「ふたりとも私に何か隠してないか?」

問い詰めると二人そろって首を横に振る。

「そんなことないよ」
「隠し事などするわけないじゃないか」

またしてもへたくそな演技。目を見ればバレバレなんだよ。

「あのな・・・」
「あれ?ラズさんだ」

振り返ると旧知の友人がそこに立っている。
遺跡を別々に歩んでいると滅多に会えない。
そんな彼女が来てくれたのに、いつも一緒のPMを責める余裕などない。
またしても、機を逸してしまった。






ティル坊とセレ兄の様子が今日もおかしい。
今日こそは2人にちゃんと話をしよう。

そうおもって私が口を開く前に・・・

「見せたい物があるんだ。」

ティル坊が切り出した。どうやら2人も私に話す気になったらしい。
今まで2人がこそこそ隠していたもの。
上等!見せてもらおうじゃないの!






・・・・見せてもらった。
2人が隠していたもの。

「ティル坊が一生懸命作ったんだ。俺も少し手伝ったけどな」
「どう?」


この2人どこまで本気なんだ。
これはネタか?
あたしは怒るべきなのか?


2人から・・・というか主にはティル坊からのプレゼント。

よくよくみるとティル坊の指は絆創膏でいっぱいだ。
きっと慣れない作業で手をいっぱい怪我したんだろう。


それだけ見ていると、とてもからかうためにやったとは思えない。



だが・・・・・












ハート柄でひらひらのレースがついたピンクのエプロンを眺めながら、あたしは絶句した。



十三人目のお題「演技」   403 ペリィト・サグラド